包茎(読み)ホウケイ(その他表記)Phimosis

精選版 日本国語大辞典 「包茎」の意味・読み・例文・類語

ほう‐きょうハウキャウ【包茎】

  1. 〘 名詞 〙ほうけい(包茎)和英語林集成(初版)(1867)〕

ほう‐けいハウ‥【包茎】

  1. 〘 名詞 〙 成人の陰茎の亀頭部が皮膚(包皮)でおおわれている状態。皮かぶり。ほうきょう。〔医語類聚(1872)〕

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六訂版 家庭医学大全科 「包茎」の解説

包茎
ほうけい
Phimosis
(男性生殖器の病気)

どんな病気か

 ペニスをおおっている包皮(ほうひ)の出口が狭く亀頭(きとう)が露出しない状態を真性(しんせい)包茎、手を用いると完全に露出できても、包皮が過剰なため通常は亀頭が露出していない状態を仮性(かせい)包茎といいます。

 包皮と亀頭の一部が癒着(ゆちゃく)して完全に露出できないことがよくありますが、このような状態は生理的包茎と呼ばれ、真性包茎とは区別され、特別な治療の必要はなく、大部分は徐々に癒着がはがれてきます。

 真性包茎は新生児の96%、乳児の80%、幼児の60%、小学校低学年の40%にみられ、思春期前では10%、思春期後は5%と減少し、真性包茎の大部分は思春期までに自然に治ります。成人になって生殖活動が始まるまでは、むしろ小児の包茎は、包皮によって亀頭をおおい保護する意味をもち、生理的な自然な状態であるとの意見もあります。

包茎に伴う問題

①包皮口が極端に狭く排尿障害を来すことがあります。針穴のように狭いと、排尿時に包皮内に尿がたまり、風船のようにふくらむこと(バルーニング現象)があります。

亀頭包皮炎(きとうほうひえん)を起こしやすくなります。

嵌頓(かんとん)包茎を起こすことがあります。

恥垢(ちこう)がたまります。恥垢は包皮と亀頭との間に上皮細胞などのカスがたまってできる黄白色の塊です。放置しておいても問題ありません。包皮の癒着がとれてくると自然に脱落します。

治療の方法

 治療は原則として真性包茎にかぎられますが、泌尿器科医の間でも治療法の選択や時期に関して明確な治療指針がないのが現状です。真性包茎の大部分が自然治癒すること、包茎の手術後の外観に不満が残ることも少なくないこと、さらに最近、ステロイド軟膏による保存治療が有効なことがわかってきたので、手術は慎重に行うべきと考えます。

 ただし成人以降も真性包茎を放置すると、慢性の炎症性刺激により陰茎(いんけい)がんになることがあり、思春期以降も真性包茎が治らない場合は手術を行ったほうがよいでしょう。

 仮性包茎は基本的には手術の必要はありませんが、本人が気にする場合には手術をすることもあります。ただし、保険適応とはならず自費になります。

●保存療法

 用手的包皮翻転(ほんてん)とステロイド軟膏の塗布を組み合わせた方法は簡便で、70~80%に有効な結果が得られています。

 キンダベートやロコイドなどの弱いステロイド軟膏を、1日2回、左手の親指と人差し指でペニスの根本方向に包皮を痛くない程度にひっぱり、包皮口に薄く塗ります。これを1~2カ月続けます。亀頭が完全に露出せず包皮の癒着が一部残ることもありますが、いずれはがれてきます。

 その後は入浴時に時々包皮をめくり、再狭窄(きょうさく)を防止します。包皮はめくったままにしておくと嵌頓包茎になるので、必ず元にもどしておきます。一気に用手的包皮翻転を行うと痛みを伴い、感染や嵌頓包茎を来すことがあるので慎むべきです。

●手術療法

 保存的治療が無効で排尿障害を起こすほど狭い、あるいは亀頭包皮炎を繰り返す場合や嵌頓包茎を来した場合、思春期以降になっても真性包茎を認める場合には、手術の適応となります。環状切開術が一般的で、包皮の狭い部分を切除し縫い合わせます。

武田 光正


包茎
ほうけい
Phimosis
(子どもの病気)

どんな病気か

 図23のようにおちんちんの亀頭(きとう)部分が包皮(ほうひ)(おちんちんを包んでいる皮膚)でおおわれたままになっているものを包茎といいます。手で包皮をむく(亀頭に沿ってひっぱる)と、亀頭の一部でも露出する場合は仮性(かせい)包茎で心配ありません。

