デジタル大辞泉
「遺族年金」の意味・読み・例文・類語
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遺族年金
一家の働き手や年金受給者など、公的年金の加入者が死亡した場合、その人の収入で生活していた遺族に給付される年金。死亡者が自営業などの場合は「遺族基礎年金」、会社員や公務員の場合は「遺族厚生年金」を受給できる。両方もらえる場合もある。受給対象は配偶者や子ども、孫のほか、父母や祖父母のケースもある。
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いぞく‐ねんきんヰゾク‥【遺族年金】
- 〘 名詞 〙 各種の社会保障法に基づき、遺族に対して定期的に支給する一定額の金銭。
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遺族年金 (いぞくねんきん)
一家の生計の中心者であった者が死亡したとき,その者と生計維持関係にあった遺族に支給される年金給付。日本の公的年金制度では,国民年金制度を通して支給される全国民共通の遺族基礎年金と自営業者等のみを対象とする寡婦年金,厚生年金保険(または共済年金)から支給される遺族厚生年金(または遺族共済年金)がある。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は,(1)国民年金の被保険者,(2)過去に国民年金の被保険者であった者で,日本国内に住所があり,かつ60歳以上65歳未満の者,(3)老齢基礎年金の受給権者,(4)老齢基礎年金の資格期間を満たしている者,のいずれかに該当する者が死亡したとき,子のある妻または子に支給される。なお,(1)と(2)に該当する場合には,死亡日前に保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間が被保険者期間の2/3以上あることが必要である。ただし,2006年4月1日前の死亡については,死亡前の1年間に保険料滞納期間がないときにも遺族基礎年金が支給される。遺族の範囲は,死亡したとき,その者によって生計を維持されていた妻で子と生計を同一にしている者,および死亡した者の子である。なお,子とは18歳の年度末までの者,または20歳未満で1級・2級の障害の状態にある者である。なお,子の場合,妻が遺族基礎年金の受給権を有するとき,または生計を同じくする父もしくは母があるときは,その間支給が停止される。年金額(1997年度の年額)は,妻に支給するときは,78万5500円に,生計を同一にする第1子と第2子には1人につき22万6000円,第3子以降は1人につき7万5300円を加算した額である。子に支給するときは,78万5500円に第2子以降の子の加算額を加えた額である。
寡婦年金
寡婦年金は,国民年金の第1号被保険者(自営業者など)のみの遺族給付で,第1号被保険者としての保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間が原則として25年以上ある夫が死亡した場合に,夫の死亡当時夫により生計が維持され,10年以上婚姻関係が継続していた65歳未満の妻に60歳から支給される。ただし,死亡した夫が,障害基礎年金の受給権者であったことがあるとき,または老齢基礎年金を受給していたときには支給されない。年金額は,夫が生存していれば受給するはずであった第1号被保険者としての加入期間にかかる老齢基礎年金の額の3/4である。
遺族厚生年金
遺族厚生年金は,(1)厚生年金の被保険者が死亡したとき,(2)厚生年金の被保険者であった者が被保険者期間中に初診日のある傷病により初診日から5年以内に死亡したとき,(3)1級・2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき,(4)老齢厚生年金の受給権者または資格期間を満たした者が死亡したとき,に遺族に支給される。遺族厚生年金が支給される遺族の順位は,(1)配偶者(妻または夫)と子,(2)父母,(3)孫,(4)祖父母であり,先順位の者が受給権を取得すれば,その後先順位の者が受給権を失っても,次順位の者には支給されない。遺族厚生年金の年金額は,報酬比例の年金額(平均標準報酬月額×7.5/1000×被保険者期間の月数×3/4×スライド率)を基本として,妻が受給権者の場合は,これに中高齢寡婦加算または経過的寡婦加算が加わる。報酬比例の年金額の計算では,短期の遺族厚生年金の場合で,厚生年金保険の被保険者期間が300月未満のときは300月として計算する。一方,長期の遺族厚生年金の場合には,被保険者期間の月数は実際の期間を用いる。中高齢寡婦加算は,夫の死亡時に35歳以上で子のない妻に,40歳から65歳になるまでの間支給される。また,1956年4月1日以前に生まれた妻には65歳以後,生年月日別に定められた経過的寡婦加算が支給される。ただし,被保険者期間が20年(中高齢加入の特例で15~19年)未満の老齢厚生年金の受給権者であった夫が死亡したときには,いずれの加算も支給されない。
