引取る(読み)ヒキトル

デジタル大辞泉 「引取る」の意味・読み・例文・類語

ひき‐と・る【引(き)取る】

[動ラ五(四)]
その場を立ち去る。退く。「奥の間へ―・る」「どうぞお―・りください」

㋐手もとに受け取る。引き受けて手もとに置く。「売れ残りを―・る」
㋑引き受けて世話をする。「遺児を―・る」
話のあとを受けて、言葉を続ける。「発言者の言葉を―・って司会者説明を加える」
(「息を引き取る」の形で)息が絶える。死ぬ。「病院で息を―・る」
引っ張って奪い取る。
「君にかく―・られぬる帯なればかくて絶えぬる中とかこたむ」〈紅葉賀
[類語]下がる去る遠ざかる遠のく離れる立ち去る引き払う引き上げる辞去する退去する退散するせる退退立ち退く引き下がる引っ込むあとにする

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「引取る」の意味・読み・例文・類語

ひき‐と・る【引取】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 引いて手もとへ移す。自分の手もとへ引き寄せて取る。受け取る。
      1. [初出の実例]「こだになど少しひきとらせ給ひて、宮へとおぼしくて、もたせ給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)宿木)
    2. 無理に自分のものにする。奪い取る。盗み去る。
      1. [初出の実例]「神渟名川耳尊(かむぬなかはみみのみこと)、其(そ)の兄(いろね)所持(もた)弓矢掣取(ヒキトル)」(出典:日本書紀(720)綏靖即位前(北野本訓))
    3. 引き受けて手もとに置く。自分のところへ預かって世話をする。
      1. [初出の実例]「一人の姪、近き比より手前へ引とり養育せられしかば」(出典:浮世草子・世間娘容気(1717)二)
    4. 話などのあとを受けつぐ。
      1. [初出の実例]「とかふの詞も出でざれば、長右衛門引とりて」(出典:談義本・根無草(1763‐69)後)
    5. ( 多く「息を引き取る」の形で ) 死ぬ。絶息する。ひききる。
      1. [初出の実例]「さらばと斗り夕潮の、引とる息や波の泡、終にはかなくなりにけり」(出典:浄瑠璃・大職冠(1711頃)三)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
    1. その場から退き去る。また、もといたところにもどる。
      1. [初出の実例]「萩へ引取(ヒキトリ)慎み罷在べき処」(出典:近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉七)
      2. 「挨拶が一通り済んだら、校長が今日はもう引き取ってもいい〈略〉と云った」(出典:坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉二)
    2. 軍勢がひき退く。退却する。〔日葡辞書(1603‐04)〕

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