前期破水(読み)ぜんきはすい

妊娠・子育て用語辞典の解説

ぜんきはすい【前期破水】

陣痛が始まる前に破水してしまうトラブルです。子宮内の赤ちゃん細菌が感染したり、そのままお産早産)になる心配があるので、大至急病院へ。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(愛育病院院長)、子育て編:多田裕(東邦大学医学部名誉教授) 妊娠・子育て用語辞典について 情報

家庭医学館の解説

ぜんきはすい【前期破水 Premature Rupture of the Membranes】

[どんな病気か]
 胎児(たいじ)は、子宮(しきゅう)の中で、羊水(ようすい)といわれる水の中に浮いています。正常な分娩(ぶんべん)では、陣痛(じんつう)が始まって子宮口(しきゅうこう)が全開大(ぜんかいだい)になってから羊水を包む卵膜(らんまく)が破れ、破水がおこるのに対して、陣痛が始まる前に破水がおこり、羊水が子宮外に流れ出すことを、前期破水といいます。
 これは、妊娠の週数には関係ありません。全妊娠の10~15%におこるといわれ、早産(そうざん)の原因の30~40%が前期破水です。
 突然、水のようなおりものがみられ、卵膜の破れた場所により量の差はありますが、絶えず羊水が流れ出ます。多くの場合、それに引き続き陣痛が始まります。
[原因]
 卵膜が炎症などで弱っているとき、強い圧力が加わったり、性交などの外力を受けておこることが多いといわれています。炎症の原因としては、B群溶連菌(ようれんきん)、淋菌(りんきん)、クラミジアなどがあるといわれています。
[検査と診断]
 量が多いときは、医師が診察すると、子宮内から羊水が流れ出るのがみえるのでわかりますが、破れた場所が子宮口から遠く、小さいときは、診断がむずかしいことがあります。羊水はアルカリ性で、腟内(ちつない)は弱酸性ですので、BTB試験紙(pH試験紙)を使ってみて青変したり、腟内に胎児由来の細胞が見つかれば、前期破水と診断できます。
[治療]
 前期破水がおこると、無菌状態である羊水中に細菌が感染することがあり、胎児に肺炎などの重篤(じゅうとく)な病気が生じることがあります。
 胎児が、まだ母体の外での生存が不可能な時期であれば、妊婦は入院して安静にするとともに、子宮収縮を抑える薬と、感染防止のため抗生物質を点滴します。そして、感染症状がないかぎり、体外生活が可能になる時期まで出産を待ちます。
 ただし、NICU(新生児集中治療室)などの設備の整った病院で胎児の保育が可能ならば、感染の可能性が高くなる72時間以内に、分娩することが望ましいと考えられています。
●日常生活の注意と予防
 破水しないと胎児は生まれません。破水の時期が問題となるのです。
 日ごろから外陰部を清潔に保ち、子宮が収縮しないように無理せず、休息をとりながら生活することが必要です。切迫流産(せっぱくりゅうざん)、切迫早産の予防となんら変わるところはありません。
 妊娠中は、いままでの生活より控えめに行動し、心身ともに安静を保つことがもっとも望ましいことです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

前期破水
ぜんきはすい
premature rupture of the membrane

陣痛開始前に胎児と羊水を包んでいる卵膜が破れて,羊水が流出すること。原因は卵膜の弱化,性交後の子宮の収縮,腹圧の亢進,転倒,激しい咳など。かつて考えられていたように難産の徴候ではないが,胎児の周囲と外界とが交通するので,外界の細菌が子宮腔内に入って感染を起すおそれがある。大部分は 24時間以内に自然に陣痛が始る。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

六訂版 家庭医学大全科の解説

前期破水
ぜんきはすい
Premature rupture of membrane (PROM)
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 陣痛がまだ起こっていない段階で卵膜(らんまく)が破れ、羊水が子宮外に流れ出ることを前期破水といいます。

 破水は普通は分娩の途中で起こることが多いのですが、正期産(妊娠37週~41週末まで)の場合でも陣痛が始まる前に破水してしまうことが約30%の例でみられます。したがって前期破水自体はそれほど病的なこととはいえません。

 しかし、胎児が子宮外で自立して生存する能力を獲得する以前の早産時期に破水が起こると、胎児は、子宮頸管(けいかん)と腟を介して外界と直接に接することになり、感染の危険が生じることになります。

 ほとんどの例では破水後、短時間のうちに自然陣痛が始まることになります。このため、早産時期の破水は未熟な子の出生という深刻な結果を引き起こします。

原因は何か

 正期産の時期の破水はとくに原因がない場合もあります。早産時期の破水は、産道感染やそれに続く子宮内感染、卵膜や胎盤の感染(絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん))のために、炎症が起こり卵膜が弱くなることが、原因として最も多く考えられています。

症状の現れ方

 突然、腟から急激に水のような羊水が流れ出ます。その時、出血を伴ったり、子宮の収縮を感じることもあります。

検査と診断

 腟内の分泌物を検査して、羊水かどうかを確かめます。羊水はアルカリ性なので、それを調べるBTB試験紙で腟内の分泌物の酸性度を調べます。また、羊水に含まれる特殊な物質であるα(アルファ)­フェトプロテイン、IGFBP­I、胎児性フィブロネクチンなどを調べる検査キットを用いて検査します。

治療の方法

 破水が確認された場合、それ自体を治す方法はありません。子宮内感染を防ぎ、母子がよりよい状態で出産できるように管理を行う必要があります。

 正期産の時期に前期破水が起こった場合は、母子に無理がかからない範囲で、できるだけ早期に分娩に至るのが望ましいと考えられます。

 早産時期の前期破水の場合は、胎児が未熟な時期には母体および胎児の状態が許すかぎり、妊娠期間を延長するように努めますが、感染の進行、胎児の状態の悪化などが認められれば、分娩の方向で管理することになります。具体的には、腟内洗浄、抗生剤の投与、子宮収縮抑制薬の投与などが行われます。

病気に気づいたらどうする

 破水と同時に、胎児の状態が急激に悪化する場合があります。また破水後、比較的短時間のうちに子宮内感染が進行してしまう場合があります。破水の心配があると感じたら、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡し、破水かどうか検査する必要があります。

海野 信也

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典内の前期破水の言及

【破水】より

…これを正期破水とよび,全分娩の約80%を占める。一方,分娩(陣痛)開始前の破水を前期破水といい,分娩中に子宮口全開大以前の破水を早期破水という。また,ときに卵膜が2枚に分かれていて,その1枚が破れてその中間に貯留した液が流出することを偽破水という。…

※「前期破水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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