デジタル大辞泉
「退く」の意味・読み・例文・類語
そ・く【▽退く】
[動カ四]遠く離れる。遠ざかる。
「雲離れ―・き居りとも我忘れめや」〈記・下・歌謡〉
[動カ下二]遠く離す。遠ざける。
「赤見山草根刈り―・け合はすがへ争ふ妹しあやにかなしも」〈万・三四七九〉
しぞ・く【▽退く】
[動カ四]「しりぞく」に同じ。
「漕げども漕げどもしりへ―・きに―・きて」〈土佐〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
Sponserd by 
の・く【退】
- [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙
- [ 一 ] その位置・立場から離れ去る。また、位置をへだてる。
- ① 今までいた場所から離れ去る。どく。たちのく。
- [初出の実例]「つつみもあへず、物ぐるはしきまでけはひもきこえぬべければ、のきぬ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)
- ② 距離をおく。場所が離れる。
- [初出の実例]「居給べき所と見ゆるは、寺よりは少しのきてぞありける」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)四)
- ③ 逃げる。退却する。
- [初出の実例]「渚(なぎさ)に百騎ばかりありける物ども、しばしもこらへず、二町ばかりざっと引いてぞのきにける」(出典:平家物語(13C前)一一)
- ④ 地位を離れる。
- [初出の実例]「一条院くらゐにつかせ給しかば、よそ人にて、関白のかせたまひにき」(出典:大鏡(12C前)二)
- ⑤ 関係がなくなる。縁が切れる。離縁する。また、「のいた」の形で、関係がない、無縁だの意で用いる。→のいた仲。
- [初出の実例]「この宮の御具にては、いと良きあはひなりと、思も譲りつべく、のく心ちし給へど」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)
- ⑥ ついていたものが離れる。取れる。
- [初出の実例]「エイ。申(まうし)申、何と御草臥はのきましてござるか」(出典:虎寛本狂言・呂蓮(室町末‐近世初))
- ⑦ 売れてかたづく。売りさばかれる。
- [初出の実例]「して『此間は、なにかとして、みまいまらせぬと云て、さけは、のきまらするかと云』女『ようのくと云』」(出典:天理本狂言・伯母が酒(室町末‐近世初))
- [ 二 ] 補助動詞。動詞の連用形に「て」の付いた形に付いて、「…てしまう」の意を表わす。
- [初出の実例]「春は三春とて、九十日を、三にわけた也。三分の春が、二春は塵となりてのくる也」(出典:中華若木詩抄(1520頃)下)
- [ 2 ] 〘 他動詞 カ行四段活用 〙
- ① ( 除 ) 除く。他と区別する。「いとのきて」の形で、慣用句的に用いられる。→いと(最)のきて。
- ② ( 遺 ) 残す。
- [初出の実例]「いかなるや人に坐(いま)せか 石の上を 土と踏みなし足跡(あと)乃祁(ノケ)るらむ 貴くもあるか」(出典:仏足石歌(753頃))
- [ 3 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 ⇒のける(退)
しり‐ぞ・く【退】
- ( 後方の意の「しり」に、離れるの意の「そく」が付いたものという )
- [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙
- ① あとへひく。ひきさがる。後ろへのく。しぞく。
- [初出の実例]「是に於いて、古人の大兄、座(しきゐ)を避りて逡巡(シリソキ)て手を拱(つくり)て辞(いな)び曰く」(出典:日本書紀(720)孝徳即位前(北野本訓))
- 「人々はしりぞきつつさふらへばより給て、などかくいぶせき御もてなしぞ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)
- ② その場を離れて出て行く。かえる。退出する。特に、貴人・目上の人などの前から退出するのをいう。「二回戦で退く」
- [初出の実例]「坐より起ちて、仏を礼して退(シリソキ)ぬ」(出典:立本寺本法華経寛治元年点(1087)一)
- ③ 隠退する。今までの官職や職業をやめたり、地位や社会から身をひいたりする。
- [初出の実例]「つたなきをしらばなんぞやがてしりぞかざる」(出典:徒然草(1331頃)一三四)
- ④ へりくだる。けんそんする。ひかえめにする。
- [初出の実例]「しりぞきて咎なしとこそ昔賢しき人も言ひ置きけれ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
- ⑤ ものごとの勢いが弱まったりなくなったりする。
- [初出の実例]「九月も半ちかくなったが残暑はすこしも退(シリゾ)かぬ」(出典:濹東綺譚(1937)〈永井荷風〉九)
- ⑥ ( 他動詞的に用いて ) しりぞける。遠ざける。
- [初出の実例]「又みもなきよろこびをしりぞき、はつとのしたに六こんをよくおさめまもるべし」(出典:こんてむつすむん地(1610)一)
- [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 ⇒しりぞける(退)
し‐ぞ・く【退】
- [ 1 ] 〘 自動詞 カ行四段活用 〙 後方にひきさがる。うしろにさがる。しりぞく。
- [初出の実例]「諸の阿素洛驚き怖き退(しソキ)散(あか)れぬといふがごとし」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)八)
- 「まづ、しりなるこそは、などいふほどに、それもおなじ心にや、しぞかせ給へ。かたじけなしなどいふ」(出典:枕草子(10C終)二七八)
- [ 2 ] 〘 他動詞 カ行四段活用 〙 遠ざける。追いはらう。しりぞける。
- [初出の実例]「仏を去(シソキ)て時遙かに、病重く行
(か)けたれば」(出典:彌勒上生経賛平安初期点(850頃))
そ・く【退】
- [ 1 ] 〘 自動詞 カ行四段活用 〙 遠く離れる。遠ざかる。しりぞく。のく。
- [初出の実例]「大和へに 西風(にし)吹き上げて 雲離れ 曾岐(ソキ)居りとも 我忘れめや」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 離す。遠ざける。しりぞかせる。取り去る。
- [初出の実例]「安可見山草根刈り曾気(ソケ)逢はすがへ争ふ妹しあやに愛(かな)しも」(出典:万葉集(8C後)一四・三四七九)
ど・く【退】
- [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙 その場を離れる。そこから他の場所に移る。しりぞく。のく。
- [初出の実例]「湯水を遣ふのだものを、かかるが悪くば遠くへ退居(ドイて)るがいい」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
- [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 ⇒どける(退)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
Sponserd by 