身と蓋とからなる小型の容器。古墳時代には近畿とその隣接地域で碧玉または滑石で作った石製合子を使用した。平面が円形で,径5cmほどの有脚の碧玉製合子が4世紀にあらわれ,平面が楕円形で,長径10cm以上の平底無脚の滑石製合子は5世紀にくだる。ともに蓋は甲高に作るが,鈕(つまみ)はつけていない。木製品を祖形とするものであろうが,なにを入れるものかはわからない。岡山市金蔵山(かなくらやま)古墳出土の長径40cmほどの埴製(はにせい)合子には各種の鉄製工具を入れてあった。
蓋に鈕のついた合子は6世紀以降に朝鮮から伝来した。慶州壺杅塚(こうづか)出土の壺杅は鋳銅の合子で5世紀の製作であるが,新羅には銀や金銅の鍛造の合子もある。百済の武寧王陵出土の銀製合子は径8.1cm,高台付きで鋳造である。法隆寺五重塔の舎利容器を納めた宝珠鈕金銅合子は径11.3cm,高台付きで鋳造後に轆轤(ろくろ)でひいて仕上げてある。正倉院宝物には黄銅(おうどう),赤銅(しやくどう),金銅などの相輪形鈕をつけた合子があって,密教の仏具として精緻な技巧を示している。正倉院にはまた《東大寺献物帳》に碁子を納めたと記す木胎の銀平脱(ぎんへいだつ)合子や,寒水石を納めた檜薬(ひのきのくすり)合子など,蓋に鈕をつけぬ合子もある。その一つで琴や琵琶の絃を納めた合子は銀平脱梳箱(くしげ)とよんでいる。したがって,大物主神が小蛇の姿ではいっていたと《日本書紀》崇神天皇条にいう櫛笥(くしげ)も,合子の一種であったにちがいない。
執筆者:小林 行雄
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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