改訂新版 世界大百科事典 「小イギリス主義」の意味・わかりやすい解説
小イギリス主義 (しょうイギリスしゅぎ)
Little Englandism
帝国主義的領土拡大に反対するイギリス国内の政治的立場をさす。帝国維持費の負担への嫌悪などからする帝国拡大反対論は,大英帝国の全史を通じて存在した。たとえば,中・小地主を主体とした18世紀初頭のトーリー派は重商主義戦争に強く反対したし,〈小イギリス主義〉という言葉そのものは,1890年代初頭,時の外相ローズベリーによって初めて使われたものである。しかし,この考え方が反対派の少数意見ではなく,むしろ多数派=主流派の見解となったのは19世紀前半から中葉にかけて,イギリスのみが工業化され,圧倒的な生産力を誇った時代である。この時代のイギリスでは,政治的=領土的な支配を避けて行政経費を節約しながら,経済的には支配を貫徹するという〈自由貿易帝国主義〉が主流となったからである。〈非公式帝国主義〉とも呼ばれるこの政策のもとで,19世紀前半,南アメリカの大部分の国が事実上イギリスの経済的支配下に入った。
執筆者:川北 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報