手すき和紙において〈ちり〉という場合,ごみや汚物などの意味ではなく,コウゾなどの樹皮の黒皮や繊維の太い結束などをさす。たとえば,製紙工程でちり取り(除塵(じよじん))作業とよばれるものは,黒皮や結束を取り除く作業をさす。したがって本来のちり紙は,上等な白い紙をすくために取り除いたコウゾ皮の甘皮部分や表皮,黒皮などですいたものをいい,十分に砕けきれずに残ったコウゾ皮のかすや黒皮が紙面に現れている。また毎日の紙すき作業の終りの紙料液には,すく際に除いたちりが多量に含まれており,この残液ですいた紙もちり紙となる。こうした自然なちり紙は,昔ならば日常生活用の鼻紙,袋紙,落し紙,下ばり紙などに使われたが,たいへんに強靱で,混入した黒皮などの変化がおもしろく,素朴な雅味もあって愛好者に珍重され,茶室などの壁紙や襖(ふすま)紙,本の表紙などの装丁用紙,書画用紙などにも使われた。現存のものとしては,小川和紙(埼玉県)の黒四つ塵,黒谷紙(京都府)のねなし紙などがある。通常の紙料に黒皮を混入して,作為的にすくちり紙(ちり入り紙)もあり,民芸味にあふれた装飾紙,出版用紙,畳(たとう)紙,さらにカード用紙として海外にも盛んに輸出されている。装飾的な意図がさらに進められ,そばがらなどの植物や華やかな金銀砂子などを混入することも行われている。なお,一般的には古紙を原料とした,機械ずきのちり紙が普及しており,懐中紙,落し紙などに使われる。機械ずきのちり紙は主として丸網抄紙機が使われ,上質の古紙を原料として十分に脱色した白ちり紙と,着色した古紙を原料として漂白が十分でない黒ちり紙の区別がある。近年はトイレットペーパー用とされることが多く,これは古紙に多少化学パルプを配合して,柔軟性,吸水性,強度をもたせたちり紙を巻いたものである。婦人用懐中紙として用いられる京花紙は化学パルプを原料とする薄葉紙である。
執筆者:柳橋 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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