退く(読み)シリゾク

デジタル大辞泉 「退く」の意味・読み・例文・類語

しり‐ぞ・く【退く】

[動カ五(四)]
後方へ下がる。後ろへのく。あとじさる。「大またで三歩―・く」⇔進む

㋐貴人・目上の人の前を離れて出て行く。退出する。また、その場所から去る。「御前を―・く」「控えの間に―・いて待つ」
試合などで、敗れてそこからいなくなる。「初戦で―・く」
官職などを辞める。引退する。「現役を―・く」「政界から―・く」
多くしりぞいて」の形で用いる)置かれている状況を離れる。「一歩―・いて考える」
譲歩する。引き下がる。「自説を固持して一歩も―・かない」
[動カ下二]しりぞける」の文語形
[類語](1退去る下がる退立ち去る立ち退く引き下がる引き上げる引き取る引き払う引っ込む辞去/(3辞める離れる去る退抜ける離脱する脱退する引退する辞任する離任する手を引く身を退く骸骨を乞う退会退団退部脱会脱党離党杯を返す

の・く【退く】

[動カ五(四)]
今までいた場所から離れる。今までの場所をあけて他へ移る。どく。「ちょっとそこを―・いてください」「借家を―・く」
ある場所から離れている。へだたっている。「現場から少し―・いた所」
地位・職務から離れる。引退する。「大学教授を―・く」
組織や仲間から抜ける。脱退する。「組合から―・く」
今までの関係を離れる。縁が切れる。「夫婦も―・けば他人」
[可能]のける
[動カ下二]のける」の文語形。
[類語](1退しりぞ去る下がる退立ち去る立ち退く引き下がる引き上げる引き取る引き払う引っ込む辞去/(3)(4辞める去る離れる退しりぞ抜ける離脱する脱退する引退する辞任する離任する手を引く身を退く骸骨を乞う退会退団退部脱会脱党離党杯を返す

ど・く【退く】

[動カ五(四)]いる場所を動いて、そこをあける。のく。「早く―・いてくれ」
[可能]どける
[動カ下二]どける」の文語形。
[類語]下がる去る遠ざかる遠のく離れる立ち去る引き払う引き上げる辞去する退去する退散するせる退立ち退く引き下がる引き取る引っ込むあとにする

そ・く【退く】

[動カ四]遠く離れる。遠ざかる。
「雲離れ―・き居りとも我忘れめや」〈・下・歌謡〉
[動カ下二]遠く離す。遠ざける。
「赤見山草根刈り―・け合はすがへ争ふいもあやにかなしも」〈・三四七九〉

しぞ・く【退く】

[動カ四]しりぞく」に同じ。
「漕げども漕げどもしりへ―・きに―・きて」〈土佐

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「退く」の意味・読み・例文・類語

の・く【退】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙
    1. [ 一 ] その位置・立場から離れ去る。また、位置をへだてる。
      1. 今までいた場所から離れ去る。どく。たちのく。
        1. [初出の実例]「つつみもあへず、物ぐるはしきまでけはひもきこえぬべければ、のきぬ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)
      2. 距離をおく。場所が離れる。
        1. [初出の実例]「居給べき所と見ゆるは、寺よりは少しのきてぞありける」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)四)
      3. 逃げる。退却する。
        1. [初出の実例]「渚(なぎさ)に百騎ばかりありける物ども、しばしもこらへず、二町ばかりざっと引いてぞのきにける」(出典平家物語(13C前)一一)
      4. 地位を離れる。
        1. [初出の実例]「一条院くらゐにつかせ給しかば、よそ人にて、関白のかせたまひにき」(出典:大鏡(12C前)二)
      5. 関係がなくなる。縁が切れる。離縁する。また、「のいた」の形で、関係がない、無縁だの意で用いる。→のいた仲
        1. [初出の実例]「この宮の御具にては、いと良きあはひなりと、思も譲りつべく、のく心ちし給へど」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)
      6. ついていたものが離れる。取れる。
        1. [初出の実例]「エイ。申(まうし)申、何と御草臥はのきましてござるか」(出典:虎寛本狂言・呂蓮(室町末‐近世初))
      7. 売れてかたづく。売りさばかれる。
        1. [初出の実例]「して『此間は、なにかとして、みまいまらせぬと云て、さけは、のきまらするかと云』女『ようのくと云』」(出典:天理本狂言・伯母が酒(室町末‐近世初))
    2. [ 二 ] 補助動詞。動詞の連用形に「て」の付いた形に付いて、「…てしまう」の意を表わす。
      1. [初出の実例]「春は三春とて、九十日を、三にわけた也。三分の春が、二春は塵となりてのくる也」(出典:中華若木詩抄(1520頃)下)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行四段活用 〙
    1. ( 除 ) 除く。他と区別する。「いとのきて」の形で、慣用句的に用いられる。→いと(最)のきて
    2. ( 遺 ) 残す。
      1. [初出の実例]「いかなるや人に坐(いま)せか 石の上を 土と踏みなし足跡(あと)乃祁(ノケ)るらむ 貴くもあるか」(出典:仏足石歌(753頃))
  3. [ 3 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙のける(退)

