下がる(読み)サガル

デジタル大辞泉 「下がる」の意味・読み・例文・類語

さが・る【下がる】

[動ラ五(四)]

㋐物の上端が固定され、他の端が下へ向かう。たれさがる。ぶらさがる。「棚からヘチマが―・っている」「つららが―・る」
㋑物の一端が他の端よりも下へ向かう。垂れる。「目尻が―・る」「―・ったまゆ」
高い所・位置から低い所・位置へ移る。位置が下の方になる。「ダムの水位が―・る」「地盤が―・る」「靴下が―・る」⇔上がる
今までよりも低い段階に移る。低下する。
㋐位・階級が低くなる。等級順序などが下の方になる。「地位が―・る」「ランクが―・る」⇔上がる
㋑価値・値段・評価などが低くなる。「人気が―・る」「業績が―・る」「質が―・る」「物価が―・る」⇔上がる
㋒力・技量・働きなどが劣った状態になる。「腕が―・る」「能率が―・る」⇔上がる
㋓程度・度合いが低くなる。「気温が―・る」「熱が―・る」⇔上がる

㋐身分の高い人の前から退出する。「御前を―・る」
㋑公的な場所や主人のいる所などから退く。「控室に―・って待つ」「奉公人が宿に―・る」
㋒《内裏のあった北と反対の方向へ行くところから》京都で、南へ行く。⇔上がる
官庁などから金銭や許可などが与えられる。下付される。おりる。「恩給が―・る」「旅券が―・る」
後ろへ移動する。後ろへ退く。「白線内側まで―・ってお待ち下さい」
時が移る。時が過ぎる。「時代が―・って明治となる」
「昼少し―・る頃より雨となッて」〈二葉亭浮雲
遅れる。落伍する。
「―・らう者をば弓のはずに取り付かせよ」〈平家・四〉
[可能]さがれる
[類語](1掛かる垂れる垂下すいかするしだれる垂れ下がるぶら下がる/(2)(3落ちる落ち込む沈む下降する降下する沈下する低下する低落する下落する陥る落っこちる落下する落馬する落輪する脱輪する墜落する失墜する滑落する転落する崩落する滑り落ちる転げ落ちる崩れ落ちる零れ落ちる零れる/(4㋑)退しりぞ引き下がる退出する去る遠ざかる遠のく離れる立ち去る引き払う引き上げる辞去する退去する退散するせる退退立ち退く引き取る引っ込むあとにする退場退席中座退室退座離席座を外す席を外す席を蹴る/(6退しりぞしさるすさる後退するバックする退去る退立ち去る立ち退く引き上げる引き取る引き払う引っ込む辞去

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精選版 日本国語大辞典 「下がる」の意味・読み・例文・類語

さが・る【下】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. 一端が物に付いて下方にたれる。ぶらさがる。
    1. [初出の実例]「綿も無き 布肩衣(ぬのかたぎぬ)の 海松(みる)のごと わわけ佐我礼(サガレ)襤褸(かかふ)のみ 肩にうち懸け」(出典万葉集(8C後)五・八九二)
    2. 「姫百合や上よりさがる蛛の糸〈素龍〉」(出典:俳諧・続猿蓑(1698)夏)
  3. 高い所から低い所へと移る。
    1. [初出の実例]「髪のかしらにもより来ず、五寸ばかりさがりて、火をさしともしたるやうなりけるに」(出典:枕草子(10C終)一八〇)
    2. 「あがる矢をばついくぐり、さがる矢をばをどりこえ」(出典:平家物語(13C前)四)
  4. 一方、または一部が他より低くなる。
    1. [初出の実例]「御めのしりのすこしさがり給へるが、いとどらうたくおはするを」(出典:大鏡(12C前)二)
  5. 前から後へと位置が変わる。
    1. (イ) 進んで行く仲間から遅れる。あとになる。
      1. [初出の実例]「さがらう物をば、弓のはずにとりつかせよ。手をとりくみ、肩をならべてわたすべし」(出典:平家物語(13C前)四)
    2. (ロ) 後へ引き退く。
      1. [初出の実例]「後方へ退(サガッ)て見て居ろ」(出典:落語・鉄拐(1890)〈禽語楼小さん〉)
  6. 地位の上の人のいる所から離れ去る。
    1. (イ) 目上の人や客などのいる前などから退く。退出する。
      1. [初出の実例]「設令(たとひ)上のお手討ちに成ますとも決して御前は退(サガ)りません」(出典:落語・将棋の殿様(1889)〈禽語楼小さん〉)
    2. (ロ) 食べ終わった料理の膳が台所などへ運ばれる。
      1. [初出の実例]「ほうばって置て禿はさがりんす」(出典:雑俳・柳多留拾遺(1801)巻一四下)
    3. (ハ) 奉公先から暇をもらって家へ帰る。
      1. [初出の実例]「下る乳母てい主にこにこ櫃をしょい」(出典:雑俳・柳多留‐三(1768))
    4. (ニ) ( (ハ)から転じて ) 勤務先、稽古所、学校などから帰る。また、そこへ行くのをやめる。
      1. [初出の実例]「おいら抔(なんざ)ア、お師匠様から下ると毎日行まアす」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
  7. ( 内裏が北にあったので、北に行くのを「あがる」というのに対して ) 京都で、南へ行く。また、大阪では城と反対の方へ行く。
    1. [初出の実例]「京極を下(くだ)りに三条までさがりて」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)中)
  8. 物事の程度などが低くなる。
    1. (イ) 価値や技能が低くなる。劣る。
      1. [初出の実例]「或はふかくなるをもあなづる。或はわれより下れるをも侮る」(出典:東大国文研究室本十訓抄(1252)三)
      2. 「さる程に、あがるは三十四五までのころ、さがるは四十以来なり」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)一)
    2. (ロ) 値段、相場などが安くなる。
      1. [初出の実例]「ネガ sagaru(サガル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    3. (ハ) 温度が低くなる。
      1. [初出の実例]「熱は前より下がってゐたが、脈は依然として思はしくなかった」(出典:竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生と虚空)
    4. (ニ) 強さ、良さなどの度合がおとろえる。また、おちぶれる。
      1. [初出の実例]「猶も輪廻の妄執は、此としまでも、すきのさがらぬ」(出典:虎明本狂言・楽阿彌(室町末‐近世初))
  9. 官庁から許可や命令などの書類、また、給与などが渡される。
    1. [初出の実例]「父の専一は昔しの判事で多少の恩給は下(サガ)るが」(出典:暴風(1907)〈国木田独歩〉二)
  10. 時がある時刻を過ぎる。また、時代が移る。
    1. [初出の実例]「辰の時とこそ催しはありしか、さがるといふ定(ぢゃう)、午未の時には、わたらんずらんものをと思て」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一一)
  11. 支払いがすまないで、掛けになってたまる。
    1. [初出の実例]「(こじり)のつまる鐘撞堂(かねつきどう)、借(サガッ)た跡での板橋より」(出典:談義本・風流志道軒伝(1763)三)
  12. 魚、肉などが腐る。
    1. [初出の実例]「イヲ、または、ニクガ sagaru(サガル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  13. (たか)が死ぬことをいう、忌み詞。
    1. [初出の実例]「鷹の死ぬるをば、そこねたる共、さかりたる共云也」(出典:龍山公鷹百首(1589))

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