問屋場(読み)トイヤバ

デジタル大辞泉 「問屋場」の意味・読み・例文・類語

といや‐ば〔とひや‐〕【問屋場】

江戸時代街道宿駅で、人馬駕籠かごなどを用意して、旅人便宜をはかった所。駅亭。

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精選版 日本国語大辞典 「問屋場」の意味・読み・例文・類語

といや‐ばとひや‥【問屋場】

  1. 〘 名詞 〙 江戸時代、宿駅で人馬の継立などをする事務所。その位置は、宿駅の中央に一か所ある場合や、上下に一か所ずつ、または上中下三か所にあるなど、各宿によって異なる。ここを主宰するのは問屋役で、年寄役がこれを補佐し、その下役帳付馬指・人足指・小指などがあった。とんやば。駅亭。問屋伝馬所
    1. [初出の実例]「中山道筋にて荷物附替候節、人馬無之由を申、問屋場にて留置、駄賃銭之外に庭銭と申、臨時之賃銭取候所も有之由不届に候」(出典:御触書寛保集成‐二二・正徳二年(1712)四月)

とんや‐ば【問屋場】

  1. 〘 名詞 〙 「といやば(問屋場)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「そんなら馬にでも乗ますべい。問(トン)屋場(バ)はどこだあもし」(出典:咄本・近目貫(1773)吉原)

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改訂新版 世界大百科事典 「問屋場」の意味・わかりやすい解説

問屋場 (といやば)

近世宿事務を扱う場所。伝馬所または会所ともいう。宿役人の長である問屋の屋敷の一部をあてることもあり,別に設置する場合もあった。問屋が2人いれば問屋場も2ヵ所になり,問屋の数に応じた。問屋場へ詰めるのは問屋・年寄の宿役人と帳付・馬指(うまさし)・人足指などの実務に当たる者で,通常は交代で出勤するが,大通行のときには全員が詰める。問屋場で扱うのは公用またはそれに準ずる武家公家あるいは書状・御用物等であるが,宿人馬で不足のときには助郷(すけごう)の人馬を寄せ集めておき,ときには数百頭数千人にも及ぶ人馬を差配するから,戦場のような騒ぎになった。公用旅行の武士などは権威に乗じて横暴を極め,問屋場詰の役人を苦しめた。ここでは宿や助郷人馬の出勤を日々記録して日〆(ひじめ)帳を作って,助郷惣代にも立ち会わせて確認させ,それに応じて賃銭を支払った。継飛脚など夜中の継立てのためには泊り番も毎夜詰めていた。
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百科事典マイペディア 「問屋場」の意味・わかりやすい解説

問屋場【といやば】

近世の宿駅において公用交通のための伝馬・人足の継立てを差配する施設。五街道では宿駅ごとに置かれ,複数の問屋場がある場合は半月や10日交替で業務を行った。問屋場には問屋・年寄の宿役人のほか,問屋が奉公人として雇った帳付(ちょうづけ)・馬指(うまさし)という下役が詰めていた。問屋は宿駅・助郷(すけごう)の人馬を差配し,公私の人馬継立てや休泊に関する一切の駅務を管掌した。年寄は問屋の補佐役,帳付は毎日の人馬の出入りを記帳,馬指は宿駅・助郷人馬に荷物を差配した。1868年伝馬所取締役が設置され,問屋場は伝馬所と改称された。1872年宿駅制度が廃止となった。
→関連項目宿・宿駅

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「問屋場」の解説

問屋場
といやば

近世,宿駅の伝馬継立を行う施設。人馬会所・馬借会所という所もある。維新期には名称が伝馬所と改められた。問屋場は一つの宿駅に1~2カ所程度。複数ある場合は,期日を定めて交代で開設するが,大規模通行の場合,一問屋場の宿では臨時の問屋場を増設することもあった。岡崎宿などのように,人足と馬の継立を別の問屋場で行う宿もある。問屋場には問屋・年寄の宿役人に,帳付・馬指・人足指の下役人が詰めて,人馬継立と宿駅業務にあたった。中期以降には助郷惣代も詰める所があった。五街道の品川など,一部の重要な宿駅には,継立の不正取締りのために,貫目改所が付設されていた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「問屋場」の意味・わかりやすい解説

問屋場
とんやば

江戸時代,宿駅の人馬の継立 (つぎたて) ,助郷 (すけごう) 賦課などに関する事務をとる役所。駅亭,伝馬所,馬締ともいう。業務は問屋 (または問屋役) が主宰し,ほかにその補佐役の年寄,さらに人馬の出入りや賃銭などを記入する帳付,人馬を割当てる馬指などの役があった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「問屋場」の解説

問屋場
といやば

江戸時代,宿駅の事務を行う所
「とんやば」とも読む。公用の人馬の配置,助郷人夫の賃金の会計などを扱った。

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世界大百科事典(旧版)内の問屋場の言及

【宿場町】より

… 宿の長を古くは長者といったが,江戸時代には問屋といい,1名または2名ぐらいいて,人馬の継立てや休泊に関する業務をつかさどった。その事務をとる所を問屋場という。問屋の補佐役は年寄で,数名のことが多い。…

【問屋場】より

…宿役人の長である問屋の屋敷の一部をあてることもあり,別に設置する場合もあった。問屋が2人いれば問屋場も2ヵ所になり,問屋の数に応じた。問屋場へ詰めるのは問屋・年寄の宿役人と帳付・馬指(うまさし)・人足指などの実務に当たる者で,通常は交代で出勤するが,大通行のときには全員が詰める。…

※「問屋場」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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