平安・鎌倉時代の社会経済上の用語。一般的には貢租を別枠で納入することをいう。〈べつのう〉ともいう。律令制下においては別納租穀の用語があり,国で租の一部をさいて穀とし,民部省に送って位禄・季禄・衣服料等にあてたものであった。平安前期までの別納はこの種のものに限られる。平安後期から鎌倉期においては,開発その他の由緒によって特定の領主に庁宣や下文を与え,国衙使等の入部を止めるなどの特権を付与したことをいう。鎌倉時代の九州では,国御家人の所領を安堵したうえで,より広域的に東国御家人に地頭職を付与し,いわゆる小地頭と惣地頭の重層的関係が成立していたが,惣地頭が小地頭の権限を侵すときは,小地頭に別納の下文を与え,惣地頭の支配外におくこととされていた(《御成敗式目》38条)。
執筆者:工藤 敬一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「べつのう」とも。規定の徴税手続きや経路とは別に,徴税物を納入すること。10世紀以降の公領や荘園で,官物や雑役(ぞうやく)の一部ないし全部が,徴符や免符に従って他の領主に納入されることをいう。本来は年貢など収益を生みだす土地である下地(したじ)を特定せず徴税物が納入されたが,のちには下地が特定され,その下地自体も別納とよんだ。鎌倉時代には,名主(みょうしゅ)が年貢納入を地頭をへずに直接領主に納めることをもいった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…〈べつのう〉ともいう。律令制下においては別納租穀の用語があり,国で租の一部をさいて穀とし,民部省に送って位禄・季禄・衣服料等にあてたものであった。平安前期までの別納はこの種のものに限られる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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