日本大百科全書(ニッポニカ) 「剱岳」の意味・わかりやすい解説
剱岳
つるぎだけ
富山県東部、北アルプス(飛騨(ひだ)山脈)の立山連峰(たてやまれんぽう)北部にある山。標高2999メートル。立山町と上市(かみいち)町の境界に位置する。北アルプスのなかでももっとも峻険(しゅんけん)な山として知られる。岩壁は古期閃緑(せんりょく)岩に輝緑岩が貫入して、立山の白っぽさに対し黒っぽくみえる。これらの岩石の節理に沿って雪氷の侵食が働き、垂直の断崖(だんがい)や鋭い岩峰が形成された。チンネ、八ツ峰、源治郎尾根、剱尾根などはその代表的な岩場であり、夏にはロッククライミングの道場となる。
前人未到とされていた剱岳に、1907年(明治40)三角測量点を置くために登った柴崎芳太郎一行は、山頂で奈良時代末期から平安初期のものと思われる錫杖(しゃくじょう)と鉄剣を発見した。古来、修験(しゅげん)者によって不動明王に擬せられた山で、江戸時代には地獄の針の山に例えられた。剱岳東斜面の平蔵(へいぞう)谷、長次郎谷、三ノ窓谷の雪渓は、日本三大雪渓の一つである剱沢の大雪渓に合している。室堂(むろどう)ターミナルから雷鳥(らいちょう)平、別山乗越(べっさんのっこし)を経て剱岳へ至る尾根往復のルートが一般的な登山コースで、カニのヨコバイなどの鎖場がある。馬場(ばんば)島からの早月(はやつき)尾根ルートは冬山登山の一般的コースである。
[深井三郎]
『深井三郎著『黒部立山アルペンルート』(1974・古今書院)』