中国における天上の最高神。殷代の甲骨文資料に帝,あるいは上帝の語が見え,雨や農作物の収穫を支配し,都邑の建設に許可を与えたりしている。しかしすでに〈隠れた神〉であったらしく,帝の力は〈帝の使(者)〉や〈帝の臣〉を介して発現される。上帝を直接に祭ることはなかったとされる。殷代の帝には人格神としての性格は弱かったのであろう。周は帝の代りに天の語を用いた。周王朝の存在を理由づけるため,天命,天子,革命などの観念を天帝と関連づけて発展させ,それに倫理観念を注入し強調したことが,後代の中国思想の重要な基盤となった。天帝を祭ることが天子の権利であり義務だとする考えが,封建王朝時代を通じて強固に保持されていたことは,北京の天壇にも見られるごとくである。天帝は元来は唯一神であったであろうが,その力を代行する職能神が実際的な力をふるったことや,春秋戦国時代には各国がそれぞれに天帝を祭ろうとしたことから,帝は必ずしも唯一のものではなくなる。漢代になると秦の畤(し)の祭祀を引きついで帝は五帝(五方の帝--青帝,赤帝,黄帝,白帝,黒帝)に整理されており,五帝の上に昊天上帝(こうてんじようてい),太一(たいいつ),天皇上帝(てんこうじようてい)などと呼ばれる最高神が位置する天上のヒエラルヒーが完成する。
→皇帝 →天
執筆者:小南 一郎
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…古代インド神話における代表的な神であるインドラが仏教にとり入れられたもの。サンスクリットでŚakra‐Devānam Indraといい,釈迦提婆因陀羅,釈迦提婆,釈迦因陀羅,釈提桓因などと表し,諸天中の天帝という意味で天帝釈,天主帝釈,天帝などという。釈迦が釈迦族の王子ゴータマ・シッダールタとして生まれる以前の数多くの一生においても,たびたびその修行を守り,釈迦が仏陀となって後は説法の場に登場するなど釈迦との関係が深く,梵天とともに仏法守護の善神とされている。…
※「天帝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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