変温動物(読み)へんおんどうぶつ(英語表記)poikilotherm
poikilothermic animal

精選版 日本国語大辞典 「変温動物」の意味・読み・例文・類語

へんおん‐どうぶつ ヘンヲン‥【変温動物】

〘名〙 環境の温度変化に伴って体温が変化する動物。無脊椎(せきつい)動物、脊椎動物魚類両生類爬虫類など。低温域では外温より幾分高く、高温域では幾分低く保たれる。冷血動物

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デジタル大辞泉 「変温動物」の意味・読み・例文・類語

へんおん‐どうぶつ〔ヘンヲン‐〕【変温動物】

体温調節機能がなく、外界の温度に応じて体温が変化する動物。哺乳類鳥類を除くすべての動物が含まれる。冷血動物。→恒温動物
[類語]恒温動物

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改訂新版 世界大百科事典 「変温動物」の意味・わかりやすい解説

変温動物 (へんおんどうぶつ)
poikilotherm
poikilothermic animal

定温動物の対語。体温が環境の温度とともに変化することからこの名がついた。無脊椎動物全部と,脊椎動物の魚類,両生類,爬虫類がこれにあたる。われわれが触れて冷たく感じるところから俗に冷血動物cold-blooded animalともいわれるが,場合によっては体温がわれわれより高いこともあるので,冷血というのは正確な表現ではない。

 変温動物は一般に,物質代謝による発熱量が少ないうえに,羽毛や毛といった熱を保持するような機構を備えていないので,体内で生じた熱はどんどん体外に出ていく。一般に陸生動物よりも水生動物のほうが,また体が小さくて不活発な動物のほうが体温は外温により近い。水生動物でも,大型で活発に運動しているものの体温は水温より高い。たとえばマグロカツオなどの回遊魚では,中心部筋肉の温度が外界に接している体表の温度より10℃以上も高いことがある。また,ヘビがとぐろを巻いて抱卵しているときには,積極的な筋肉運動による発熱で,中心部はつねに高温に保たれている。変温動物には生理的な体温調節機構は発達していないが,昆虫や爬虫類などでは,日当りに出たり,日陰に入ったりする行動によって,ある程度体温を調節している例が知られている。また昆虫では羽をふるわせることによって体温を上げるもの(チョウミツバチなど)がある。

 変温動物では,外温が極端に低くなると,体温もそれにともなって下がるため,物質代謝速度がひどくにぶり,正常な生活活動ができなくなって休眠状態になる。これが爬虫類,両生類,節足動物などにみられる冬眠である。一年中高温の続く熱帯地方は,変温動物にとっては好適な生息地であり,分布する種類も個体数も多いが,熱帯でも厳しい乾季のある地方では,乾燥にたいする適応として夏眠現象がみられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「変温動物」の意味・わかりやすい解説

変温動物
へんおんどうぶつ

外界の温度によって体温が変化する動物のことで、恒温動物に対する語。俗に冷血動物ともいう。哺乳(ほにゅう)類と鳥類を除いたすべての動物(無脊椎(むせきつい)動物・魚類・両生類・爬虫(はちゅう)類)がこれに属する。小形の水生動物の体温は水温にほぼ等しいが、大形の動物の体温は外温のままに変化してつねに外温と同じになるとは限らない。魚類は周囲の水温より数度高い体温をもつことが多く、カエルのように皮膚の湿っている動物は、安静状態での体温は蒸発熱を奪われるために気温よりやや低いといわれる。ミツバチは外気温が低いときに、集団となって熱の発散を防ぐとともに、筋肉運動によって発熱し外気よりも数度近く高い体温を維持している。また、トカゲ類は体温が下がると皮膚にある黒色素胞を拡散し、放射熱を吸収して体温を上げ、逆に体温が上がりすぎると呼吸数を増して放熱し、黒色素胞を凝集して吸熱を避けている。しかし、変温動物の体温調節は不完全であるから、外温がある程度以下になると調節の限界を超え、体内の物質代謝が低下して活動力を失う。季節的変化の著しい地方では、変温動物は寒期に冬眠したり、卵や幼虫の状態で越冬したりする。一般に変温動物にとっては気温の高い地方がすみやすい。

[川島誠一郎]

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百科事典マイペディア 「変温動物」の意味・わかりやすい解説

変温動物【へんおんどうぶつ】

冷血動物とも。体温調節能力のない動物,すなわち爬虫(はちゅう)類以下のすべての動物をいう。その体温は環境温度や日射に左右され内部から体温を上げるしくみをもたないが,飛翔(ひしょう)昆虫などでは筋活動によるかなりの体温上昇も測られ,適温を求めての移動行動(走性)や日光浴などによる体温調節をするものもいる。→定温動物
→関連項目体温

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「変温動物」の意味・わかりやすい解説

変温動物
へんおんどうぶつ
poikilotherm; poikilothermal animal

通称,冷血動物 cold-blooded animalともいう。外界の温度変化によって体温が変る,無脊椎動物全般と脊椎動物の魚類,両生類,爬虫類の総称。体内の物質代謝が外界の温度によって影響を受けるので,低温になると種々の活動が不可能となり,冬眠または休眠するものが多い。したがって,分布区域が限られ,熱帯地方での生活に適合しており,そこでは種類数,個体数とも特に多い。現生の爬虫類は変温動物であるが,絶滅した恐竜は定温的だったのではないかとの見解がある。

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栄養・生化学辞典 「変温動物」の解説

変温動物

 環境の温度によって体温が変化する動物で,体温の調節をしない.無脊椎動物と爬虫類以下の脊椎動物.

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世界大百科事典(旧版)内の変温動物の言及

【温度適応】より

…個体レベルの温度適応現象は温度の地理的な差あるいは季節的変動によってもおこりうるが(気候順化),異なった温度である期間飼育することによってもつくりだすことができる(温度順応)。
[変温動物の温度適応]
 変温動物では体温は外界の温度変化にともなって上下するので,代謝や活動性は外温の影響を直接に受けるが,その受け方は種によって異なり,それぞれの種は生息環境の温度と対応した固有の温度特性をもっている。たとえばグッピーなど熱帯魚の多くは水温25℃前後が最適で,15℃以下では生命を維持できない。…

【体温】より

…このような動物を定(恒)温動物という。鳥類,哺乳類以外の動物はすべて変温動物であって,体温は外温に従って変動する。 変温動物のうち,不活発な動物や,小型の水生動物の体温は外温とほぼ等しい。…

※「変温動物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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