しり‐ぞ・く【退】

  1. ( 後方の意の「しり」に、離れるの意の「そく」が付いたものという )
  2. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙
    1. あとへひく。ひきさがる。後ろへのく。しぞく。
      1. [初出の実例]「是に於いて、古人の大兄、座(しきゐ)を避りて逡巡(シリソキ)て手を拱(つくり)て辞(いな)び曰く」(出典:日本書紀(720)孝徳即位前(北野本訓))
      2. 「人々はしりぞきつつさふらへばより給て、などかくいぶせき御もてなしぞ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)
    2. その場を離れて出て行く。かえる。退出する。特に、貴人・目上の人などの前から退出するのをいう。「二回戦で退く」
      1. [初出の実例]「坐より起ちて、仏を礼して退(シリソキ)ぬ」(出典:立本寺本法華経寛治元年点(1087)一)
    3. 隠退する。今までの官職や職業をやめたり、地位や社会から身をひいたりする。
      1. [初出の実例]「つたなきをしらばなんぞやがてしりぞかざる」(出典:徒然草(1331頃)一三四)
    4. へりくだる。けんそんする。ひかえめにする。
      1. [初出の実例]「しりぞきて咎なしとこそ昔賢しき人も言ひ置きけれ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
    5. ものごとの勢いが弱まったりなくなったりする。
      1. [初出の実例]「九月も半ちかくなったが残暑はすこしも退(シリゾ)かぬ」(出典:濹東綺譚(1937)〈永井荷風〉九)
    6. ( 他動詞的に用いて ) しりぞける。遠ざける。
      1. [初出の実例]「又みもなきよろこびをしりぞき、はつとのしたに六こんをよくおさめまもるべし」(出典:こんてむつすむん地(1610)一)
  3. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙しりぞける(退)

し‐ぞ・く【退】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行四段活用 〙 後方にひきさがる。うしろにさがる。しりぞく。
    1. [初出の実例]「諸の阿素洛驚き怖き退(しソキ)(あか)れぬといふがごとし」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)八)
    2. 「まづ、しりなるこそは、などいふほどに、それもおなじ心にや、しぞかせ給へ。かたじけなしなどいふ」(出典:枕草子(10C終)二七八)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行四段活用 〙 遠ざける。追いはらう。しりぞける。
    1. [初出の実例]「仏を去(シソキ)て時遙かに、病重く行(か)けたれば」(出典:彌勒上生経賛平安初期点(850頃))

そ・く【退】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行四段活用 〙 遠く離れる。遠ざかる。しりぞく。のく。
    1. [初出の実例]「大和へに 西風(にし)吹き上げて 雲離れ 曾岐(ソキ)居りとも 我忘れめや」(出典:古事記(712)下・歌謡)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 離す。遠ざける。しりぞかせる。取り去る。
    1. [初出の実例]「安可見山草根刈り曾気(ソケ)逢はすがへ争ふ妹しあやに愛(かな)しも」(出典:万葉集(8C後)一四・三四七九)

ど・く【退】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙 その場を離れる。そこから他の場所に移る。しりぞく。のく。
    1. [初出の実例]「湯水を遣ふのだものを、かかるが悪くば遠くへ退居(ドイて)るがいい」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)二)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙どける(退)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

タコノキ

タコノキ科の常緑高木。小笠原諸島に特産する。幹は直立して太い枝をまばらに斜上し,下部には多数の太い気根がある。葉は幹の頂上に密生し,長さ1〜2m,幅約7cmで,先は細くとがり,縁には鋭い鋸歯(きょし)...

タコノキの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android