六訂版 家庭医学大全科 「各種感染症について」の解説
各種感染症について
かくしゅかんせんしょうについて
Infectious diseases
(お年寄りの病気)
高齢者での特殊事情
高齢者にみられる感染症の大半は、口腔、気道や腸管内の
高齢者では、加齢による身体諸機能の低下や、特定臓器の慢性障害をもっている頻度が高くなります(表15)。これらを背景としてさらに加齢に伴う全身的な免疫能の低下が進行すると、感染防御力の弱い臓器から感染症が発症してきます。
このため、経過は急速で症状は重く、再発・再燃を繰り返し、やがて難治化、慢性化すると回復にも時間がかかります。その間、
これらが誘因となって、さらに新たな感染症が発症する悪循環に陥ることが多く、看護・介護上の大きな問題点になっています。近年、抗菌薬の進歩は目覚しく、感染症の治療は比較的容易になったようにみえますが、このような理由のために、高齢者の感染症による死亡の割合は改善していません。
今日、高齢者では、すべての感染症を極力予防することが最重要課題ですが、高齢者の特殊性として、発見・診断・治療が遅れやすいのも事実です。たとえば、肺炎にかかっても、発熱、
したがって、いつもと違う様子がみられた時には、常に何らかの感染症の可能性を考えて、注意深く観察するとともに、早期に受診して、検温、胸部X線、血液、尿など、必要な検査を受けることが極めて重要です。
日頃の予防が大切
高齢者ではしばしば感染症を契機として、栄養状態の悪化や呼吸不全、心不全の
また、看護・介護上の留意点として、日常は栄養管理を十分に行って感染防御力の低下を防ぎ、とくに、長期寝たきり状態の高齢者に対しては、呼吸器感染症の予防として、定時の口腔内ケアを行い、
高崎 優
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報