失せる(読み)ウセル

デジタル大辞泉 「失せる」の意味・読み・例文・類語

う・せる【失せる】

[動サ下一][文]う・す[サ下二]
なくなる。消える。いなくなる。「血の気が―・せる」
行く」「去る」をののしっていう語。「とっとと―・せろ」
死ぬ。
「二十九にてなむ、―・せ給ひにける」〈大和・一四二〉
[類語](1失う遺失散逸滅失流失消失消滅消散忘失雲散霧散雲散霧消離散四散飛散立ち消え消える散る失する無くなる無くす無くする無くなす喪失する亡失する紛失する落とす/(2去る遠ざかる遠のく離れる立ち去る引き払う引き上げる辞去する退去する退散する退下がる退立ち退く引き下がる引き取る引っ込むあとにする

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「失せる」の意味・読み・例文・類語

う・せる【失】

  1. 〘 自動詞 サ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]う・す 〘 自動詞 サ行下二段活用 〙
  2. [ 一 ] 存在していたものがなくなる。
    1. 事物や人がその場から見えなくなる。無い状態になる。ほろびる。消える。
      1. [初出の実例]「稲むしろ 川そひやなぎ 水行けば 靡き起き立ち その根は宇世(ウセ)ず」(出典:日本書紀(720)顕宗即位前・歌謡)
      2. 「翁をいとほしくかなしと思しつる事もうせぬ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 人がこの世からいなくなる。死ぬ。
      1. [初出の実例]「朋友(ともかき)喪亡(ウセ)たり」(出典:日本書紀(720)神代下(水戸本訓))
    3. ふつうの状態がくずれて、秩序調和がなくなる。適当な状態でなくなる。
      1. [初出の実例]「肝・心も失せて」(出典:今昔物語集(1120頃か)二九)
  3. [ 二 ] 「去る」「来る」「居る」の意で、卑しめて言う語。
    1. 「去る」「行く」を卑しめていう。
      1. (イ) 行きやがる。
        1. [初出の実例]「いとまをこはひで、よそへうせて、ゆさんがたらぬか」(出典:虎明本狂言・富士松(室町末‐近世初))
      2. (ロ) 動詞の連用形に「て」の付いた形に添えて、補助動詞のように用いる。
        1. [初出の実例]「出てうせい」(出典:虎寛本狂言・法師が母(室町末‐近世初))
    2. 「来る」を卑しめて言う語。
      1. (イ) 来やがる。
        1. [初出の実例]「来食はうせてくらえと云たことぞ」(出典:玉塵抄(1563)二二)
        2. 「ヤイ爰(ここ)へこい〈略〉うせぬか、おのれ」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)前)
      2. (ロ) 動詞の連用形に「て」の付いた形に添えて、補助動詞のように用いる。
        1. [初出の実例]「ぬかれてうせて、なんのかのとぬかす」(出典:虎明本狂言・目近籠骨(室町末‐近世初))
    3. 「居る」を卑しめていう語。
      1. (イ) 居やがる。
        1. [初出の実例]「今宵討たんと思ひしに、うせなんだ」(出典:歌舞伎・百夜小町(1684)一)
      2. (ロ) 動詞の連用形に「て」の付いた形に添えて、補助動詞のように用いる。
        1. [初出の実例]「宗盛公の御恩沢にあづかってうせながら」(出典:歌舞伎・伊勢平氏栄花暦(1782)三立(暫))

失せるの語誌

( 1 )古代には、「隠る」「なくなる」とともに「死ぬ」の忌み詞として用いられたが、「うす」は、これらのうちで、最も使用頻度が高い。また、「うす」は、尊敬語「給ふ」「させ給ふ」を伴うことが多いが、これは、「うす」が、多く目上に対して用いられることと関わっていよう。
( 2 )[ 二 ]の卑罵語は、本来のなくなる、見えなくなるの意から、去るの意になったものが転じたものと思われる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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