原因は何か

 胎児のころは、包皮内板(包皮の内側部分)と亀頭はもともとくっついていて、包皮は亀頭を保護する役割を果たしていると考えられます。したがって乳幼児にみられる包茎のほとんどは生理的包茎で、幼児、学童と成長するにつれ徐々にむけていきます。新生児では96%が手を使ってもむけない包茎の状態ですが、乳幼児のころには包茎と思われても徐々にむけていきます。1歳で50%、3歳で70~90%、17歳では99%包皮がむけて心配ない状態になるといわれています。

症状の現れ方

 通常、症状はありませんが、以下のような症状がみられることがあります。

①包皮口が狭いために排尿が難しい

 尿が包皮内にたまり、風船状にふくらんで、おしっこが出にくいため、膀胱や腎臓を傷めてしまうおそれがあります。おしっこが勢いよく線を描き、腹圧を加えずにスムーズに出ているかどうか注意し、スムーズに出せていないようなら医師に相談します。

亀頭包皮炎(きとうほうひえん)を繰り返す

 図23のように包皮と亀頭の間にたまった恥垢(ちこう)に細菌が増殖して起こります。おちんちんの先が赤くはれて、うみが出たり、おしっこの時に痛がります。年に数回以上繰り返す時は手術の必要が考えられるので、医師に相談します。包皮口が極端に狭くなく、年に2~3回程度なら、ただちに手術はせず、抗生剤の外用と内服で処置し経過をみます。恥垢が包皮の下に白い塊として見える場合がありますが、何も症状がない時は様子をみるだけでかまいません。

嵌頓(かんとん)包茎

 普段はむけにくい包皮がたまたま何かの拍子にむけて、狭い包皮輪によって亀頭の頸部(けいぶ)が強く締めつけられ、もとの状態にもどらなくなってしまい、亀頭はむくみ、痛みを伴う状態をいいます。亀頭を包皮のなかに手でもどすことを試み、うまくいかない時は、ただちに小児科医または泌尿器科医の診察を受けてください。救急的に手術が必要になることがあります。

