十輪院(読み)じゅうりんいん

精選版 日本国語大辞典 「十輪院」の意味・読み・例文・類語

じゅうりん‐いんジフリンヰン【十輪院】

  1. 奈良市十輪院町にある真言宗醍醐派の寺。山号は雨宝山。もと元興寺(がんごうじ)の子院で、霊亀元年(七一五)、朝野魚養(あさのなかい)が創建したと伝えられる。聖武天皇勅願所。本堂は鎌倉時代の建築で国宝。

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日本歴史地名大系 「十輪院」の解説

十輪院
じゆうりんいん

[現在地名]奈良市十輪院町

元興がんごう寺の東方に所在。雨宝山と号し、真言宗醍醐派。本尊石造地蔵菩薩。元興寺の一院で、朝野魚養・空海・聖宝らの開基とする説があるが未詳。鎌倉時代の建築・彫刻が残り、「沙石集」に南都における地蔵霊仏として、近くの福智ふくち院地蔵などとともに「十輪院ノ地蔵」がみえ、特殊な地蔵信仰の中心地であったことが知られる。江戸期の寺領は五〇石。「庁中漫録」所収の慶長七年(一六〇二)の徳川家康朱印状に「和州十輪院堂舎既及大破、為修造於添上郡肘塚村法華寺村之内五十石寄附之、寺内藪等永進止不可有相違、興仏興専修造了祈祷精誠者也」とある。三間一戸、切妻造・本瓦葺の小さな四脚の南門(国指定重要文化財、鎌倉時代初期)を入ると、すぐ池を隔てた右手に興福寺曼荼羅石、愛染曼荼羅石、不動石仏、春日・伊勢社倉(いずれも鎌倉時代)などの石造遺品が遺存。


十輪院
じゆうりんいん

[現在地名]府中市広谷町 十輪谷

真言宗御室派、山号陌明山、本尊地蔵菩薩、もと栄明えいみよう寺末。もとは等持とうち(東地寺)といい、「備陽六郡志」は「東地寺、十輪院開山沙門秀雄カ、中興法印宥知」と記すが、「水野記」は「白明山地蔵院等持寺(中略)今作東地寺、本尊将軍地蔵也、伝言、備後国府中八尾山城主山名備後守源時清其比号日本六分一殿、応永七年春為祈願所之、則寺領寄二十五貫也、天正二十年毛利家没収之」と記す。


十輪院
じゆうりんいん

[現在地名]大任町今任原

どうに所在する高野山真言宗寺院。松霊山延命えんめい寺といい、本尊は地蔵菩薩(鎮火地蔵尊)。かつては京都仁和寺の末寺であったが、明治一二年(一八七九)に仁和寺派から高野山派に転じた(大任町誌)。享保二年(一七一七)小倉藩主小笠原忠雄が江戸藩邸で火災にあった際、一人の怪僧が火を鎮め、領内田川郡今任いまとう村の地蔵であると告げたという。忠雄は直ちに使者を出し、この地を検分したところ草堂の中で地蔵菩薩を発見、精舎を建立したと伝える。

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改訂新版 世界大百科事典 「十輪院」の意味・わかりやすい解説

十輪院 (じゅうりんいん)

奈良市十輪院町にある真言宗醍醐派の寺。山号は雨宝山。〈じゅうるいん〉と俗称されることも多い。寺伝では平安初期の医師・書家朝野魚養(うおかい)の開基とするが不詳。もと元興寺の一院で,鎌倉時代には地蔵霊場として知られた。本堂(鎌倉初期,国宝)の背後の石仏龕(重要文化財)には,左右に十王を配した本尊地蔵菩薩立像が彫られ,その前で葬送儀礼を行ったらしい。他に重要文化財の南門(鎌倉初期),木像不動明王(平安後期)なども有名。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「十輪院」の意味・わかりやすい解説

十輪院
じゅうりんいん

奈良市十輪院町にある真言(しんごん)宗醍醐(だいご)派の寺。雨宝山(うほうざん)と号する。本尊は石造地蔵菩薩(ぼさつ)。寺伝では元正(げんしょう)天皇の勅願によって朝野魚養(あさのなかい)が開基と伝え、元興寺(がんごうじ)の子院といわれる。『地蔵十輪経』から名がつけられ、無住法師の『沙石集(しゃせきしゅう)』(1283)第8に、当寺が地蔵信仰の場としていた記述がみられる。江戸時代には寺領50石を賜る。境内には鎌倉時代の本堂(国宝)と南門(国の重要文化財)、室町後期の御影(みえい)堂(県の文化財)などがある。地蔵菩薩を刻んだ石仏龕(せきぶつがん)、木造不動明王および二童子立像は国の重要文化財。また庭園一帯には石彫物や石仏群がみられる。7月23、24日に地蔵会(え)が行われる。

[眞柴弘宗]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「十輪院」の意味・わかりやすい解説

十輪院
じゅうりんいん

奈良市にある真言宗の寺。創立は明らかでないが,寺伝では霊亀年間 (715~717) に朝野魚養の開基という。本堂は鎌倉時代中期の建物で,石仏龕 (がん) の礼堂として建てられたもの。床が低く,住宅風のすぐれた意匠の仏堂で,国宝。

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デジタル大辞泉プラス 「十輪院」の解説

十輪院

奈良県奈良市にある寺院。真言宗醍醐派。山号は雨宝山。寺伝では、平安時代、朝野魚養(うおかい)による開基とされるが不詳。本堂は国宝、南門などは国の重要文化財に指定。

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世界大百科事典(旧版)内の十輪院の言及

【石仏】より

…京都府石像寺の元仁元年(1224)銘の三尊像は,三尊を1石1体ずつ丸彫に近い高肉彫であらわし,この時代の石仏の傾向をよく示している。他に群馬県不動寺不動明王像(凝灰岩,丸彫)などがあり,大型の石室構造をもつものに奈良市十輪院石仏龕(花コウ岩)がある。またこの時代には東大寺の再建工事に参加した伊行末(いぎようまつ)に代表される宋人石工の活躍があり,伊行末の作品に般若寺十三重石塔初層四方石仏,石仏ではないが参考とすべきものに1196年(建久7)宋人石工字六郎作の東大寺南大門石獅子がある。…

※「十輪院」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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