→年金
執筆者:山崎 泰彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
遺族年金
いぞくねんきん
生計の担い手である被保険者が死亡したとき、その人によって生計を維持していた所定の遺族に支給される年金。遺族年金には、国民年金から支給される全国民共通の遺族基礎年金のほかに、厚生年金保険の遺族厚生年金がある。
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者または老齢基礎年金の資格期間を満たした者が死亡したとき、その者によって生計を維持していた子のある配偶者または子に支給される。この場合の子とは、婚姻をしていない18歳到達年度の末日までの子または20歳未満であって障害の程度が1、2級の子である。ただし、子に対する遺族基礎年金は、配偶者が遺族基礎年金の受給権を有するとき、または生計を同じくする父または母があるときは、その間支給停止される。遺族基礎年金の年金額は定額で、配偶者と子1人では年額100万6600円(2020年度)、子が増えると加算される。
遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者や老齢厚生年金の受給権者などが死亡したとき、その者によって生計を維持していた遺族に支給される。支給対象となる遺族の範囲は、遺族基礎年金の支給対象となる遺族(子のある配偶者または子)、子のない配偶者(夫の条件については後述)、被保険者等が死亡したときに55歳以上である夫・父母・祖父母(いずれも60歳から支給)、孫である(子、孫の条件は遺族基礎年金の子の場合と同様)。したがって、遺族が子のある配偶者または子のときは遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給され、その他の遺族には遺族厚生年金のみが支給される。遺族厚生年金が支給される遺族の順位は、(1)配偶者と子、(2)父母、(3)孫、(4)祖父母であり、先順位の者が受給権を取得すれば、その後に先順位の者が受給権を失っても、次順位の者には支給されない。遺族厚生年金の年金額は、報酬比例の年金額の4分の3を基本として、妻が受給権者の場合は、これに中高齢の寡婦加算額または経過的寡婦加算額を加えた額である。遺族厚生年金の年金額の計算では、被保険者期間中の死亡などで被保険者期間が300月未満のときは300月として計算する。遺族年金と老齢年金の受給権を取得したときの併給関係については、遺族厚生年金と老齢基礎年金は併給される。一方、遺族厚生年金と老齢厚生年金については、65歳未満ではいずれか一つの年金の選択制であり、65歳以上では、老齢厚生年金は全額支給されるが、遺族厚生年金は老齢厚生年金より年金額が高い場合に、老齢厚生年金の額との差額が支給される。
[山崎泰彦 2020年11月13日]
『みずほ総合研究所編著『図解 年金のしくみ』第6版(2015・東洋経済新報社)』▽『『厚生年金保険法総覧 平成30年4月版』(2018・社会保険研究所)』▽『『国民年金法総覧 平成30年4月版』(2018・社会保険研究所)』▽『『社会保険のてびき』『年金のてびき』『国民年金ハンドブック』各年版(社会保険研究所)』
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遺族年金
いぞくねんきん
公的年金の被保険者または老齢基礎年金(→老齢年金)の資格期間を満たした者が死亡したとき遺族に支給される年金。遺族基礎年金,遺族厚生年金,遺族共済年金がある。(1) 遺族基礎年金 国民年金の被保険者,日本に在住する被保険者であった 60歳以上 65歳未満の者,あるいは老齢基礎年金の資格期間を満たしている者が死亡したとき支給される。支給対象者は,死亡した夫または親により生計を維持されていた 18歳未満の子(障害者は 20歳未満)のいる妻,または子。ただし,保険料納付期間と保険料免除期間の合計が加入期間の 3分の2以上あること,死亡月の前々月までの 1年間に保険料の未納がないことが受給資格要件となる(→寡婦年金)。(2) 遺族厚生年金 厚生年金保険の被保険者が死亡したとき,または被保険者期間中に初診日のある傷病がもとで初診日から 5年以内に死亡したときに支給される。ただし,保険料納付期間と保険料免除期間の合計が国民年金加入期間の 3分の2以上あることが受給資格要件。老齢厚生年金の資格期間を満たした者が死亡したとき,1級,2級の障害厚生年金を受けられる者が死亡したときも給付される。支給対象者は,配偶者,子,父母,孫,祖父母。(3) 遺族共済年金 共済組合加入者が在職中に死亡したとき,在職中の病気やけがが原因で死亡したとき,退職共済年金受給者が死亡したときに支給。支給対象者は,遺族基礎年金の支給対象となる遺族,死亡した者により生計を維持されていた配偶者,子,父母,孫,祖父母。共済独自の職域加算額が加算される。(2) (3)はともに遺族基礎年金も受給できる。