検査と診断

 診察の際、手で包皮をむいた時に亀頭がまったく露出しないものを真性(しんせい)包茎、一部でも露出する場合は仮性包茎と診断します。診断のための特別な検査は不要です。

治療の方法

 包茎以外の症状がない時は、放っておいても問題ないため思春期まで経過をみます。前述のような症状がある場合や、思春期を過ぎた真性包茎では、手術を行います。

関連項目

 細菌性尿路感染症亀頭包皮炎

金子 一成


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家庭医学館 「包茎」の解説

ほうけい【包茎 Phimosis】

[どんな病気か]
 陰茎(いんけい先端の亀頭(きとう)は、生まれたときには、包皮(ほうひ)におおわれていて露出していません。また、包皮と亀頭の粘膜(ねんまく)が癒着(ゆちゃく)していることも珍しくありません。ふつう、亀頭がつねに露出するようになるのは、思春期を過ぎてからです。
 亀頭が包皮におおわれている状態を包茎といいます。
 包皮の表層は、自然なふつうの状態では、先端に包皮輪(ほうひりん)とか包皮口(ほうひこう)と呼ばれる折り返しの部分があり、ここを境にして、外板(がいばん)と内板(ないばん)という部分に分けられます。内板は、亀頭に接している部分です。
 包茎でも、包皮を陰茎の根もとのほうに寄せていくと、包皮はしだいにめくれて亀頭が現われ、亀頭に接していた内板も翻転(ほんてん)され、外板に続く状態で外向きになります。このように翻転できる包茎を、仮性包茎(かせいほうけい)といいます。
 仮性包茎である陰茎を、包皮が翻転した状態で勃起(ぼっき)させると、血管やリンパ管が狭い包皮輪の部分によってしめつけられ、血液などが流れにくくなり、亀頭は赤紫色に腫(は)れ、しめつけられているところから先の包皮もひどくむくんで、激しい痛みをともなうことがあります。これを嵌頓包茎(かんとんほうけい)といいます。
 勃起していない仮性包茎でも、包皮輪が十分に広くなく、翻転後に亀頭先端から陰茎の根もとのほうに移動した包皮輪の部分が陰茎を強くしめつける場合は、嵌頓包茎の状態になる危険があります。
 包皮輪が狭くて包皮の翻転ができない状態は真性包茎(しんせいほうけい)といいます。真性包茎をむりに翻転して放置すれば、嵌頓包茎になります。
[原因]
 乳幼児期の包茎は、病気ではありません。成長とともに自然に亀頭が露出するようにならない場合に、病気とみなされます。
 包茎は、基本的には先天的な病気と考えられますが、真性包茎は包皮輪が線維化して狭くなっているもので、先天的か後天的か区別できないことがあります。
[検査と診断]
 視診と触診で診断できます。小児の真性包茎で、排尿時に包皮の部分が球状に膨らむ場合には、包皮輪がきわめて狭いので、早期に手術をしたほうがよい兆候と考えられます。
 また、亀頭包皮炎(「亀頭包皮炎」)などによって包皮と亀頭部が癒着していることもあります。
[治療]
 真性包茎は手術を行ないます。幼小児期の場合は、成長にともなってしだいに包皮が退縮し、包皮を翻転できるようになって自然によくなることがありますので、3歳ころまで経過をみます。
 仮性包茎は、嵌頓包茎のおそれがあったり、亀頭包皮炎をくり返す場合には手術を行ないます。
 嵌頓包茎は、まず手でもとの状態になるように試み(用手的整復)、それがむりなら、ためらわずに手術を行ないます。
 なお、仮性包茎の場合は、翻転できても余分な包皮が長くて性交に支障をきたす場合や、性的劣等感の原因となっている場合には、手術を行なうこともあります。
 手術は、包皮の背面切開術と環状切除術が代表的なものです。背面切開術は、おもに幼小児に行なわれています。局所麻酔でよいのですが、小児の場合は全身麻酔が行なわれます。
[日常生活の注意]
 嵌頓包茎になるおそれのある仮性包茎では、包皮を翻転した状態での勃起をひかえ、手術が必要かどうか専門医(泌尿器科医(ひにょうきかい))の診察を受けるようにします。また、包茎を翻転しない状態で放置すると、将来、陰茎がん(「陰茎がん」)にかかりやすくなることがわかっています。真性包茎は3歳ごろ以降、早めに手術を受けさせるようにするとよいでしょう。
 いきまないと尿が出ないほどの高度な真性包茎では、尿路閉塞(にょうろへいそく)性疾患としてのさまざまな症状が現われ、膀胱拡張(ぼうこうかくちょう)・肉柱形成(にくちゅうけいせい)、水腎症(すいじんしょう)(「水腎症」)へと進み、腎不全(じんふぜん)(「腎不全」)になることさえあります。
[予防]
 確実な予防法はありませんが、仮性包茎では、入浴時などにときどき包皮を翻転して、ぬるま湯でよく洗い、亀頭包皮炎や陰茎がんにならないように心がけましょう。

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改訂新版 世界大百科事典 「包茎」の意味・わかりやすい解説

包茎 (ほうけい)
phimosis

陰茎亀頭が包皮で包まれ露出していない状態を一般に包茎と呼ぶ。したがって小児では大部分が包茎であるが,成人になると陰茎や亀頭の発育とともに包皮は後退し亀頭が露出してくる。包皮の開口部を包皮輪と呼び,ここが異常に狭いと包皮を反転させて亀頭を露出させることができない。これを真性包茎という。包皮が長く平常は包茎であるが,その反転によって亀頭の露出が可能なものを仮性包茎と呼ぶ。真性包茎は先天的なもので遺伝の傾向がみられる。また亀頭包皮炎をくり返し包皮輪に瘢痕(はんこん)収縮が起こり,真性包茎と同様な状態が後天的に生ずることもまれにある(炎症性包茎)。真性包茎では,包皮と亀頭のあいだに分泌物(恥垢(ちこう)smegma)がたまりやすく,これが石のように硬くかたまり亀頭と包皮が癒着していることも少なくない。また不潔になりやすく,亀頭包皮炎を起こしやすい。高度の真性包茎では,包皮輪が針穴のように狭く,尿がうまく出ず水腎症を起こすこともある。仮性包茎は一般に症状もなく,大部分は正常の範囲と考えられ治療の必要もない。しかし平常時には包皮の反転が可能で亀頭が露出するが,陰茎が勃起したときにはこれが不可能なものは真性包茎に近く,治療の必要がある。またこのような例では,無理に包皮を反転させると,比較的狭い包皮輪が冠状溝付近で亀頭と包皮をしめつけるため,これより先の包皮や亀頭がむくんで元にもどらなくなることがある。これを嵌頓(かんとん)包茎paraphimosisと呼ぶ。仮性包茎でも,包皮が極端に長いものや,このために早漏の傾向がみられるもの,あるいは亀頭包皮炎をくり返すものでは治療の必要がある。包茎と陰茎癌の発生には関係があるとされ,ユダヤ教徒などのように,宗教的あるいは風俗的なならわしによって新生児期に包茎手術(割礼)を行う人々には陰茎癌が少ない。これは,恥垢や炎症などによる局所の刺激が発癌に関与しているためであろう。包茎の手術には,包皮の背面(包皮小帯付着部の反対側)を切開する簡単な方法と,余分な包皮を環状に切除する方法とがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「包茎」の意味・わかりやすい解説

