強迫観念にとらわれ強迫行為を繰り返してしまうために、日常生活や社会生活に支障をきたすようになる精神疾患。強迫観念とは、無意味でつまらないとわかっていながら頭から離れず、いつもとらわれてしまう思い込みをいい、強迫行為とは強迫観念を打ち消すための行為をせずにいられず、無意味と思いながら繰り返し行動に移してしまうことである。たとえば、戸締りや火の元などを何度も繰り返し確認せずにはいられない、あるいは手が汚れていると思い込み、たとえ汚れていなくとも不安を感じずっと繰り返し手洗いを続ける、他人に危害を加えたと思い込んで不安になる、などである。ほかに縁起のいい、もしくは悪い数字に極端にこだわったり、物の配置や物事の手順が一定でないと不安を感じ、生活に支障が生じる場合もある。強迫行為が生活に支障をもたらすほど重症化したものが疾患として扱われ、OCD(Obsessive-Compulsive Disorder)と略称される。アメリカ精神医学会の『精神障害の診断と統計の手引き(DSM)』では、かつては不安障害に含まれていたが、第5版(DSM-5)からは独立した疾患概念として、「強迫症および関連症群」の一つに位置づけられた。また、DSM-5には神経症の疾患概念がなくなったために、強迫神経症は強迫性障害とよばれるようになった。世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)では神経症は神経症性障害に分類され、強迫性障害は「神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害」のカテゴリーに含まれている。またWHOでは、強迫性障害を生活上の機能障害を引き起こす10大疾患の一つにあげている。日本人の罹患(りかん)率は明らかではないが、潜在的なものも含めてかなりの数に上ると推測されている。また、その原因は明確になっていないが、潔癖症といった性格やストレスなどが考えられている。治療は薬物療法や認知行動療法などによる。
[編集部 2017年3月21日]
(田中信市 東京国際大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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