強誘電体(読み)キョウユウデンタイ

デジタル大辞泉 「強誘電体」の意味・読み・例文・類語

きょう‐ゆうでんたい〔キヤウイウデンタイ〕【強誘電体】

強誘電性をもつ物質。水晶・ロッシェル塩など。

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精選版 日本国語大辞典 「強誘電体」の意味・読み・例文・類語

きょう‐ゆうでんたいキャウイウデンタイ【強誘電体】

  1. 〘 名詞 〙 電場を加えなくても、電気双極子分極して表面分極電荷のあらわれる物体誘電率が大。電場を強く加えると、分極と電場との間にヒステリシスを示す。ロッシェル塩、燐酸二水素カリウム、チタン酸バリウムなど。コンデンサーなどに利用されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「強誘電体」の意味・わかりやすい解説

強誘電体
きょうゆうでんたい

もともと電気分極をもっている物質のことをいう。プラスの点電荷とマイナスの点電荷とが近い位置に存在して1対をなしているものが電気双極子(または単に双極子)である。このとき、プラス、マイナス電荷の絶対値をq、マイナスの点電荷の位置からプラスの点電荷の位置へ引いた位置ベクトルrとして、μ=qrはこの双極子のモーメントといわれる。物質の中にこのような双極子がたくさん存在するとき、それらのモーメントの代数和の単位体積当りの値 P がこの物質の電気分極とよばれる量である。ただし、μii番目の双極子のモーメントである。物質の電気分極のようすのことを物質の誘電性という。

 誘電性には常誘電性と強誘電性とがある。前者では、の(1)に示すように、電界Eが0のとき電気分極Pは0であり、PEとの関係がほとんど直線である。後者では、の(2)に示すように、Eが0であってもPは0ではなく、PEとの関係が著しく非直線的であり、かつEを増加するときと減少するときとでPの値が異なる。すなわち、常誘電性ではPEで誘起されて初めて存在するのに対して、強誘電性ではもともと電気分極が存在する。このような電気分極は自発(電気)分極とよばれる。常誘電性を示す物質を常誘電体といい、強誘電性を示す物質を強誘電体という。なお、強誘電体のの(2)に示されるようなPE曲線のことを(PE)履歴曲線という。強誘電体の温度を上げると、ある温度でその強誘電性が消滅して常誘電性に変わる。この温度をキュリー温度またはキュリー点という。すなわち、強誘電体はキュリー点で強誘電相から常誘電相へ相転移をする。

 強誘電体としては現在までにチタン酸バリウムなど約250種類の物質が知られている。強誘電体はコンデンサー材料、ピエゾ電気材料、パイロ電気材料、電気光学材料などとして重要なものとなっている。

[沢田正三]


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百科事典マイペディア 「強誘電体」の意味・わかりやすい解説

強誘電体【きょうゆうでんたい】

普通の誘電体が電場内でだけ誘電分極を生じるのに対し,自然の状態ですでに誘電分極を起こしている(自発分極)物質。磁気の強磁性体に対応する。一般に誘電率が大きく,また誘電分極の大きさが現在の電場の強さだけで決まらず過去の状態に依存する(ヒステリシス)。偏光で観察すると多数の分域に分かれているのが見える。ある温度(キュリー温度)を越えると急激に普通の誘電体に変わる。大きい誘電率を蓄電器に利用(チタン酸バリウム等),また著しい圧電気現象を示すので圧電材料に使われる(ロッシェル塩,リン酸二水素カリウム等)。

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化学辞典 第2版 「強誘電体」の解説

強誘電体
キョウユウデンタイ
ferroelectric substance, ferroelectrics

電場を加えたとき誘電分極を生じる物質を誘電体といい,電場がない場合でも分極する.すなわち,自発分極する物質を強誘電体という.一般に,強誘電体の誘電率は数百以上であるが,ある温度で急激に変化し数千~数万になる.この温度をキュリー点という.代表的なものに,リン酸二水素カリウム,チオ尿素,ロシェル塩,硫酸トリグリシン,ニオブ酸リチウム,チタン酸バリウムなどがある.なかでもチタン酸バリウムは強誘電体磁器として多用されている.これにはBaTiO3-MTiO3(M = Sr,Pb,Ca,Yなど)系,BaTiO3-BaSnO3系,BaTiO3-BaZrO3系,PbTiO3-PbZrO3系などの固溶体がある.コンデンサーおよび圧電素子として用いられる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「強誘電体」の意味・わかりやすい解説

強誘電体
きょうゆうでんたい
ferroelectric substance

誘電体のうち,自発的な電気分極 (正の電荷と負の電荷の位置が異なるため,互いに打消されず外から見ると電気的変位を生じたもの) をもち,それが電界によって方向を反転しうる物質をいう。古くから知られているのはロシェル塩である。通常は,このような自発的な電気分極の向きがばらばらであるため,電界を印加しないときは全体の電気分極は0である。電界を印加するとそれらが電界方向に並び,大きな電気分極となる。この電気分極は,外部からの電界,光などと相互作用するので,これらを利用してコンデンサ材料,圧電材料,光変調,光偏向などに応用されている。強誘電体としては,チタン酸バリウム,PZTなどが代表的である。

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改訂新版 世界大百科事典 「強誘電体」の意味・わかりやすい解説

強誘電体 (きょうゆうでんたい)

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世界大百科事典(旧版)内の強誘電体の言及

【電気分極】より

…極性結晶には,電場を加えたとき自発分極の向きが反転するものとしないものとがある。前者を強誘電体という。極性結晶に外から応力を加えると,電気分極を生ずる。…

【誘電体】より

…静電容量Cの平行平板空気コンデンサーの極板間を,比誘電率εの誘電体で満たすと,静電容量はε倍になる。比誘電率の値は,気体ではほぼ1に等しく,通常の固体では2程度から10程度までの値をもつが,チタン酸バリウムなどの強誘電体では103程度の大きな値に達する。なお,誘電体に周波数ωの電場を加えて,同じ周波数の電束密度が生ずるときに,ε(ω)をその誘電体の誘電関数という。…

※「強誘電体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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