得る(読み)エル

デジタル大辞泉 「得る」の意味・読み・例文・類語

える【得る】

[動ア下一][文]う[ア下二]
努力して自分のものにする。手に入れる。獲得する。「利益える」「信頼をえる」「承認える
納得する。理解できる。悟る。「要領ない質問」「よくその意をない」
好ましくないものを身に受ける。「罪をえる」「病をえる
(多く、活用語の連体形助詞「を」を添えた形に付いて)可能である、の意を表す。…できる。「そうせざるをない」「ようやく監視の目を逃れることをた」
(動詞の連用形に付いて)
㋐…できる。「微笑を禁じない」
㋑そのようになる可能性がある。「交渉決裂もありえる」「起こりない事故」
得意とする。すぐれている。
「これかれたる所ぬ所、互ひになむある」〈古今仮名序
[補説]鳥や獣のえものを手に入れる場合には「獲る」とも書く。また、終止するときは文語形の「うる」となることがあり、特に5終止形・連体形は「うる」を用いることが多い。→う(得)る
[下接句]簡にして要を得る九死に一生を得る御意ぎょいを得るこころざしを得る事なきを得る力を得る時を得る所を得る名を得る万死ばんしうちに一生を得る要領を得ない我が意を得る蛟竜こうりょう雲雨うんう虎穴こけつらずんば虎子こじを得ず二兎にとを追う者は一兎をも得ず
[類語]取る収める稼ぐ

うる【得る】

[動ア下二]本来は下二段動詞「う」の連体形》
え(得)る」に同じ。「うるところが多い」「承認をうる
動詞の連用形に付いて、…することができる、可能である、の意を表す。「できうるかぎりの努力」「ストライキは回避しうる」→える
[補説]ふつう連体修飾語として用いるが、改まった表現や古めかしい表現には終止法としても用いられる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「得る」の意味・読み・例文・類語

える【得・獲】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ア行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]〘 他動詞 ア行下二段活用 〙
    1. 自分のものにする。獲得する。
      1. (イ) 人、物事官位などを手に入れる。また、妻として迎え取る。
        1. [初出の実例]「吾はもや安見児(やすみこ)(え)たり皆人の得(え)かてにすといふ安見児衣(エ)たり」(出典万葉集(8C後)二・九五)
        2. 「播磨の守の子の、蔵人より今年かうぶりえたるなりけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
      2. (ロ) よい時機、位置、程度などを獲得する。
        1. [初出の実例]「殿にも文作りしげく、はかせ才人どもところえたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
        2. 「平氏の繁昌折をえたり」(出典:平家物語(13C前)三)
      3. (ハ) (罪、病気など)好ましくない物事を身に受ける。こうむる。
        1. [初出の実例]「罪うることぞとつねに聞こゆるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
      4. (ニ) ( 獲 ) 猟をして鳥や獣などを捕える。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
    2. ( 多く「心を得る」「意を得る」などの形で ) さとる。理解する。
      1. [初出の実例]「ものの心をえ給ふ方の」(出典:源氏物語(1001‐14頃)橋姫)
    3. 物事に長じる。得意とする。すぐれる。
      1. [初出の実例]「これかれ、えたる所、えぬ所、たがひになむある」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
    4. 取り入れて利用する。
      1. [初出の実例]「此両牛の声をえて、朗詠にも作られたり」(出典:虎明本狂言・牛馬(室町末‐近世初))
    5. ( 活用語の連体形に「を」または「こと(を)」の付いた形に続けて ) 可能の意を表わす。可能とする。…できる。
      1. [初出の実例]「長安の憂を脱かるること得(エ)じ」(出典:史記呂后本紀延久五年点(1073))
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ア行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]〘 自動詞 ア行下二段活用 〙 ( 動詞の連用形に付いて補助動詞のように用いられる ) …できる。
    1. [初出の実例]「しましくもひとりあり宇流(ウル)ものにあれや島のむろの木離れてあるらむ」(出典:万葉集(8C後)一五・三六〇一)
    2. 「涙こぼれそめぬれば、折折ごとにえ念じえず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カスハラ

カスタマー(顧客)とハラスメント(嫌がらせ)を組み合わせた造語「カスタマーハラスメント」の略称。顧客や取引先が過剰な要求をしたり、商品やサービスに不当な言いがかりを付けたりする悪質な行為を指す。従業...

カスハラの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android