往なす(読み)イナス

デジタル大辞泉 「往なす」の意味・読み・例文・類語

いな・す【往なす/去なす】

[動サ五(四)]
2から》攻撃を簡単にあしらう。また、自分に向けられた追及を言葉巧みにかわす。「鋭い質問を軽く―・す」
相撲で、急に体をかわして、攻撃に出ている相手の体勢を崩す。「―・されて土俵に手をつく」
和服の襟を後方に押し下げる。襟をぬく。
「グイと―・した襟と」〈虚子俳諧師
去らせる。行かせる。
「そのよせきもない烏帽子の中に、造作をして壁が塗らるるものか、急いで―・せい」〈虎明狂・今参〉
実家に帰す。離縁する。
「気に入らいで―・した嫁」〈浄・宵庚申
ばかにする。悪口を言う。
の貧乏はどうぢゃいなと、一気にわしを―・しくさる」〈滑・大師めぐり〉
[可能]いなせる
[類語]避けるよけるかわらす外すれる外れる受け流す回避忌避敬遠逃避退避退散退去退却避難待避肩透かし

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「往なす」の意味・読み・例文・類語

いな・す【往・去】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. 去るようにさせる。帰らせる。
    1. (イ) 立ち去らせる。追っぱらう。
      1. [初出の実例]「泊れや旅のうきそう、いなそうやれんげしおは読まいで」(出典:歌謡・田植草紙(16C中‐後)晩歌一番)
    2. (ロ) 実家に返す。離縁する。
      1. [初出の実例]「気にいらいでいなした嫁」(出典:浄瑠璃・心中宵庚申(1722)下)
  3. ばかにする。悪口を言う。けなす。
    1. [初出の実例]「『コリャ、いなすな。いなすな』『イヤ、いなさにゃならぬ』」(出典:歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)一)
  4. 台なしにする。ふいにする。
    1. [初出の実例]「折角酔ふた酒、とんといなしてこましたとぼやきぼやき出てゆきぬ」(出典:滑稽本・大師めぐり(1812)上)
  5. 相撲のわざで、攻勢をかわして、相手の体勢を崩す。転じて、攻撃や追及を軽くあしらう。
    1. [初出の実例]「『しない?』『するものか』『だって、君』田代は出鼻をいなされたかたちに」(出典:春泥(1928)〈久保田万太郎〉むほん)
  6. 和服の襟(えり)を首の後ろの方へ押し下げる。襟の合わせ目あたりを押し上げるような動作をする。えりをぬく。
    1. [初出の実例]「グイといなした襟と」(出典:俳諧師(1908)〈高浜虚子〉一二)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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