問屋場【といやば】
近世の宿駅において公用交通のための伝馬・人足の継立てを差配する施設。五街道では宿駅ごとに置かれ,複数の問屋場がある場合は半月や10日交替で業務を行った。問屋場には問屋・年寄の宿役人のほか,問屋が奉公人として雇った帳付(ちょうづけ)・馬指(うまさし)という下役が詰めていた。問屋は宿駅・助郷(すけごう)の人馬を差配し,公私の人馬継立てや休泊に関する一切の駅務を管掌した。年寄は問屋の補佐役,帳付は毎日の人馬の出入りを記帳,馬指は宿駅・助郷人馬に荷物を差配した。1868年伝馬所取締役が設置され,問屋場は伝馬所と改称された。1872年宿駅制度が廃止となった。
→関連項目宿・宿駅
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といや‐ば とひや‥【問屋場】
〘名〙
江戸時代、宿駅で人馬の継立などをする事務所。その位置は、宿駅の中央に一か所ある場合や、上下に一か所ずつ、または上中下三か所にあるなど、各宿によって異なる。ここを主宰するのは
問屋役で、年寄役がこれを補佐し、その下役に帳付、馬指・人足指・小指などがあった。とんやば。駅亭。問屋。伝馬所。
※御触書寛保集成‐二二・正徳二年(1712)四月「中山道筋にて荷物附替候節、人馬無之由を申、問屋場にて
留置、駄
賃銭之外に
庭銭と申、臨時之賃銭取候所も有之由不届に候」
とんや‐ば【問屋場】
〘名〙 「といやば(問屋場)」の変化した語。
※咄本・近目貫(1773)
吉原「そんなら馬にでも乗ますべい。問
(トン)屋場
(バ)はどこだあもし」
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問屋場
とんやば
江戸時代,宿駅の人馬の継立 (つぎたて) ,助郷 (すけごう) 賦課などに関する事務をとる役所。駅亭,伝馬所,馬締ともいう。業務は問屋 (または問屋役) が主宰し,ほかにその補佐役の年寄,さらに人馬の出入りや賃銭などを記入する帳付,人馬を割当てる馬指などの役があった。
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問屋場
といやば
江戸時代,宿駅の事務を行う所
「とんやば」とも読む。公用の人馬の配置,助郷人夫の賃金の会計などを扱った。
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といやば【問屋場】
近世の宿の事務を扱う場所。伝馬所または会所ともいう。宿役人の長である問屋の屋敷の一部をあてることもあり,別に設置する場合もあった。問屋が2人いれば問屋場も2ヵ所になり,問屋の数に応じた。問屋場へ詰めるのは問屋・年寄の宿役人と帳付・馬指(うまさし)・人足指などの実務に当たる者で,通常は交代で出勤するが,大通行のときには全員が詰める。問屋場で扱うのは公用またはそれに準ずる武家・公家あるいは書状・御用物等であるが,宿人馬で不足のときには助郷(すけごう)の人馬を寄せ集めておき,ときには数百頭数千人にも及ぶ人馬を差配するから,戦場のような騒ぎになった。
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世界大百科事典内の問屋場の言及
【宿場町】より
… 宿の長を古くは長者といったが,江戸時代には問屋といい,1名または2名ぐらいいて,人馬の継立てや休泊に関する業務をつかさどった。その事務をとる所を問屋場という。問屋の補佐役は年寄で,数名のことが多い。…
【問屋場】より
…宿役人の長である問屋の屋敷の一部をあてることもあり,別に設置する場合もあった。問屋が2人いれば問屋場も2ヵ所になり,問屋の数に応じた。問屋場へ詰めるのは問屋・年寄の宿役人と帳付・馬指(うまさし)・人足指などの実務に当たる者で,通常は交代で出勤するが,大通行のときには全員が詰める。…
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