塞ぐ(読み)フサグ

デジタル大辞泉 「塞ぐ」の意味・読み・例文・類語

ふさ・ぐ【塞ぐ】

[動ガ五(四)]
あいている箇所に物を詰めたり、覆ったりする。すき間や穴をなくする。「ふすま破れ目を―・ぐ」「決壊部分を―・ぐ」
耳・目・口などを手で押さえて覆う。また、目・口を閉じる。「耳を―・ぐ」「口を―・ぐ」
行く手に物を置くなどして通行や流れをさまたげる。はばむ。「倒れた木が道を―・ぐ」「椅子が―・いでいて通れない」
場所を占めて、他に余地を与えない。「大きな冷蔵庫が台所を―・いでいる」
与えられた役目などを果たす。「責めを―・ぐ」
(「鬱ぐ」とも書く)気分がすぐれず、ゆううつな気持ちになる。「―・いだ顔」
[可能]ふさげる
[動ガ下二]ふさげる」の文語形
[類語](1める充塡じゅうてんするまるうずまるもれるうずもれるうずめる埋め立てる埋め込むけるけ込む埋没埋設埋蔵敷設/(3閉ざす閉める閉じるたてる閉め切るふうずるさえぎはば遮断する封鎖する閉鎖する閉塞へいそくする/(6ふさがる結ぼれる沈む滅入めい曇るうっする鬱屈うっくつする鬱結うっけつする消沈するしょげるしょげ返るふさぎこむ物憂いびんびんせつせつ痛切切実深刻ひしひしつくづくしみじみじいん心から哀切哀れ悲しい物悲しいうら悲しいせつないつらい痛ましい悲愴悲痛悲傷沈痛苦しい憂い耐えがたいしんどい苦痛やりきれないたまらないる瀬ない断腸の思い胸を痛める胸が痛む胸が塞がるけだるいアンニュイ胸が裂ける胸が張り裂ける胸がつかえる胸が潰れる胸がつまる気を重苦しい気遣わしい塞ぎ込む憂鬱憂愁沈鬱メランコリー気鬱気塞ぎ鬱鬱陰鬱暗鬱鬱気うっき鬱悶うつもん鬱積抑鬱憂さ鬱陶しい悶悶もんもんもやもやぼけっと朦朧もうろうぼやける雲をつかむ不確か曖昧曖昧模糊ファジー茫乎ぼうこぼうっとなんとなくなんだかそこはかとないほんのりなんとはなしどことなくそれとなしに心なしなにかしら思いなしかほのか模糊茫茫ぼうぼう漠漠不明瞭茫漠ぼうばくもやくやもやつくぼんやり彷彿ほうふつ不鮮明鬱然くよくよくしゃくしゃくさくさやるせないくすぶるわだかまる意気消沈暗澹あんたん胸騒ぎ怪訝けげんいぶかしいいぶかる辛気歯がゆいいらいら

ふた・ぐ【塞ぐ】

[動ガ四]
ふさぐ」に同じ。
「耳を―・ぎてぞありつる」〈・八七〉
韻塞いんふたをする。
「―・ぎもて行くままに、難き韻の文字どもいと多くて」〈賢木
[動ガ下二]
ふさげる」に同じ。
寝殿は―・げ給はず、時々渡り給ふ御住み所にして」〈松風
方塞かたふたがりになるようにする。
「方―・げて」〈帚木

