引っ込む(読み)ヒッコム

デジタル大辞泉 「引っ込む」の意味・読み・例文・類語

ひっ‐こ・む【引っ込む】

《「ひきこむ」の音変化》
[動マ五(四)]

㋐突き出たものが、元のほう、元の状態に戻る。「ダイエットで腹が少し―・んだ」
本来の面よりも内に入り込んだ状態になる。「寝不足で目が―・む」
表から奥へ入った所に位置する。「通りから―・んだ家」
表立つ場からしりぞいて、人目に立たない所に移る。また、表に出ずに内に居つづける。「田舎に―・む」「自分の部屋に―・んだきり出てこない」「じゃまだから―・んでいろ」
[動マ下二]ひっこめる」の文語形
[類語](1㋑)窪むへこむ陥没/(3下がる去る遠ざかる遠のく離れる立ち去る引き払う引き上げる辞去する退去する退散するせる退退立ち退く引き下がる引き取るあとにする

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「引っ込む」の意味・読み・例文・類語

ひっ‐こ・む【引込】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 マ行五(四) 〙 ( 「ひきこむ(引込)」の変化した語 )
    1. 内にはいって外に出ない状態になる。また、勤めを休む。江戸時代の遊里では、遊女が見世に出て客を取ろうとしないことをいった。
      1. [初出の実例]「民も夏は出て冬はひっこうでいるぞ」(出典:史記抄(1477)三)
      2. 「太夫の小主水が、久しく引込(ヒッコミ)(つとめ)ざる子細を知ったか」(出典浮世草子傾城禁短気(1711)四)
    2. 目立たない所に退く。閑居や引退をする。
      1. [初出の実例]「東宮に深々とひっこふで御座有れどもはや芳名外国へ聞へたぞ」(出典:足利本人天眼目抄(1471‐73)下)
    3. 引っ込み禿になる。
      1. [初出の実例]「千年屋の抱への子で、此の頃まで引っ込んで居りましたのが」(出典:人情本・仮名文章娘節用(1831‐34)初)
    4. しりごみする。ぐずぐずする。
    5. 低く落ち込む。また、深くくぼむ。
      1. [初出の実例]「眼はすこし凹(ヒッコミ)たる方にて」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉二)
    6. 後方へ退く。後ろに下がる。奥へはいる。
      1. [初出の実例]「大塔あり〈略〉金堂の東に北へ少しひっこふてあり」(出典:石山本願寺日記‐宇野主水日記・雑記・高野山参詣・天正八年(1580)九月)
    7. 売価が仕入れ値よりも低くなる。欠損になる。くいこむ。
      1. [初出の実例]「本直が四貫宛も引(ヒッ)込まアナ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 マ行五(四) 〙 ( 「ひきこむ(引込)」の変化した語 )
    1. 引いて中に入れる。ひっぱりこむ。
      1. [初出の実例]「箱根峠でそまのうっくさった匂ひを鼻の穴へひっこんで」(出典:雑兵物語(1683頃)下)
      2. 「会社から線を引込(ヒッコ)んで電灯料を払って使ふのでなく、線も引かず、料金も払はず」(出典:まんだん読本(1932)日本のエヂソン〈井口静波〉)
    2. 仲間に加える。
      1. [初出の実例]「何ぞの時の替へ玉に、引(ヒッ)(コ)んで置くがいい」(出典:歌舞伎・四天王楓江戸粧(1804)五立)
    3. 帽子、笠、頭巾などを深くかぶる。
      1. [初出の実例]「深き蓑に編笠深くひっかうで」(出典:寛永版曾我物語(南北朝頃)五)
  3. [ 3 ] 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙ひっこめる(引込)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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