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地方史 ちほうしLandesgeschichte

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

地方史
ちほうし
Landesgeschichte

特定の一地方歴史ないしはこれを対象とする歴史学の一分野。研究の対象となる地方が研究者の郷土であり,そこに郷土愛的な感情が入っているような場合には郷土史と呼ばれる。従来地方史研究家といえば,歴史学の水準からみて,単に史料提供者としての位置しか与えられない場合も多かったが,ヨーロッパにおいては,すでに 19世紀後半以降科学的な地方史は歴史研究の重要な一分野としての地位を確立し,数多くの業績を残してきた。第2次世界大戦後は,日本でも科学的な地方史研究の意義が強調されるようになり,1950年には地方史研究協議会が設けられ,翌年機関誌『地方史研究』が創刊され,今日にいたっている。

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デジタル大辞泉の解説

ちほう‐し〔チハウ‐〕【地方史】

ある地方の歴史。特定の地域を対象として綴られた歴史。

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世界大百科事典 第2版の解説

ちほうし【地方史】

ある地域に関する歴史の意。一国の歴史全体にかかわるものではなく,特定の地方について調査研究した歴史。
[日本]
 古くは《風土記》などがその先蹤(せんしよう)となるものであるが,近世に至って,藩域を対象にした《新編会津風土記》《前橋風土記》《紀伊続風土記》《筑前国続風土記》などがあり,藩の力によって編修されたものが多い。国を単位としたものには,幕府による《新編武蔵風土記稿》《新編相模国風土記稿》《甲斐国志》があり,藩の力によるものには《近江国輿地志略》《雲陽志》などがある。

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大辞林 第三版の解説

ちほうし【地方史】

ある地域社会の歴史。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

地方史
ちほうし

太平洋戦争後発達した、日本史研究思潮の一つ。それまでの日本史学が中央権力の政治動向や偉人を中心とし、皇国史観に彩られていたことを批判し、地方民衆の歴史を重視する立場にたつ。労働者・農民の歴史や女性史など、生産者・被支配者の歴史こそ中心に置かれねばならないとする、国民的歴史学運動の一環として発達した。一方、戦前からの郷土史が、お国自慢的な有名人の発掘や、狭い地域的視野に閉じこもっていたことを反省して、歴史発展の法則を各地でみいだし、あるいは歴史の全体像のなかで有する地方の役割をみいだそうとした。ことに農地解放による地主制の崩壊、多様な形でみられる日本的な封建遺制の克服といった、当時の歴史学界が当面していた課題と結び付いて、地方史は近世史を中心に展開した感があったが、近年は民俗学、地理学、考古学、人類学などの影響もあって、中世・近代の特定の地方を取り上げた研究が多くなった。
 1950年(昭和25)地方史研究者・団体を全国的に統合する機関として、地方史研究協議会が結成され、さらに各地にも小研究団体が生まれ、数多くの研究誌が発行された。その基礎にたって、昭和30年代以降、市町村史・県史などの自治体による歴史編纂(へんさん)が盛行するようになり、多くの地方史研究者がこれに加わるようになった。自治体史は通史編のほかに、分厚な史料編も編集されることが一般的となったが、これは、急速な近代化と村落共同体の解体に伴い、地方文書(じかたもんじょ)類を中心とする文化財の湮滅(いんめつ)が進み、その防止が地方史研究者の社会的責務とされたこととかかわっている。同時にそれは、各自治体に文書館・郷土資料館を設立し、史料類の保存・整理とともに、民主的な史料利用体制を確立しようとする運動にも反映している。こうした地方史の編集や保存機関の設立運動には、研究者のみならず一般の地域住民の参加がみられ、大学を中心としたアカデミズムの歴史学とは好対照をなしている。けれども、日本における各地域の実証分析は深化した反面、総合し理論化する、独自の地方史方法論をまだ樹立するに至ってないとする反省がある。また日本史に集中してグローバルな視座を欠き、初発にもっていた批判的歴史学の性格が薄くなったという批判がある。
 1975年前後から地域史という概念が使われるようになったが、これまでの地方史が国家史との関係をあいまいにしてきた点をつき、地方または地域の歴史像を再構成することを提唱している。[北原 進]
『地方史研究協議会編『地方史研究』全七冊(1982~83・名著出版) ▽木村礎著『地方史を生きる』(1984・日本経済評論社) ▽横川末吉著『地方史を歩く――土佐』(1982・土佐史談会) ▽北原進著『近世農村文書の読み方・調べ方』(1981・雄山閣出版) ▽斎藤博著『地域社史の誕生』(1986・新評論)』

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