■喀痰細胞診の評価
《クラス》
Ⅰ:[評価]陰 性
Ⅱ:[評価]陰 性
Ⅲ:[評価]偽陽性
Ⅳ:[評価]陽 性
Ⅴ:[評価]陽 性
痰の中に細菌やがん細胞が含まれているかどうかを調べる検査です。喀痰細胞診で陽性の場合は、がん細胞が見つかったことを意味します。
呼吸器疾患の診断に不可欠な検査
喀痰検査は、痰の中にどのような病的な成分が含まれているかを調べるもので、呼吸器の病気を調べるために不可欠の検査になっています。喀痰検査には、喀痰細胞診と喀痰細菌検査があります。
喀痰細菌検査は、痰の中に細菌が含まれているかどうかを調べる検査です。肺炎の原因菌の確定や結核の証明など、呼吸器感染症の診断のために痰をとり、培養して検査を行います(喀痰培養)。以下、喀痰細胞診についてみていきます。
肺がんの診断に重要な喀痰細胞診
近年、喫煙や社会環境などの変化で、肺がんの患者さんが増加しています。がんの確定診断は、がん細胞を証明することが必要です。肺がんは、痰の中にがん細胞が排出されることも多く、そのため肺がんの診断のひとつとして喀痰細胞診が行われています。
3日分の痰をためて調べる喀痰細胞診
喀痰検査は自己採取のため、不良検体となることがあるので、採痰のしかたについてきちんと指導を受けることが大切です。
喀痰細胞診には、3日間の痰をためて検査する方法(蓄痰法)と、1日ごとに痰をとって3日連続して検査する方法(連続法)とがあります。3日分の痰を採取するのは、1日だけの場合だとがん細胞の検出率が低いためで、最低でも3日分の採痰が望ましいからです。ここでは、蓄痰法について述べます。
痰は多めのほうがいいので、いつでもとれるときにとってください。最もよいのは起床直後の痰で陽性率が高いため、できるだけ朝おきたら採痰するようにします。
採痰するときは、必ずうがいをして口の中をきれいにします。これは食物の残りかすなどが痰の中に混ざり、がん細胞との鑑別が難しくなることがあるからです。
痰を出すときは、強い
とれた痰は、ふたをして固定液と混じるように、強く振ってよく
採痰後は、冷蔵しないでください。翌日も同じ容器に痰を出し、よく撹拌して保存し、これを3日間繰り返します。
細胞はクラス分類して評価
提出した痰は染色され、病理の専門医により診断されます。喀痰細胞診では、正常細胞からがん細胞まで、細胞の型や染色程度で5段階に分類されます。
クラスⅠとⅡは陰性で、がん細胞はありません。クラスⅠはまったくの正常細胞で、クラスⅡは炎症をおこしている細胞ですが、がんではありません。
クラスⅢは偽陽性で、再検査をします。ⅣとⅤは陽性で、がん細胞が認められたことであり、さらに腫瘍マーカー(→参照)や胸部CT(→参照)などを行って、くわしい検査を行います。
疑われるおもな病気の追加検査は
◆肺がん→腫瘍マーカー(シフラ、SCCなど)、胸部CT、PET-CT、気管支内視鏡など
◆肺炎→胸部単純X線撮影、胸部CTなど
◆肺結核→胸部単純X線撮影、胸部CTなど
医師が使う一般用語
「さいぼうしん」
出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報
呼吸器疾患の診断のために行う痰の検査で,次の三つがおもなものである。(1)痰の色や性状と量の検査 細菌感染のあるときには黄色く膿性となる(気管支炎や細菌性肺炎)。嫌気性菌の感染では腐敗臭が特徴。気管支拡張症や肺化膿症では大量である。血痰が肺癌の初期症状となることもある。気管支の枝わかれがそのまま鋳型になったような形の粘液やクルシュマン螺旋(らせん)体(気管支喘息(ぜんそく)などのときにみられるもので,螺旋状にねじれた糸状の粘液)など特殊な肉眼的異常がみられる。(2)細菌学的検査 結核菌など特殊な細菌が検出されれば診断を行ううえで意義がでてくるが,喀痰にはつねに口腔内の細菌(常在細菌叢)が混じるため,細菌性肺炎などでは,原因菌の断定にあたっては慎重でなければならない。繰り返し,大量に検出される常在菌以外の細菌をもって原因菌とするが,あらかじめうがいをして,生理食塩水で洗った痰の中心部から培養を行うなどのくふうもなされる。(3)細胞学的検査 今日では肺癌の最も基本的な検査の一つであり,肺癌が疑われたなら,癌細胞検出を目的として繰り返し行う。痰を数日分,特殊な容器にためて行う集痰法も行われている。このほか,アレルギー性疾患でみられる好酸球,石綿肺での含鉄小体,気管支喘息に特徴的なシャルコライデン結晶などの検出も診断に役立つ。
執筆者:工藤 翔二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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