地学(読み)チガク(その他表記)earth science
earthsciences

デジタル大辞泉 「地学」の意味・読み・例文・類語

ち‐がく【地学】

地球およびその構成物質に関する科学地質学地球物理学地球化学岩石学鉱物学海洋学気象学地形学などを含む。高等学校教育課程では天文学も含めている。→地球科学
[類語]理科物理学化学生物学

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「地学」の意味・読み・例文・類語

ち‐がく【地学】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 地球および地球をかたちづくる物質に関する学問。地質学・鉱物学・岩石学・地球物理学・地球化学・地震学など、地球に関する自然科学総称。気象学、海洋学など、気圏や水圏に関する分野をも含めて、広義に使われることもある。
    1. [初出の実例]「此説は大鳥圭介君の考にて地学協会の報告に見ゆ」(出典:風俗画報‐一七三号(1898)東京上古の景況)
  3. 地理学のこと。
    1. [初出の実例]「星学、地学、数学、化学等の学科を教導す」(出典:西洋聞見録(1869‐71)〈村田文夫〉前)
  4. 第二次大戦後、高等学校に設けられた理科の一科目。これには地質学・鉱物学などのほか、天文学・気象学・海洋学・環境学に関する内容も含まれる。

地学の語誌

( 1 )一八世紀後半から明治期にあってはのように地理学を指したほか、明治期には地理学と地質学を合体したものを意味するのが一般的だった。
( 2 )他方明治一二年(一八七九)にイギリスの Royal Geographical Society を範として設立された Tokyo Geographical Society は「東京地学協会」と称し、機関誌「地学雑誌」を出しているが、内容的には地質学関係を中心に地理学も含まれており、第二次大戦後は地球物理学の分野も含むようになっている。
( 3 )現在では、に示したように地球の内部・表面や地球を構成する物質に関する自然科学の総称としての用法が一般的であり、地球科学とほぼ同義。共に earth science の訳語である。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「地学」の意味・わかりやすい解説

地学 (ちがく)
earth science
earthsciences

地球の内部,表面,および周辺空間の現象を研究対象とする学問分野。地球科学とほぼ同義に用いられる。日本の中等教育の場で現在用いられている地学という科目名は,第2次大戦後に新教育体制発足とともに誕生したもので,その内容は宇宙,気象,海洋,地球,環境等までも含む。物理,化学,生物と並んで理科4教科の一つに定着しているが,より原理的な自然科学分野を志向する物理,化学とは性格が著しく異なり,地球~宇宙という具体的な対象によって規定された分野である。広域にわたる自然史学的事象を扱うため,時間・空間のいかんにかかわらず成立する法則を用いながら,唯一無二の歴史的経過としての宇宙・地球における規則性,相互作用等を明らかにすることを目的としている。

 自然科学ないし自然のしくみの理解には,原理的な法則だけでなく自然探究の方法と態度の涵養が不可欠で,この意味でより現実的な対象をあつかい,その規則性・相互作用を明らかにする地学や生物学は重要である。外国では,日本のこの教科における地学に相当するような分野のくくり方はあまり多くなく,訳語に当てられているearth scienceなどは,より地球科学的なニュアンスをもっている。強いて対応する分野名を挙げるならば,自然環境学environmental sciencesや自然史学natural historyの大部分がそれに当たるとしてよい。日本で戦前から用いられている用語の〈地学〉は,ドイツでいうErdkundeに対応する性格をもち,地質科学と地理学とを合体したような内容である。したがって,宇宙関係,地球物理学関係の分野はあまり広くは含まれていない。現在も存続している東京地学協会は,そのようなドイツ型地学をイメージに,古く1879年(明治12)に創立された日本最古の地学関係協会であり,E.ナウマン,原田豊吉をはじめとする当時の先覚者らのもたらした影響が大きかったことを物語っている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「地学」の意味・わかりやすい解説

地学
ちがく
earth sciences

地球を対象とする学問を総称して地学という。地球について考究する自然科学をさすことが多いが、しばしば人文科学分野を含み、また地球以外の天体に関する学問をも含める。このように、地学の語の用い方はときに著しく異なる。1883年(明治16)に東京大学に創設された地学会の地学は地質学とほぼ同じ意であった。ジオロジーgeology(地質学)という英語の直訳としては地質学よりも地学のほうがふさわしい。ジオロジーが土地の性質の追究に終わるものでないという意味で地学の訳語が用いられた。しかし一方、そのころにすでにあった東京地学協会の地学は、地質学、地球物理学、地球化学のように一般に地球科学とよばれる自然科学のみならず、人文地理学のような人文科学をも含み、地学会の地学よりも広い意味をもっていた。また、現在の東京大学理学部の地学科は、地質学、鉱物学、地理学からなる複合学科であるし、かつて各大学にあった地学科の多くも地質学、鉱物学を扱っていた。これらは地球物理学や地球化学を含めないことが多かったが、現在では地球惑星学科などのように、地質学、地球物理学などがいっしょになっていることが多い。現在の高校地学は地球科学のほかに天文学をも含めている。地球以外の天体の研究は地球を考究するよい手助けとなる。したがって、この分野の研究の進歩とともに地学の概念も広がっていくとみられる。

[木村敏雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地学」の意味・わかりやすい解説

地学
ちがく
earth science; geoscience

地球科学ともいう。地球を対象とする自然科学の総称。学問分野としては,自然地理学地質学鉱物学地球物理学海洋学気象学などとして発達してきたが,近年これらを総合する自然科学として地学または地球科学の語が用いられる。さらに広義の地学は,人間の自然環境という立場から,地球に影響のあるほかの天体の研究をも包括する。すなわち宇宙地球科学を高校教育課程では地学という。この用法はアメリカでも同様である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「地学」の意味・わかりやすい解説

地学【ちがく】

地球とその構成物質(岩石圏,気圏,水圏)に関する科学の総称。地質学,地球化学,地球物理学,岩石学,鉱物学,海洋学,気象学などを含む。第2次大戦後高校の理科教育の中に新設された地学は天文学,古生物学,自然地理の一部分をも含み,自然界から生物を除いた残り全部を対象としている。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の地学の言及

【地球科学】より

…地球を対象とする自然科学各分野の研究成果を総合した科学。固体としての地球を対象とする科学のみならず,海洋学,気象学なども含むが,とくに固体地球のみを扱うときは固体地球科学という。この分野は,主として地球物理学,地球化学,地質学,岩石学,鉱物学,地理学などを総合した科学であり,ときに天文学の関連分野も含む。地球科学とならんで地学といういい方もあるが,これは天文,宇宙,地球の諸科学を含む領域を理科教育上の配慮から区分したものである。…

【地球科学】より

…この分野は,主として地球物理学,地球化学,地質学,岩石学,鉱物学,地理学などを総合した科学であり,ときに天文学の関連分野も含む。地球科学とならんで地学といういい方もあるが,これは天文,宇宙,地球の諸科学を含む領域を理科教育上の配慮から区分したものである。地球の形態,構造,運動,成因などを研究する自然科学には,地理学や測地学のように古くから成立したものもあるが,関連諸科学の達成をもととして総合科学としての地球科学が確立したのは比較的最近のことである。…

※「地学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android