埋める(読み)ウメル

デジタル大辞泉 「埋める」の意味・読み・例文・類語

う・める【埋める】

[動マ下一][文]う・む[マ下二]
ある部分・範囲を物でふさぐ。
㋐くぼんでいるところに物を詰めて、くぼみをなくす。「城の堀を―・める」
㋑穴などに物を入れ、上に何かをかぶせて見えなくする。うずめる。「壺を庭に―・める」「火種を灰に―・める」
㋒人や物である場所をいっぱいにする。みたす。うずめる。「観衆が会場を―・めた」
不足損失を補う。「赤字を―・める」「空白を―・める」
水などを加えて温度を下げたり濃度を薄めに整えたりする。「風呂を―・める」
[用法]うめる・うずめる――「土で穴をうめる(うずめる)」「小判を入れたかめ地中にうめる(うずめる)」など相通じて用いられるが、「うめる」はくぼみや穴などを何かでふさぎ満たす意が強く、「うずめる」は空いた所を何かですっかり覆うようにする意が強い。◇「スタンドをうずめた観衆」「町を緑でうずめよう」など、ある場所を何かでいっぱいにする「うずめる」は、「うめる」で置き換えられなくはないが、隅々までびっしりという感じを表す場合は「うずめる」を用いるほうが適切。◇逆に、「余白をうめる」「欠員をうめる」など、欠けている部分を満たす意では、「うめる」のほうが一般的である。◇「湯をうめる」「損失をうめる」は「うめる」に特有の、「恋人の胸に顔をうずめる」は「うずめる」に特有の用法で、この場合両語を置き換えることはできない。
[類語]塞ぐまるうずまるもれるうずもれるうずめる埋め立てる埋め込むけるけ込む埋没埋設埋蔵敷設

うず・める〔うづめる〕【埋める】

[動マ下一][文]うづ・む[マ下二]四段活用の「うづむ」が変化して、室町時代ごろから用いられた》
土の中などに物を入れ込んで外から見えないようにする。うめる。「金塊を―・める」
物に覆われて外から見えない状態にする。うずまるようにする。「マフラーに首を―・める」
ある場所を、物や人でいっぱいにする。「スタンドを―・めた大観衆」
低い所やくぼんだ所などに物を詰めてふさぐ。うめる。「ごうを―・める」
損失や不足などを補う。うめる。「赤字を―・める」「余白を―・める」
める[用法]
[類語]まるうずまるもれるうずもれるめる埋め立てる塞ぐ埋め込むけるけ込む埋没埋設埋蔵敷設

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「埋める」の意味・読み・例文・類語

う・める【埋・填】

  1. 〘 他動詞 マ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]う・む 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙
  2. くぼんだ所や低い所などに物をつめてふさぐ。
    1. [初出の実例]「春は則ち渠(みそ)(ウメ)畔毀(あはな)ちす」(出典:日本書紀(720)神代上(水戸本訓))
  3. 物の一部、または全部を土の中などに入れ込んで外から見えなくする。また、埋葬する。
    1. [初出の実例]「もふ片(かタ)目無いと勘介埋められる」(出典:雑俳・川柳評万句合‐明和六(1769)松三)
  4. あたたかさや濃さを適度にするために、他の物をまぜ入れる。
    1. (イ) ぬるくするために、湯に水を入れる。また、あたたかくするために湯を加える。
      1. [初出の実例]「御湯まゐる。〈略〉とりつぎて、うめつつ」(出典:紫式部日記(1010頃か)寛弘五年九月一一日)
    2. (ロ) 味などを薄めるために、他の物をまぜ入れる。
      1. [初出の実例]「Meracior〈略〉サケニ ミヅヲ スコシ vmete(ウメテ) ノム」(出典:羅葡日辞書(1595))
  5. 人や物である場所をいっぱいにする。「うずめる」を使う場合が多い。
    1. [初出の実例]「けいせいにうめられて居る惣仕舞」(出典:雑俳・柳多留‐一一(1776))
  6. ( の比喩的用法 ) 損失や不足などを補う。「赤字をうめる」
    1. [初出の実例]「借金の穴へ娘をうめるなり」(出典:雑俳・柳多留‐二四(1791))
  7. 入れる意の隠語。もと、楽屋詞。
    1. [初出の実例]「質(はち)を入(ウメ)る使(つけへ)はいつでも主(ぬし)か」(出典:滑稽本浮世床(1813‐23)初)
  8. 取引相場で、転売や買い戻しによって取引関係を打ち切る。〔国民百科新語辞典(1934)〕

埋めるの補助注記

「うずめる」との違いについては、「うずむ(埋)」の語誌参照。


うず・めるうづめる【埋】

  1. 〘 他動詞 マ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]うづ・む 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙 ( 四段活用から転じて室町ごろから使われた )
  2. 物の一部、または全部を土や灰の中などに入れ込んで外から見えなくする。また、埋葬する。
    1. [初出の実例]「ワウゴンヲ〈略〉サンヤノ ツチノ ナカニ vzzumuru(ウヅムル) コトワ」(出典:天草本伊曾保(1593)貪欲な者の事)
  3. 人や物で、ある場所をいっぱいにする。いっぱい積み重なって下のものを覆い隠す。
    1. [初出の実例]「広き庭園は只だ馬車腕車に填(ウヅ)められて」(出典:良人の自白(1904‐06)〈木下尚江〉前)
    2. 「附録は文学欄で填(ウヅ)めてゐて」(出典:青年(1910‐11)〈森鴎外〉二)
  4. 低い所やくぼんだ所などに物を詰めてふさぐ。
    1. [初出の実例]「アナヲ vzzumuru(ウヅムル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  5. 人目に付かないようにする。隠す。
    1. [初出の実例]「踪(あと)を埋(ウヅ)め名を匿(かく)し」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)続)
  6. ( 気持を隠して外に表わさない意から、自動詞的に用いて ) すましこむ。
    1. [初出の実例]「怪しからぬ、うづめた顔で、煙草盆の前に控へ」(出典:歌舞伎・百千鳥鳴門白浪(1797)大序)
  7. ( の比喩的用法 ) 損失や不足などを補う。「うめる」を使う場合が多い。
    1. [初出の実例]「数限りもなき物入りありて、これ等の入用を埋(ウズ)めんために他より金を借り入るる時は」(出典:開化問答(1874‐75)〈小川為治〉二)

埋めるの語誌

→「うずむ(埋)」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android