募役法(読み)ボエキホウ(その他表記)Mù yì fǎ

デジタル大辞泉 「募役法」の意味・読み・例文・類語

ぼえき‐ほう〔‐ハフ〕【募役法】

中国宋代、王安石新法の一。郷村力役負担を軽くするため、賦役免除の代わりに徴収した免役銭・助役銭によって、希望者を募って力役にあてたもの。

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精選版 日本国語大辞典 「募役法」の意味・読み・例文・類語

ぼえき‐ほう‥ハフ【募役法】

  1. 〘 名詞 〙 中国の北宋時代、王安石の新法の一つ。賦役免除の代わりに納入させた免役銭および助役銭によって希望者を雇い、農民労役負担軽減を計ったもの。〔宋史‐食貨志上五〕

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改訂新版 世界大百科事典 「募役法」の意味・わかりやすい解説

募役法 (ぼえきほう)
Mù yì fǎ

中国,北宋の王安石の新法の一つで,職役(しよくえき)の銭納化政策をいう。宋代,土地財産を持つ農民(主戸)はその所有高により九等の戸等に分けられ,上四等戸は職役を強制された。職役とは,租税や戸口台帳の作成,徴税業務と徴収した米穀などの運搬,警察の捕手(とりて)など,単純な力役より一歩進んだ徭役を指す。地方行政に必要な経費が国家予算に計上されていない当時,それは地方費の現物納という性格をもっていた。ただ官戸や寺観は免役の特権を与えられ,いっぽう就役した農民は官員や胥吏(しより)と接触する現場で不当搾取をうけ,あるいは賠償責任などで没落することが多かった。江南の先進地では職役の銭納化が進んでおり,王安石はこれを新法の一つとして強力に推進した。1069年(煕寧2)に施行された募役法は,四等以上の農村主戸から相応の免役銭を徴収し,従来,免役の特典のあった官戸などからは半額の助役銭を徴収,それで必要な役人(えきじん)を雇った。旧法党はこれを廃止したが,以後の大勢は募役の方向に進んだ。
役法
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「募役法」の意味・わかりやすい解説

募役法
ぼえきほう

中国、北宋(ほくそう)の政治家、王安石(1021―86)の新法の一つ。北宋前期、郷村での徴税や治安維持は、有力農民が順番に担当する差役(さえき)法によっていたが、負担が重く、破産する農民も多かった。王安石は租税の管理、運搬などの役(えき)を、人民を募って給料を与える方式に改めた。そのために、従来役負担のなかった下等主戸や有力な客戸、および官戸、寺観、商人からも免役銭または約半額の助役銭を徴収し、寛剰(かんじょう)銭として2割を加徴してその財源にあてた。

[島居一康]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「募役法」の意味・わかりやすい解説

募役法
ぼえきほう
Mu-yi-fa; Mu-i-fa

中国,宋の王安石の新法の一つ。宋代には農村の租税徴収,治安維持,官物の輸送などに農民を徴発する差役法が実施され,中小地主や自作農の過重な負担となっていたが,その改善策として王安石が神宗の煕寧3 (1070) 年から実施したもの。農民の力役の代りに免役銭を出させ,これを財源に政府が失業者を低賃金で雇う方法であるが,従来免役の特権をもっていた官戸,寺観,商人などからも約半額の助役銭を出させたので,これらの人々の反感を買うことになった。

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旺文社世界史事典 三訂版 「募役法」の解説

募役法
ぼえきほう

北宋代の王安石の新法の1つ
宋代には租税徴収・盗賊逮捕など地方自治的職務にあたる職役(差役)の負担が重かった。そこで役に該当するものでそれを免れたい者からは免役銭を,従来職役を免ぜられていた官戸・寺院・商人などからは助役銭を徴収し,これを財源として希望者を雇って役の仕事をさせ,給料を与えることにした。地方の税負担を増し,実情にそぐわないとして旧法党の反対を受けた。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「募役法」の解説

募役法(ぼえきほう)

北宋の王安石の新法の一つ。徴税,治安などの地方統治にかかわる労役を,上・中層農民に割り当てる差役法がその没落を招いたので,免役銭を彼らから徴収する一方,希望者を募り雇銭を給して労役にあてた。

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世界大百科事典(旧版)内の募役法の言及

【賦役】より

…賦課の基準は主として資産によって区分された5等級の戸等であった。官人などの支配身分の者は一定範囲で免役の特権をもち,そのため社会問題を惹起し,この矛盾の解決をはかった王安石の募役法は,徭役に服する代りに免役銭を納めさせ,また従来,役を免除されていた者にも助役銭を出させ,これらを財源として必要な労働力を雇用するものであった。流通経済の発展にともなう合理的な改革であったから,王安石の失脚後一時廃されたこともあるが,やがて復活して南宋時代にも維持された。…

※「募役法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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