離れる(読み)ハナレル

デジタル大辞泉 「離れる」の意味・読み・例文・類語

はな・れる【離れる】

[動ラ下一][文]はな・る[ラ下二]
くっついているものの一方が動いて別々になる。「足が地を―・れる」「雀が電線から―・れる」
あるものとの間に隔たりができる。その位置から遠ざかる。「一メートル―・れて立つ」「少し―・れて絵を鑑賞する」「持ち場を―・れる」「故郷を―・れる」

㋐二つのものが隔たって存在する。間にかなりの距離がある。「家と学校とはだいぶ―・れている」「人里―・れた一軒家
㋑二つの数値地位などに隔たりがある。「年の―・れた弟」「トップと大きく―・れる」
㋒夫婦・親子など、一つであるものが別々になる。別れる。「家族が―・れて暮らす」

㋐関係がなくなる。縁が切れる。「俗世を―・れる」「損得を―・れて面倒をみる」「話が本筋から―・れる」「―・れられない仲」
㋑信頼や情愛を失う。「人心が―・れる」「恋人から気持ちが―・れる」
㋒ある事柄に対する思いがなくなる。「仕事のことが頭から―・れない」
職務や仕事をやめる。「戦列を―・れる」「会長職を―・れる」
戸などが開いた状態になる。あく。
「格子を探り給へば、―・れたる所もありけり」〈狭衣・二〉
除かれる。除外する。
「琴の音を―・れては、何事をか物をととのへ知るしるべとはせむ」〈・若菜下〉
[類語](1はずれる分かれる分離する離脱する割れる分裂分解解体独立外す分ける分割四分五裂遊離隔たる遠ざかる遠のく離隔隔絶乖離かいり切り離す断ち切るちぎれる張り裂ける/(2隔たる遠ざかる遠のく離隔する隔絶する遊離する乖離かいりする去る出るける外すあとにする立ち去る引き払う引き上げる辞去する退去する退散するせる退下がる退立ち退く引き下がる引き取る引っ込む/(3㋒)別れる離別する生き別れる死に別れる生別死別永別永の別れ永訣別離/(4離反する離背する絶縁する決別するおさらばするたもとを分かつ離縁義絶勘当離反離背決別おさらば絶交断交決裂物別れ離間乖離手を切る生木を裂く仲を裂く/(5退しりぞ退める去る抜ける離脱する脱退する引退する辞任する離任する手を引く身を退く骸骨を乞う退会退団退部脱会脱党離党杯を返す

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精選版 日本国語大辞典 「離れる」の意味・読み・例文・類語

はな・れる【離・放】

  1. 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]はな・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙
  2. 他のものにくっついていた状態のものが別れた状態になる。移動して、間に間隔を置くようになる。
    1. [初出の実例]「大和へに 西風吹き上げて 雲婆那礼(バナレ) 退(そ)き居りとも 我忘れめや」(出典古事記(712)下・歌謡)
    2. 「帰りゆく人の心を思ふにもはなれがたきは都なりけり」(出典:山家集(12C後)下)
  3. 人が、ある人、ある思い、ある地位、ある立場などから遠ざかる。関係を絶つ。
    1. (イ) ある人のもとから遠ざかる。別れてゆく。
      1. [初出の実例]「うちひさす 宮へ上ると たらちしや 母が手波奈例(ハナレ) 常知らぬ 国の奥かを 百重山 越えて過ぎゆき」(出典:万葉集(8C後)五・八八六)
      2. 「吾等が、弟妹にはなれて、始めて学校に入るは」(出典:尋常小学読本(1887)〈文部省〉四)
    2. (ロ) 夫婦・親子などの関係にある者が別れる。離縁して一人になる。死別して生き残る。
      1. [初出の実例]「これを聞て、はなれ給ひし元の上(うへ)は腹を切りて笑ひ給ふ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「去御方の奥様なるが、御つれあいに離れさせ給ひて」(出典:浮世草子・好色二代男(1684)二)
    3. (ハ) 信頼・情愛などの関係が絶ち切れる。
      1. [初出の実例]「其の卓淳は、上下携(ハナレ)弐(ふた心)あり」(出典:日本書紀(720)欽明二年四月(寛文版訓))
      2. 「丹次郎もまた、米八とははなれぬ契りと推量(おしはかれ)ば」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)後)
    4. (ニ) ある事柄に対する思いが失われた状態になる。
      1. [初出の実例]「御行なひしめやかにし給ひつつ後の世の事をのみ思すに頼もしく、むつかしかりし事はなれておぼさる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)
      2. 「欲得を離れた文学の創作にも折込みたいと望んだりしている」(出典:朝の悲しみ(1969)〈清岡卓行〉一)
    5. (ホ) 役職から去る。地位を辞する。また、本来の立場を無視したり捨てたりする。
      1. [初出の実例]「兵衛尉はなれてのち、臨時の祭の舞人にさされて行きけり」(出典:大和物語(947‐957頃)一一三)
      2. 「ヱモシあの娼妓(らん)はあなたにゃアつとめをはなれた仕うちでげスぜ」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉初)
  4. 閉ざされたり固定されたりした状態から解放される。
    1. (イ) 捕えられたりつながれたりしている動物などが自由になる。逃げ出す。
      1. [初出の実例]「鷹飼ひのまだも来なくにつなぎ犬のはなれていかむなくるまつ程〈藤原輔相〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)物名・四一九)
    2. (ロ) 戸格子などが開いた状態になる。
      1. [初出の実例]「格子を探り給へば、はなれたる所もありけり」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)二)
    3. (ハ) 苦しみや嫌疑から解きはなされる。
      1. [初出の実例]「四つの蛇五つの鬼の集まれる穢き身をば厭ひ捨つべし波奈礼(ハナレ)捨つべし」(出典:仏足石歌(753頃))
  5. ある地点から一定の距離を置いた場所にある。へだたっている。
    1. [初出の実例]「しましくも独りあり得るものにあれや島のむろの木波奈礼(ハナレ)てあるらむ」(出典:万葉集(8C後)一五・三六〇一)
    2. 「大臣(おとど)寝殿にはなれおはしまして」(出典:源氏物語(1001‐14頃)梅枝)
  6. 除かれる。除外する。
    1. [初出の実例]「琴の音をはなれては、何事をか物調へ知るしるべとはせむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
  7. 他の物事との間に差異が生じる。また、関係がうすい状態にある。
    1. [初出の実例]「西は千日みなみは墓、煩悩即菩提で、離(ハナ)れたものではないはさて」(出典:咄本・軽口御前男(1703)一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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