屋形・館(読み)やかた

精選版 日本国語大辞典 「屋形・館」の意味・読み・例文・類語

や‐かた【屋形・館】

〘名〙
① 舟の上に設けた屋根のある家の形をしたもの。ふなやかた。
万葉(8C後)一六・三八八八「奥つ国領(うしは)く君が柒屋形(ぬりやかた)黄柒(にぬり)屋形神が門渡る」
牛車や輿車(こしぐるま)などの上につくった家の形の覆い。
※延喜式(927)一七「腰車一具。屋形。〈長六尺。広五尺〉〈略〉牛車一具。屋形。〈長八尺。高三尺四寸。広三尺二寸〉」
※枕(10C終)四五「月のあかきに、屋かたなき車のあひたる」
かりそめに構えた家。また、かりの宿所。かりや。寓居
古今(905‐914)大歌所御歌・一〇七二「水ぐきの岡のやかたにいもとあれどねてのあさけの霜の降りはも〈よみ人しらず〉」
④ 貴人や大名豪族、有力武士などの邸宅。また、宿所。たち。との。
※源平盛衰記(14C前)二二「弘経屋形(ヤカタ)に帰って云ひけるは」
⑤ 貴人を敬っていう語。また特に、中世、屋形号を許された大名の称。
蔗軒日録‐文明一八年(1486)一一月一〇日「来十四日永興忌、同誉康公状至云、屋形要予之赴忌斎拈香、以予之拒辞停止」
※読本・昔話稲妻表紙(1806)五「某おん館(ヤカタ) 義政公をさしていふ の御気色を損じ」
俳諧・伊達衣(1699)上「袖口くけぬ袷かたびら〈横几〉 小船にて楼船(ヤカタ)尋る花の暮〈桃隣〉」
芸娼妓の住んでいる家または置屋。〔洒落本・当世嘘之川(1804)〕
⑧ 家の形状を図案として表わした紋所または模様。屋形紋。
随筆・遠碧軒記(1675)上「伊勢内宮の紋は屋形なり」
⑨ 「やかたちりめん(屋形縮緬)」の略。〔万金産業袋(1732)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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