条約によって外国船舶の自由航行を認めている運河。運河は人工的な水路であり,自然の水路である河川とともに,内水として領域国の排他的支配に服するのが原則である。領域国の側には,ここに外国船の無害通航を認める義務はない。しかし,運河の中にも公海と公海を結び,国際交通のうえで重要なものがあり,そのような運河が,条約によって外国船舶の自由航行を認める場合,これを国際運河という。国際運河は,地理的に一国領土内に位置する点で,国際河川と異なる。また,国際河川の場合と違って,国際運河については,一般的な条約はなく,個々の条約で国際化が規定される。現存する国際運河は,スエズ運河とパナマ運河である。
地中海と紅海を結ぶスエズ運河を国際化したのは,領域国トルコ(現在はエジプト)など9ヵ国の間で締結された1888年のコンスタンティノープル条約である。同条約は,平時・戦時を問わず,すべての国家の商船・軍艦に対し自由航行を保障した。また,領域国が交戦国であるときでも,運河地帯での敵対行為は許されないと規定し,スエズ運河を中立化した。1956年,エジプトが同運河を国有化したため,同運河の中立化は事実上制約されることになったが,運河の国際化の制度そのものは,エジプトも尊重している。
太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河を国際化したのは,アメリカ・イギリス間で締結された1901年ヘイ=ポンスフォート条約であった。同条約自身,コンスタンティノープル条約の自由航行,中立化などの規則を採用すると規定した。そして,03年,アメリカは,パナマとの間にヘイ=バリラ条約を締結して,パナマ運河地帯を永久に支配する権利を獲得した。しかし,77年,アメリカは,パナマとの間にパナマ運河条約その他の条約を締結し,西暦2000年を期して,パナマ運河および運河地帯をパナマに返還することに同意した。
執筆者:松田 幹夫
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国際条約に基づいて、運河の管理と利用とが国際化されている人工的水路をいう。従来、キール運河、スエズ運河、パナマ運河がその例とされてきた。しかし、北海とバルト海を結ぶキール運河の国際化を定めたベルサイユ条約の規定は失効したものとみられ、また地中海と紅海を結ぶスエズ運河の国際化を規定したコンスタンティノープル条約は、エジプトによる運河の国有化によって意味を失ったため、厳密には国際化された運河ではなくなった。
中米の地峡に設けられたパナマ運河は、20世紀初頭の二つの条約によって国際化され、運河はすべての商船、軍艦のために、平等・自由の原則に従って開放されてきた。1977年9月7日、パナマとアメリカは、パナマ運河に関する新しい条約を結び、運河を永久中立化し、アメリカは運河の管理、運営、維持、防衛に必要な権利をもつことを合意するとともに、1999年末に運河の管理権をパナマに返還することを約束し、99年12月31日正午に返還した。
[中村 洸]
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