第1次大戦後激化した小作争議に対処するため1924年7月22日公布,12月1日施行された法律。当初は,小作争議がまだ激化していない諸県には適用されなかったが,29年以降,沖縄県をのぞく全府県で施行された。小作争議がおきた場合,当事者の申立てにより裁判所が調停をおこなう制度であり,調停が成立しさらに裁判所が認可した場合には裁判上の和解と同等の効力をもち,調停条項の不履行には強制執行がおこなわれることとなった。この法律に従い,各府県には小作官がおかれ,争議の和解にあたった。小作官の法外調停を含めれば発生争議件数の半分以上が本法で調停されたが,調停法は小作法・小作組合法の流産のうえに成立した単なる手続法であり,地主的土地所有の優位を保証した明治民法を前提としていたため,小作農に不利に作用することが多かった。法に定められた調停委員の構成にも,地主や自作農など土地所有者が多かった。だが,小作農の力が強い地域では,調停を通じて地主側からかなりの譲歩をひきだすことも少なくなかった。当初は地主の利用が多かったが,のちになると小作側でも調停を積極的に活用して小作条件の改善をめざす傾向がみられた。小作官の中には,地主にも譲歩を迫り争議解決をめざす例が少なくなかったが,本法には手続法としての限界があり,調停結果は多くの場合,地主・小作の力関係に規定されざるをえなかった。1951年に廃止され,民事調停の中の農事調停の制度となった。
執筆者:大門 正克
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小作争議当事者間の調停を目的とし,裁判所・調停委員会などによる調停方法を定めた法律。小作制度調査会の答申により,1924年(大正13)公布。小作争議が少ない一部の地域には当初施行されなかった。本法によって各府県に地域の地主・小作関係の実情などに通じた小作官がおかれ,実際の調停工作にあたるほか,本法による調停以前の妥協形成(法外調停)がはかられた。51年(昭和26)の民事調停法施行により廃止。
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…しかしその法案要綱や草案は地主層の反対により,ついに小作権法認を含む小作法は成立しなかった。こうした改良主義的方向がつぶされると,逆に小作争議対策(抑制)法として小作調停法が制定された(1924)。これにより調停に農民組合が介入することが困難となり,地主側の争議対策に大きな力を発揮した。…
…なお1919年に設置された臨時法制審議会が,法体制の再編成に重要な役割を果たした。さらに借地借家調停法(1922公布),小作調停法(1924公布),労働争議調停法(1926公布)などの調停法が,国家の後見的介入によって,社会関係の動揺に伴う紛争の解決を図った。他方,治安立法と社会政策立法は,25年の治安維持法や29年の救護法(施行は1932)などによって強化された。…
※「小作調停法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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