陸上・水上の交通の安全をおびやかす罪をいう。現代社会においては,交通機関は高度に発達し,市民生活はそれによって支えられている。したがって,このような交通の安全をおびやかす行為は,一般市民の生命・身体に重大な脅威をもたらすから,それを禁圧する必要性は大きい。現行刑法は,このような交通の安全をおびやかす行為のうち,陸上・水上交通に関する次のような類型のとくに危険な行為を〈第2編第11章往来を妨害する罪〉として処罰の対象とし,その他の行為の規制は,道路交通法などの諸法令にゆだねている。なお,航空の安全をおびやかす行為の処罰は,〈航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律〉(1974公布)などの特別法に規定されている。(1)陸路・水路・橋を損壊したり,ふさいだりして,往来を妨害する行為(刑法124条1項。2年以下の懲役または20万円以下の罰金)。その結果,人を死傷させたときは,傷害の罪と比べて重い方によって処罰される(同条2項)。(2)鉄道またはその標識を損壊するなどして,汽車・電車・艦船の往来の危険をもたらす行為(往来危険罪。125条。2年以上の有期懲役)。労働争議の際,業務命令に反した電車の運行をしたという〈人民電車〉事件(1949)で適用された。(3)人の乗っている汽車・電車・艦船を顚覆・覆没・破壊する行為(126条1,2項。無期または3年以上の懲役)。その結果人を死亡させると死刑または無期懲役に処せられる(同条3項)。(4)往来危険罪を犯し,その結果汽車・電車・艦船を顚覆・覆没・破壊した者も(3)と同じに扱われる(127条)が,この点の解釈は三鷹事件(1950)において争点となった。(5)過失による往来危険罪も処罰され(129条1項。30万円以下の罰金),業務上過失の場合は刑が加重される(同条2項。3年以下の禁錮または50万円以下の罰金)。なお,往来妨害罪は,故意犯については未遂も罰せられる(128条)。
執筆者:山口 厚
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刑法第2編第11章の「往来を妨害する罪」とは、陸上や海上の交通安全を保護するため、交通路や交通機関の運行に支障をきたす行為を処罰するものである(刑法124条~129条)。ここには、(1)陸路・水路・橋を損壊・閉塞(へいそく)(遮断)して往来を妨害する往来妨害罪のほか、(2)鉄道や標識を損壊したり、水路について灯台や浮標を損壊するなどの方法により、汽車、電車、艦船の往来に危険を生じさせる往来危険罪、(3)現に人がいる汽車・電車・艦船を転覆・破壊する汽車等転覆・破壊罪がある。これらの罪は未遂犯のほか、(2)(3)の罪については過失犯も処罰される。また、これらの罪にあたる行為によって、人を死傷させた場合は重く処罰される。ただ、本罪には自動車や航空機は含まれず、自動車交通については道路法、高速自動車国道法、道路交通法、道路運送法があり、航空機の航行については「航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律」などがある。
[名和鐵郎]
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