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遺族年金【いぞくねんきん】
厚生年金などの被用者年金加入者やかつてこれらの年金に加入したことのある人が死亡したときに遺族に支給される年金。1986年4月からの新年金制度の施行にともない,遺族には遺族基礎年金が支給され,被用者年金加入者にはそれに上乗せの報酬比例の遺族年金が支給されるようになった。前者は亡くなった配偶者に18歳未満の子がいると支給されるもので(年金額は子の人数できまる),後者の年金額は死亡した人の被保険者月数と平均標準報酬月額から算出される。なおこの他に,戦傷病者・戦没者遺族等援護法による遺族年金もある。→寡婦年金
→関連項目共済年金
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知恵蔵
「遺族年金」の解説
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
遺族年金
・survivors' pension
・年金の加入者、または受給権者の死亡後、遺族の生活保障の目的で遺族に対して支給される年金のこと。
・死亡した者と生計を一にしていた子のある妻、あるいは子。死亡した者の保険料納付期間(免除期間含む)が加入期間の3/2以上ある等、支給要件がある。
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世界大百科事典(旧版)内の遺族年金の言及
【遺産】より
…しかし他の共同相続人の[遺留分]を侵害した場合は,その相続人から遺留分に達するまでの持戻請求を受けることになる(1032条)。(3)遺産に含めるか否かが問題となるもの 保険金,遺族年金,死亡による退職金,香典等,被相続人の死亡を契機として相続人に支払われる金品が遺産に含まれるか否か問題となる(なお相続税法3条には,保険金,年金,死亡退職金は相続財産とみなす,と規定しているが,これは税政策上そうなっているのであって,そのためにこれら保険金等が遺産に含まれることにはならない)。(a)生命保険金が被保険者の死亡によって支払われる場合問題となり,保険金受取人が被保険者(この場合被相続人となる)であるときは,支払われた保険金は被相続人の遺産となる。…
【厚生年金保険】より
…被用者が老齢,障害,死亡により所得を喪失した場合,本人および家族の生活を保障するために主として年金給付を行う社会保険である。 1942年実施の労働者年金保険に始まり,44年に一般事務職,女子も対象に加えて,厚生年金保険の名称に改められた。戦時体制下に制定されたこの年金制度には,生産力の拡充のための労働力の増強確保と強制貯蓄的な機能が期待されていた。第2次大戦後は激しいインフレのために一時は存在の意義も疑われたが,54年の抜本的な改正によって一応の体制を整え,新しい厚生年金保険として再出発することとなった。…
【戦争犠牲者援護】より
…軍人恩給の復活(1953)により軍人とその遺族は恩給法の対象に移行し,援護法の対象は,軍属と準軍属(旧軍部内の雇傭人,満鉄職員,動員学徒,徴用工,防空監視隊員等ならびにその遺族)に拡大され,20回に及ぶ改正の積重ねによりその給付内容,公務の対象範囲,遺族の範囲が改善された。援護の種類としては,障害年金,障害一時金(障害の程度や原因となった傷病の別により異なる),遺族年金,遺族給与金,弔慰金,の5種がある。対象者の老齢化に伴い援護の質と量の両面での拡充が要請されている。…
【年金】より
…この公的扶助も,広義の年金の一種と考えている国もある。 年金の主要な給付は[老齢年金]だが,このほかに一般に[障害年金]と[遺族年金]が支給される。年金制度は,老齢,障害,死亡による所得の喪失に際して一定の年金を支給する防貧の制度で,公的扶助はすでに貧困におちいった者を事後的に救済する救貧の制度である。…
※「遺族年金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」