日本風の書のこと。唐様の対語。奈良~平安初期には中国の書とくに王羲之(おうぎし)の書風に追従することが第1とされたが,平安中期に至ってそれまでとは一線を画する日本独特の書風が確立された。概して温和で優美なこの書風を和様とよぶ。和様の示す範囲は一般に楷書・行書・草書の漢字三体に限定され,日本でうまれた仮名は含まれない。最初の和様創始者は三蹟の1人小野道風(みちかぜ)で,王羲之の書を日本化して書くことに成功した。その後,同じく三蹟の藤原佐理(すけまさ)・藤原行成(ゆきなり)によって継承された。とくに後世の和様書流の根幹となる世尊寺(せそんじ)流の祖である行成の書風は広く流行した。法性寺(ほっしょうじ)流・御家(おいえ)流(青蓮院(しょうれんいん)流)など中世~近世に主流をなしたものはおおむね和様であり,明治期に入って中国風の書が盛んになるまで長期にわたり隆盛を誇った。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…【田辺 三郎助】
【建築】
鎌倉時代の建築は治承の乱(1180)による兵火で焼失した南都諸寺の復興で,新しい幕を開いた。そのうち興福寺は主として藤原氏一門によって再建が進められ,様式は従来の和様の伝統を踏襲した保守的な構築にとどまった。東大寺では大仏殿をはじめ伽藍規模が巨大なため,資材,資金の調達に国内の総力の結集を必要とし,源頼朝の援助のもとに勧進上人俊乗坊重源の指導で再建された。…
…一般的には中国風の形式をもつとの意味で,日本固有の伝統的な和様に対していう。唐帝国の形式とは限らない。…
…
[軒まわり]
柱の上には組物(くみもの)(建築組物)を置いて桁(けた)を支え,上に垂木をかけて軒をつくる。組物は斗(ます)と肘木(ひじき)とを交互に積み重ねてゆくもの(和様,禅宗様)と,肘木を柱にさし込む挿肘木(さしひじき)(大仏様)とがあり,斗と肘木の数によって,舟肘木,大斗(だいと)肘木,三斗(みつど),出組(でぐみ),二手先(ふたてさき),三手先(みてさき),四手先(よてさき),六手先(むてさき)の別がある。和様では柱上だけに組物を置き,その中間に蟇股(かえるまた)あるいは間斗束(けんとづか)を置くが,禅宗様では中間にも組物を置き,詰組(つめぐみ)と呼ばれる。…
…建物全体の軸部は横長の長方形になることが多く,柱と貫(ぬき)などで構成される軸部も正方形を基本とし,縦長の長方形とはしない。このような点は中国様式の影響の強い法隆寺や初期の禅宗建築と,奈良・平安時代以来の和様(わよう)と呼ばれる建築とを比較すると,明瞭に知ることができよう。たとえば禅宗建築では,建物の正面の幅の1.4倍くらいが棟(むね)の高さであるから,全体の形は縦長の長方形となるが,和様の建物では棟高は建物の正面の幅と同じか,それ以下となっている。…
…これから政治・文化の中心が京都に存在した約400年間がいわゆる平安時代であり,美術の歴史の上でもこれを一つの時代とみている。ただし見方によって,894年(寛平6)の遣唐使廃止によって象徴される大陸文化との一応の絶縁までを弘仁・貞観あるいは貞観時代といって,それ以後の藤原時代と区別したり,10世紀中ごろのようやく和様化の顕著となってくる時期までを平安前期,以後を和様の完成からその展開の時期とみて平安後期のように二分するなど,諸説がある。これらの考え方の根底には,9世紀における華麗な密教美術の開花と,いわゆる一木彫像の示す存在感の強烈な印象が,一つの画期的なものであるという主張がうかがえる。…
… これに代わる新しい美術の展開の契機となったのは,禅宗とともに中国からもたらされた宋・元の美術様式である。建築では安楽寺八角三重塔(長野)にみられるような禅宗様(唐様)が宋風の異国調をただよわせ,伝統的な和様建築はこの禅宗様や大仏様(天竺様)をとり入れて,いわゆる折衷様を生みだした。彫刻では慶派,院派,円派が前代末から引き続いて活躍し,各地に多くの像を残している。…
…一般に〈和様〉という場合,日本の建築や書道その他の芸術などでわが国固有のものとして古代以来伝えられてきた様式をいう。〈やまとのかたち〉と信じられているものだが,実際には飛鳥・奈良時代に中国の唐から伝えられ,これを学び,平安時代を通じてしだいに日本人の感覚と風土に合うように変容した文化様式を指している。…
※「和様」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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