塩化ナトリウム(読み)えんかナトリウム(英語表記)sodium chloride

精選版 日本国語大辞典 「塩化ナトリウム」の意味・読み・例文・類語

えんか‐ナトリウム エンクヮ‥【塩化ナトリウム】

〘名〙 (ナトリウムはNatrium) ナトリウムと塩素の化合物化学式 NaCl ふつうの無水塩は無色の等軸晶系結晶。一般には塩という。天然には海水中に平均二・八パーセント含まれるほか陸地では岩塩として産出する。工業的には天然物を精製して作る。ナトリウム塩の製造原料調味料寒剤などに広く用いられる。

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デジタル大辞泉 「塩化ナトリウム」の意味・読み・例文・類語

えんか‐ナトリウム〔エンクワ‐〕【塩化ナトリウム】

無色の立方晶系結晶。塩辛みをもち、水によく溶ける。天然には岩塩として産出し、海水の主成分で2.8パーセント含まれる。動物体内では生理的に重要な作用をする。塩素化合物ナトリウム化合物の原料。化学式NaCl 食塩

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

塩化ナトリウム
えんかなとりうむ
sodium chloride

ナトリウムと塩素の化合物。通称は食塩。天然には岩塩として、ヨーロッパ、アメリカ、中国などの各地に巨層をなして産出する。ドイツのシュタッスフルトなどが有名であるが、日本ではみいだされていない。岩塩から掘り取ったものは工業用としてそのまま用いられるが、食用にするには、多くの場合、再結晶法による精製が行われる。海水中にも平均2.8%ほど含まれる。日本では塩田法による採取が普通であったのが、近年イオン交換膜を用いる方法が進歩し、1971年(昭和46)以来塩田は姿を消している。

[鳥居泰男]

性質

結晶中ではナトリウムイオンと塩化物イオンが交互に規則的に配列した構造をとっており(塩化ナトリウム型構造)、イオン結晶の構造の典型の一つである。融点以上では揮発性が高く、気体状態ではイオン対のNaCl(Na―Cl 2.51Å)が存在する。化学的に純粋なものは潮解性がないが、粗製品は塩化マグネシウムなどの混在のために潮解性を示す。水によく溶けるが、アルコールには溶けにくい。飽和水溶液からは、0℃以下で無色単斜晶系の二水和物が生じ、零下21.3℃で含氷晶が析出する。これを利用し、塩化ナトリウムと粉砕した氷とを混ぜることによって(25対27)零下21℃の寒剤をつくることができる。

[鳥居泰男]

用途

塩素、塩酸、ナトリウム、水酸化ナトリウムその他ナトリウム塩の製造原料として重要であり、また、陶磁器の釉薬(ゆうやく)、せっけん塩析などに使用される。そのままで調味料とするほか、みそしょうゆの原料、食品貯蔵などに用いられる。医薬品として生理食塩液リンゲル液などにも用いられる。そのほか、大きな単結晶には、赤外線分光器のプリズムといった特殊な用途がある。

[鳥居泰男]

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改訂新版 世界大百科事典 「塩化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

塩化ナトリウム (えんかナトリウム)
sodium chloride

化学式NaCl。食塩とも呼ばれるが,厳密には区別して用いるべきである。食塩は塩化ナトリウムを主成分とする食用の塩であって,純粋化学薬品としてのNaClそのものではない。海水中に平均2.8%存在する。岩塩の形で,ヨーロッパ大陸,アメリカ大陸,中国奥地などに大鉱床を形成して産出する。無水塩は無色で,結晶は立方晶系。よく舌になじむ辛味を有する。塩化ナトリウム型構造。融点800.4℃,沸点1413℃。比重2.164(20℃)。屈折率1.5443。純粋な塩化ナトリウムは潮解性を示さない(わずかに吸湿する)が,未精製のものはマグネシウム塩やカルシウム塩を含むため潮解しやすい。いわゆる焼き塩は加熱によってマグネシウム塩をMgO等の形に変えたもので,潮解性はまったくない。水100gに対する溶解度は35.6g(0℃),35.8g(20℃),39.1g(100℃)で,温度による溶解度差がほとんどないため,熱飽和水溶液からの再結晶精製は行えない。0℃以下で単斜晶系2水和物を析出,-21.3℃で含氷晶をつくる。この性質は寒剤をつくるのに利用される。エチルアルコールに難溶,グリセリンには溶けるが,濃塩酸には溶けない。

