年越し(読み)トシコシ

デジタル大辞泉 「年越し」の意味・読み・例文・類語

とし‐こし【年越し】

[名](スル)
旧年から新年に移ること。また、その変わりめの、大晦日おおみそかの夜。「旅行先で年越しする」 冬》
節分の夜。また、その夜に行う行事
[類語]越年越冬年を越す年が明ける

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改訂新版 世界大百科事典 「年越し」の意味・わかりやすい解説

年越し (としこし)

オオトシ(大年),トシノヨ(年の夜)などともいう。1年の境目大晦日の夜のことで,年の改まりに際しての年神祭や年重ねに関する行事がある。古くは1日の境は夕暮れどきにあったといわれるが,年越しの行事も多くは大晦日の夕方から始まる。すでにすす払いも終わり,しめ縄をも引き回した屋内年神を迎え,年棚に神酒,餅,魚,野菜などを供えて,その前で家族揃って正式の食事をする所がかつては多かった。元日朝にはその神饌を下げて家族一同でいただくことによって年神の霊威各人の身につき,新しい年を一つ加えることができると考えられていたのである。大晦日夜の食膳をオセチ,トシトリなどといってハレの食事と考えているのは全国的である。年越しそばもその一つであるが,サケやブリなど特別な正月魚(年取り魚)を用意することに決めている所も少なくない。また大晦日の夜は眠らずに過ごすべきとされ,もし禁を破れば白髪になるとかしわがふえるという伝承があるのは,この夜が,訪れた年神に侍座すべきときと考えられていたからである。これら各家の作法とは異なって,ムラ人が神社に年籠りして夜を明かす例もあるが,すでに多くは元旦未明に参詣するように変わってしまっている。年越しには火を欠かせないとする考えもあり,境内で火をたいて新年を迎える神社は多い。いろりのあるころには各家庭においても大火を燃やし続ける所が少なくなかったが,このまき節榾(せちほだ),世継榾(よつぎほだ)という所があるのは,神聖な火が絶えることなく継承されることを願ったからであろう。大晦日だけではなく,1月6日を六日年越し,14日を十四日年越しといい,節分をも年越しというのは,これらの夜から次の七日正月,十五日正月,立春にかけてが,いずれも神の来臨を仰ぐ年改まりのときと観念されていたからと思われる。これらとは別に,牛馬や道具類にもしめ飾りや供え餅をして道具の年取りをさせ,新たな力を賦与させようとする例もある。
除夜
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「年越し」の意味・わかりやすい解説

年越し
としこし

年の境。また新年前夜やそのときの行事。暦法の改変によって,12月末日,小正月の前夜,節分つまり立春の前夜などと,年の境の期日は移動している。この日は,年縄,年棚,鏡餅などの正月飾りをすませ,門松も立て終り,歳神を迎える準備を整えて鎮守に行って年籠りをするとか,家々ではいろりに大火を焚いて起き明かすなどの行事を行なった。寺では除夜の鐘を打つ。正月はもとは盆と並ぶ祖霊祭の機会であったが,めでたい祭りと考えるようになったため,暮れのうちに魂祭をすませるところが多い。神社では大祓 (おおはらえ) をする。昔は太陽が沈んでから次に沈むまでを1日としたので,年越しの夜はすでに正月に入っており,そのため夕飯がすんでからあらためて正式食事の膳につくことがある。これが年越膳で,今日では形ばかりの尾頭つきの魚を食べたりする。また,江戸で流行した年越そばを食べる習慣が根づいて一般化している。なお,単にごちそうを食べる日を何々年越しと呼ぶこともあり,七草の前日を六日年越しなどと呼ぶのはその一例である。

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百科事典マイペディア 「年越し」の意味・わかりやすい解説

年越し【としこし】

新年を迎える夜の行事。普通は大晦日(おおみそか)の夜であるが,立春・七日正月・十五日正月の前夜をいうこともある。年神を迎えるために物忌(ものいみ)をし,終夜起きているのが古い形であった。〈としとり〉と称して特定の食事をする例があり,年越そばもその一つである。

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世界大百科事典(旧版)内の年越しの言及

【正月】より

…暦の上での1年の切れめを祝う新年の行事。新年を迎えることを,年取り,年越しともいう。大晦日から元日にかけての行事に主体があるが,ほぼ1月いっぱい続く。…

【除夜】より

…大晦日の夜。年の夜,大年,年越しなどともいう。神社では大祓(おおはらえ)といって人形(ひとがた)に託して罪穢を流し,寺院では百八煩悩の鐘をつき鳴らす。…

【六日年越し】より

…1月6日夕方から7日にかけてをいう。〈神年越し〉〈馬の年越し〉などともいう所もある。1月7日は元日正月の終りだとも十五日正月の始まりだとも考えられるが,また,江戸時代には五節供の一つ(人日(じんじつ))として重要な節日と考えられており,そのためか七日正月とも呼ばれている。…

※「年越し」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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