定温動物の対語。体温が環境の温度とともに変化することからこの名がついた。無脊椎動物全部と,脊椎動物の魚類,両生類,爬虫類がこれにあたる。われわれが触れて冷たく感じるところから俗に冷血動物cold-blooded animalともいわれるが,場合によっては体温がわれわれより高いこともあるので,冷血というのは正確な表現ではない。
変温動物は一般に,物質代謝による発熱量が少ないうえに,羽毛や毛といった熱を保持するような機構を備えていないので,体内で生じた熱はどんどん体外に出ていく。一般に陸生動物よりも水生動物のほうが,また体が小さくて不活発な動物のほうが体温は外温により近い。水生動物でも,大型で活発に運動しているものの体温は水温より高い。たとえばマグロやカツオなどの回遊魚では,中心部筋肉の温度が外界に接している体表の温度より10℃以上も高いことがある。また,ヘビがとぐろを巻いて抱卵しているときには,積極的な筋肉運動による発熱で,中心部はつねに高温に保たれている。変温動物には生理的な体温調節機構は発達していないが,昆虫や爬虫類などでは,日当りに出たり,日陰に入ったりする行動によって,ある程度体温を調節している例が知られている。また昆虫では羽をふるわせることによって体温を上げるもの(チョウやミツバチなど)がある。
変温動物では,外温が極端に低くなると,体温もそれにともなって下がるため,物質代謝速度がひどくにぶり,正常な生活活動ができなくなって休眠状態になる。これが爬虫類,両生類,節足動物などにみられる冬眠である。一年中高温の続く熱帯地方は,変温動物にとっては好適な生息地であり,分布する種類も個体数も多いが,熱帯でも厳しい乾季のある地方では,乾燥にたいする適応として夏眠の現象がみられる。
執筆者:佃 弘子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
外界の温度によって体温が変化する動物のことで、恒温動物に対する語。俗に冷血動物ともいう。哺乳(ほにゅう)類と鳥類を除いたすべての動物(無脊椎(むせきつい)動物・魚類・両生類・爬虫(はちゅう)類)がこれに属する。小形の水生動物の体温は水温にほぼ等しいが、大形の動物の体温は外温のままに変化してつねに外温と同じになるとは限らない。魚類は周囲の水温より数度高い体温をもつことが多く、カエルのように皮膚の湿っている動物は、安静状態での体温は蒸発熱を奪われるために気温よりやや低いといわれる。ミツバチは外気温が低いときに、集団となって熱の発散を防ぐとともに、筋肉運動によって発熱し外気よりも数度近く高い体温を維持している。また、トカゲ類は体温が下がると皮膚にある黒色素胞を拡散し、放射熱を吸収して体温を上げ、逆に体温が上がりすぎると呼吸数を増して放熱し、黒色素胞を凝集して吸熱を避けている。しかし、変温動物の体温調節は不完全であるから、外温がある程度以下になると調節の限界を超え、体内の物質代謝が低下して活動力を失う。季節的変化の著しい地方では、変温動物は寒期に冬眠したり、卵や幼虫の状態で越冬したりする。一般に変温動物にとっては気温の高い地方がすみやすい。
[川島誠一郎]
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…個体レベルの温度適応現象は温度の地理的な差あるいは季節的変動によってもおこりうるが(気候順化),異なった温度である期間飼育することによってもつくりだすことができる(温度順応)。
[変温動物の温度適応]
変温動物では体温は外界の温度変化にともなって上下するので,代謝や活動性は外温の影響を直接に受けるが,その受け方は種によって異なり,それぞれの種は生息環境の温度と対応した固有の温度特性をもっている。たとえばグッピーなど熱帯魚の多くは水温25℃前後が最適で,15℃以下では生命を維持できない。…
…このような動物を定(恒)温動物という。鳥類,哺乳類以外の動物はすべて変温動物であって,体温は外温に従って変動する。 変温動物のうち,不活発な動物や,小型の水生動物の体温は外温とほぼ等しい。…
※「変温動物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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