 岩塩は,工業用にはそのままの形で使用される。食用には通常,再結晶精製して用いる。海水を天日,風力,凍結などにより濃縮したのち,天日,火力によって蒸発,析出させる。最近はイオン交換膜を用いる方法で,海水から高純度塩化ナトリウムを得る方法が広く用いられる。岩塩や海水から直接析出させた,いわゆる食塩は,水酸化ナトリウム,石灰乳などによりMg2⁺,Ca2⁺,SO42⁻などの不純物を沈殿させて除いたのち,塩化水素ガスを通じてNaClとして析出させ精製する。

 塩素,塩酸,水酸化ナトリウム,種々のナトリウム塩の製造原料,食用,調味料,食料塩蔵用に重要である。そのほか,陶磁器のうわぐすり(釉),セッケン等の塩析用,分析試薬,寒剤調製,赤外分光器のプリズム(大きな単結晶),医薬品(生理食塩液,リンゲル液の調製)等に広範囲に利用される。
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化学辞典 第2版 「塩化ナトリウム」の解説

塩化ナトリウム
エンカナトリウム
sodium chloride

NaCl(58.47).天然には,岩塩として産出する.海水中に平均2.8% 含まれる.動物体内で重要なはたらきをする.岩塩はそのまま掘り取り,また海水を濃縮して析出させる.精製するには,水溶液に塩化バリウム,石灰乳,炭酸アンモニウムなどを加え,Mg2+,Ca2+,SO42- などを沈殿させて分離したのち,塩化水素ガスを通じて析出させるときわめて純粋なものが得られる.無水物は無色の等軸晶系六面体結晶で,塩化ナトリウム型構造をもつ代表的なイオン結晶.格子定数a = 0.564 nm.Na-Cl0.282 nm.赤外線をよく透過する.融点801 ℃,沸点1413 ℃.密度2.17 g cm-3.融点以上ではげしい揮発性を示す.気体分子は重合せず0.251±0.003 nm.純品には潮解性がない.水100 g に対する溶解度は35.7 g(0 ℃),39.1 g(100 ℃).エタノールに難溶,グリセリンに可溶,濃塩酸に不溶.飽和水溶液は0 ℃ 以下で無色の単斜晶系の二水和物を生じ,-21.3 ℃ で含水晶をつくり,寒剤に利用される.ナトリウム塩や塩素化合物の製造,せっけんの塩析などの工業用途のほか,食用,食品貯蔵,赤外分光器のプリズム,医薬品などに用いられる.[CAS 7647-14-5][別用語参照]塩化ナトリウム単結晶

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百科事典マイペディア 「塩化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

塩化ナトリウム【えんかナトリウム】

化学式はNaCl。食塩。融点801℃,沸点1485℃。等軸晶系の無色の結晶。温度による溶解度の差が小さく,100gの水には0℃で35.6g,100℃で39.1g溶ける。天然には岩塩として産し,海水中にも約2.8%含まれる。→(しお)
→関連項目生理的食塩水ダイナマイト

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

塩化ナトリウム
えんかナトリウム
sodium chloride

化学式 NaCl 。無水塩は無色。立方晶系結晶,塩化ナトリウム型構造をもつ。融点 800.4℃,沸点 1413℃,比重 2.18。水 100gに対して,0℃で 35.6g,20℃で 35.8g,100℃で 39.1g溶解する。海水中には平均 2.8%程度含まれている。アルコールに難溶。純粋なものは潮解性がないが,Mg2+ や Ca2+ を微量含むものは強い潮解性をもつ。化学工業原料として重要である。 (→ )

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栄養・生化学辞典 「塩化ナトリウム」の解説

塩化ナトリウム

 食塩の化学物質名.

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世界大百科事典(旧版)内の塩化ナトリウムの言及

【化学結合】より

…分子の中でそれを構成する原子を互いに結びつけ,分子の形を維持しているのが化学結合である。希ガス元素(ヘリウムHe,ネオンNe,アルゴンArなど)の原子を除くと,一般の元素の原子は常温・常圧では単独で存在するよりも,他の同種または異種の原子いくつかとかなり強い力で引き合って集合して,分子を形成したほうがエネルギーが低くなり安定である。このように分子の中で強い力を及ぼし合っている原子の間には化学結合があるという。…

【塩】より

…塩は食塩とも呼ばれるが,化学的には塩化ナトリウムNaClと呼ばれ,ナトリウムイオンと塩素イオンとが規則正しく配列した無色透明の正六面体の結晶で,へき開性もある。製法により結晶の外形も不定形になり,色相も種々の色を呈する。…

※「塩化ナトリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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