包茎
ほうけい

陰茎を包む皮膚は亀頭部で内板(ないばん)と外板(がいばん)からなる包皮となっており、この内外両板の移行部である包皮口が狭いために包皮を反転させて亀頭を露出できないものを包茎という。包皮が長すぎていつも亀頭を覆っていても、包皮口が狭くなくて反転が容易にできるものは仮性包茎または偽(ぎ)包茎とよんで区別されることもある。乳児では内板と亀頭が癒着しているので包茎は生理的な現象であるが、2歳を過ぎると癒着が先端のほうからしだいにとれてくるのが普通で、この癒着がとれないまま包皮が長すぎたりすると、先端部が不潔になって炎症(亀頭包皮炎)を繰り返すことになる。この結果、包皮口が瘢痕(はんこん)化してますます狭くなり、成人しても包皮が反転できない、いわゆる真性包茎となる。包茎が高度の場合、つまり包皮口が極端に狭いと排尿障害が強くなり、排尿時に先端が球状に膨らんだり、上部尿路にまで拡張が及んで水腎(すいじん)症をおこすこともある。また、包皮口が狭いのに性交などにより無理に包皮を反転させたままにしておくと、循環障害により亀頭は狭い包皮輪に締め付けられ、包皮が腫(は)れ上がって亀頭を包皮内に戻せなくなる。これを嵌頓(かんとん)包茎という。包茎のまま局所を不潔にしておくと、包皮内に恥垢(ちこう)がたまったり、亀頭包皮炎を繰り返したり、ときにはこうした慢性の刺激が原因となって陰茎癌(がん)が発生することもある。

 包皮内板と亀頭の癒着をはがすだけで治ることもあるが、多くの場合、包皮の背面を切開して包皮口を広げるか包皮を環状に切除する。仮性包茎はかならずしも手術の必要はない。

[松下一男]

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百科事典マイペディア 「包茎」の意味・わかりやすい解説

包茎【ほうけい】

包皮が陰茎先端部の亀頭を越えて反転できないか,反転しにくいもの。乳児では包茎は生理的であるが,思春期以後は包皮は次第に後退し亀頭は露出する。包茎は恥垢(ちこう)がたまりやすく,亀頭包皮炎を招くことがある。治療は包茎手術。勃起(ぼっき)に際し包皮が自然に後退するものは仮性包茎といい,手術の必要はない。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「包茎」の意味・わかりやすい解説

包茎
ほうけい
phimosis

包皮が亀頭をおおっている状態をいう。普通,小児は包茎で,思春期を過ぎると自然に亀頭が露出するか,包皮を反転させて亀頭を露出させうるようになる。先天的に包皮輪が狭く,包皮を反転できないものを真性包茎,反転できるものを仮性包茎という。また,無理に反転してもとに戻らなくなり,包皮がはれ上がった状態をかんとん包茎という。真性包茎とかんとん包茎は手術を要し,仮性包茎も手術を希望されることが多い。

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世界大百科事典(旧版)内の包茎の言及

【陰茎】より

…陰茎を包む皮膚は下層とゆるく結合しているので移動性に富み,その前方部は包皮となる。亀頭は前端部の亀の頭に似た部分で,包茎の人では包皮がその上を覆っている。包皮の内面と亀頭の後端部では皮脂腺がよく発達していて包皮腺とよばれる。…

※「包茎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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