シクロ珪(けい)酸塩鉱物の一つ。六角短柱状結晶ないし微細な粒として、流紋岩ないしデイサイトの空隙(くうげき)あるいは石基中に産する。鹿児島県垂水(たるみず)市咲花平(さっかびら)で産する本鉱は、最初菫青石(きんせいせき)と考えられていたが、1953年(昭和28)都城秋穂(みやしろあきほ)(1920―2008)によって新鉱物として報告された。以来、鹿児島県下の他産地からも、イタリアやアメリカなどからも発見された。ほかに、グラニュライト相に属する塩基性変成岩の合分として産したり、玄武岩や安山岩中の捕獲岩中にも産する。なお第一鉄よりマグネシウムの多いものは、苦土大隅石osumilite‐(Mg)という別種扱いになる。名称は原産地(咲花平は大隅半島にある)に由来する。
[松原 聰]
化学組成は(K,Na,Ca)(Mg,Fe)2(Al,Fe)3(Si,Al)12O30・H2O。六方晶系,暗青色ないし黒色の柱状または板状結晶をなす鉱物。比重2.64,へき開はない。火山岩の孔隙や石基に出現し,また熱変成を受けた火山放出物や先カンブリア時代の高変成相であるグラニュライトからも発見されている。この鉱物は高温低圧鉱物であるが,相平衡実験によると,圧力5~9kbar(深さ20~32km)までは存在しうる。鹿児島県垂水市咲花平の流紋岩からキン(菫)青石として報告されていたものが,1956年になって,新鉱物であることがわかり,大隅国にちなんで命名された。
執筆者:青木 謙一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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