土地割り(読み)とちわり(その他表記)land division

改訂新版 世界大百科事典 「土地割り」の意味・わかりやすい解説

土地割り (とちわり)
land division

土地の所有,利用の必要から行われる土地の区画。地割りともいう。宅地割り(屋敷割り),耕地割り,道路割りなどを含む。その成立において自然発生的(非計画的)のものと計画的のものとがある。自然発生的土地割りは,土地を利用していくに際して特別の計画なしに土地が区画されたもので,一般にその場所に応じた不規則な形態を示す。たとえば,河流や傾斜などの地形,土地利用などに応じて種々の特徴をもつ。扇状地面上や沖積低地では,網状流や蛇行流により生じた旧河道に沿って傾斜方向に耕地の列が並んでいるのが特徴であり,平坦な沖積低地においては水田の形は不等辺多角形(とくに亀甲形)のものが見られる。傾斜地では棚田がつくられ弓形の不整形耕地となる。急傾斜になるほど1筆は小さくなり,いわゆる千枚田となり,畑の場合も段畑により等高線耕作景観を呈する。特異な例では,五島列島(長崎県)において土壌浸食,防風,防潮などの自然および社会経済条件を誘因に発生したと考えられている円形の土地割り(円畑(まるばた)と呼ばれる)が見られる。

 計画的土地割りは一定の成案に基づいて設定されたもので,とくに広い平坦地に見られる。等間隔に区画された方格状の土地割りとしては,日本各地にその遺構が存在する条里地割り,北海道開拓における植民地区画や屯田兵村に伴う屯田割り,ローマ時代のケンチュリア,中国の井田制,アメリカ合衆国のタウンシップがあり,短冊型の土地割りとしては日本の近世における新田地割り(典型例は武蔵野新田に見られる),ドイツの林地村での例などがある。干拓地(干拓地割り)や埋立地,火山麓などの開拓地においても計画的土地割りが見られる。

 都市では,近・現代の都市計画により建設された例のほかに,計画的土地割りの例が見られる。中国および日本における条坊制がその古いものであり,日本では難波京,大津京,藤原京,平城京,平安京の造営に取り入れられた。また,寺内町城下町宿場町などに独特の土地割りが施されている。なお,都市内部の街路や家々の配列からなる土地割りを,とくに町割りと呼ぶ場合がある。

 土地割りに関してA.マイツェンが,1895年に地籍図に即して集落農地の研究を著した。彼は,諸民族の集落と農業事情についての大著において,土地割りと社会制度,集落形態との間に対応関係があることを指摘し,土地割りから,過去の農村について社会的・経済的構造の分析を試みた。それ以来,土地割りは農業史や地理学の分野で研究されてきた。日本では,条里地割りの研究から始まり,集落,歴史地理学分野において,農業経営,景観や地域の発展過程,旧河道の復元などによる平野の発達等々に関して利用,研究されている。一般に土地割りは,条里地割りの例に見られるように,容易には改変されない。しかし今日では,農地の宅地化,工業団地や住宅団地の造成,大規模な圃場整備や土地区画整理事業などにより,急激に従来の土地割りが変更される例が多く,その記録の重要性が高まっている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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