デジタル大辞泉
「下がる」の意味・読み・例文・類語
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さが・る【下】
- 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
- ① 一端が物に付いて下方にたれる。ぶらさがる。
- [初出の実例]「綿も無き 布肩衣(ぬのかたぎぬ)の 海松(みる)のごと わわけ佐我礼(サガレ)る 襤褸(かかふ)のみ 肩にうち懸け」(出典:万葉集(8C後)五・八九二)
- 「姫百合や上よりさがる蛛の糸〈素龍〉」(出典:俳諧・続猿蓑(1698)夏)
- ② 高い所から低い所へと移る。
- [初出の実例]「髪のかしらにもより来ず、五寸ばかりさがりて、火をさしともしたるやうなりけるに」(出典:枕草子(10C終)一八〇)
- 「あがる矢をばついくぐり、さがる矢をばをどりこえ」(出典:平家物語(13C前)四)
- ③ 一方、または一部が他より低くなる。
- [初出の実例]「御めのしりのすこしさがり給へるが、いとどらうたくおはするを」(出典:大鏡(12C前)二)
- ④ 前から後へと位置が変わる。
- (イ) 進んで行く仲間から遅れる。あとになる。
- [初出の実例]「さがらう物をば、弓のはずにとりつかせよ。手をとりくみ、肩をならべてわたすべし」(出典:平家物語(13C前)四)
- (ロ) 後へ引き退く。
- [初出の実例]「後方へ退(サガッ)て見て居ろ」(出典:落語・鉄拐(1890)〈禽語楼小さん〉)
- ⑤ 地位の上の人のいる所から離れ去る。
- (イ) 目上の人や客などのいる前などから退く。退出する。
- [初出の実例]「設令(たとひ)上のお手討ちに成ますとも決して御前は退(サガ)りません」(出典:落語・将棋の殿様(1889)〈禽語楼小さん〉)
- (ロ) 食べ終わった料理の膳が台所などへ運ばれる。
- [初出の実例]「ほうばって置て禿はさがりんす」(出典:雑俳・柳多留拾遺(1801)巻一四下)
- (ハ) 奉公先から暇をもらって家へ帰る。
- [初出の実例]「下る乳母てい主にこにこ櫃をしょい」(出典:雑俳・柳多留‐三(1768))
- (ニ) ( (ハ)から転じて ) 勤務先、稽古所、学校などから帰る。また、そこへ行くのをやめる。
- [初出の実例]「おいら抔(なんざ)ア、お師匠様から下ると毎日行まアす」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
- ⑥ ( 内裏が北にあったので、北に行くのを「あがる」というのに対して ) 京都で、南へ行く。また、大阪では城と反対の方へ行く。
- [初出の実例]「京極を下(くだ)りに三条までさがりて」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)中)
- ⑦ 物事の程度などが低くなる。
- (イ) 価値や技能が低くなる。劣る。
- [初出の実例]「或はふかくなるをもあなづる。或はわれより下れるをも侮る」(出典:東大国文研究室本十訓抄(1252)三)
- 「さる程に、あがるは三十四五までのころ、さがるは四十以来なり」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)一)
- (ロ) 値段、相場などが安くなる。
- [初出の実例]「ネガ sagaru(サガル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- (ハ) 温度が低くなる。
- [初出の実例]「熱は前より下がってゐたが、脈は依然として思はしくなかった」(出典:竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生と虚空)
- (ニ) 強さ、良さなどの度合がおとろえる。また、おちぶれる。
- [初出の実例]「猶も輪廻の妄執は、此としまでも、すきのさがらぬ」(出典:虎明本狂言・楽阿彌(室町末‐近世初))
- ⑧ 官庁から許可や命令などの書類、また、給与などが渡される。
- [初出の実例]「父の専一は昔しの判事で多少の恩給は下(サガ)るが」(出典:暴風(1907)〈国木田独歩〉二)
- ⑨ 時がある時刻を過ぎる。また、時代が移る。
- [初出の実例]「辰の時とこそ催しはありしか、さがるといふ定(ぢゃう)、午未の時には、わたらんずらんものをと思て」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一一)
- ⑩ 支払いがすまないで、掛けになってたまる。
- [初出の実例]「
(こじり)のつまる鐘撞堂(かねつきどう)、借(サガッ)た跡での板橋より」(出典:談義本・風流志道軒伝(1763)三)
- ⑪ 魚、肉などが腐る。
- [初出の実例]「イヲ、または、ニクガ sagaru(サガル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- ⑫ 鷹(たか)が死ぬことをいう、忌み詞。
- [初出の実例]「鷹の死ぬるをば、そこねたる共、さかりたる共云也」(出典:龍山公鷹百首(1589))
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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