ひさ・ぐ【塞ぐ】

[動ガ四]ふさぐ。閉じる。
「目を―・ぎて我が身をだも見ず」〈海道記

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「塞ぐ」の意味・読み・例文・類語

ふさ・ぐ【塞】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ガ五(四) 〙
    1. 道や川などを、さえぎってとざす。通行や流れを止める。
      1. [初出の実例]「将に北の河の(こみ)を防(ほそ)かむとして茨田堤を築く。是の時に両処の築有て壊れて塞(フサキ)難き」(出典:日本書紀(720)仁徳一一年一〇月(前田本訓))
    2. 押えとどめる。防ぐ。制する。
      1. [初出の実例]「僧食を壅(フサイ)で、大法を障げ礙ぐること」(出典:四分律行事鈔平安初期点(850頃))
    3. 穴などに、すき間なく物をいっぱい詰める。また、ふたをする。
      1. [初出の実例]「虱い若出でば、蓋を作りて塞(フサク)(〈別訓〉ふたく)応し」(出典:小川本願経四分律平安初期点(810頃))
      2. 「今細き管に水を満てて、其一方の口を塞ぎ」(出典:小学読本(1873)〈田中義廉〉四)
    4. 心をある感情でいっぱいにする。
      1. [初出の実例]「憂悔心を塞(フサ)ぐ」(出典:法華義疏長保四年点(1002)五)
    5. 耳・目・口などを手で押えておおう。目や口を閉じる。また、息を止める。
      1. [初出の実例]「鳴り轟く音〈略〉耳をふさぎ、汗しとどになりて」(出典:経信母集(11C中か))
      2. 「内なる斯のたたかひには、眼を瞑(フサ)ぎて」(出典:蓬莱曲(1891)〈北村透谷〉三)
    6. 門や戸などを締める。閉じる。
      1. [初出の実例]「竹のあみ戸をとぢふさぎ、灯かすかにかきたてて」(出典:平家物語(13C前)一)
    7. 場所を占める。
      1. [初出の実例]「丹波国に打越えて、大江山を打塞ぐ」(出典:延慶本平家(1309‐10)三末)
    8. 望みや責任などを果たす。満たす。
      1. [初出の実例]「上は天の心に当ひ、下は民の望を厭(フサイ)たまへ」(出典:日本書紀(720)顕宗元年正月(熱田本訓))
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ガ五(四) 〙 ( 「鬱ぐ」とも書く )
    1. 不愉快になる。気分を害する。腹が立つ。
      1. [初出の実例]「女郎やのしうちにぐっとふさいで」(出典:黄表紙・莫切自根金生木(1785)上)
    2. ゆううつになる。陰気な気持になる。気分が晴れない。
      1. [初出の実例]「朝っぱらからふさいだ事かあって寝て居たはな」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三)
  3. [ 3 ] 〘 自動詞 他ガ下二 〙ふさげる(塞)

塞ぐの補助注記

平安時代には、主として「ふさぐ」「ふさがる」が漢文訓読文に、「ふたぐ」「ふたがる」が和文に用いられた。


ふた・ぐ【塞】

  1. ( 蓋(ふた)をして外とへだてる意 )
  2. [ 1 ] 〘 他動詞 ガ四段活用 〙
    1. ふたをする。おおう。また、通れないようにする。占める。ふさぐ。
      1. [初出の実例]「往還の人面を掩(フタキ)鼻を奄(おほ)ひて」(出典:東大寺諷誦文平安初期点(830頃))
      2. 「にげて入袖をとらへ給へば、おもてをふたぎて候へど」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 韻塞(いんふたぎ)の遊びをする。
      1. [初出の実例]「ふたぎもてゆくままに、難き韻の文字どもいと多くて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)
  3. [ 2 ] 〘 他動詞 ガ下二段活用 〙ふさぐ(塞)[ 一 ]
    1. [初出の実例]「寝殿はふたげ給はず、時々わたり給ふ御すみ所にして」(出典:源氏物語(1001‐14頃)松風)

塞ぐの補助注記

( 1 )平安時代の漢文訓読文ではフサグを使用するのに対して、和文系の文献ではフタグを使用する。
( 2 )「聖語蔵本願経四分律平安初期点」に「蓋蔵」を「フタギヲサム」と訓読する例があるところから、「蓋(フタ)」の派生語かともいわれている。


ひさ・ぐ【塞】

  1. 〘 他動詞 ガ四段活用 〙 (目などを)ふさぐ。閉じる。
    1. [初出の実例]「おおと目うちひさきてよむ陀羅尼も」(出典:能因本枕(10C終)三一九)

塞ぐの補助注記

枕草子」の用例は「ひさく(引裂)」と解する説もある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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