(読み)シャ

デジタル大辞泉 「赦」の意味・読み・例文・類語

しゃ【赦】[漢字項目]

常用漢字] [音]シャ(呉)(漢) [訓]ゆるす
罪をゆるす。「赦免恩赦大赦特赦容赦

しゃ【赦】

国家皇室吉凶大事などがあったときに、朝廷幕府などが、特に囚人の罪科を許したこと。

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精選版 日本国語大辞典 「赦」の意味・読み・例文・類語

しゃ【赦】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 罪を許すこと。〔周礼‐秋官・司刺〕
  3. 国家・皇室に吉凶の大事があったときや、功徳(くどく)、追福などを行なうとき、特に国家が囚人の罪科をゆるしたこと。常赦・大赦・非常赦の種類があり、特定の地域に限って行なう曲赦もあった。また鎌倉以降、幕府がこれを行なうこともあり、大名も行なったことがある。赦免。免物。
    1. [初出の実例]「獄成者、雖赦、猶除名」(出典:律(718)名例)
    2. 「中宮御産の御祈さまざまに候也。なにと申し候共、非常の赦に過ぎたる事あるべしともおぼえ候はず」(出典:平家物語(13C前)三)
  4. 現行法で、恩赦、とくに大赦、特赦のこと。
    1. [初出の実例]「赦に因て復権を得たる者は」(出典:刑法(明治一三年)(1880)六四条)

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普及版 字通 「赦」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

[字音] シャ
[字訓] ゆるす

[説文解字]

[字形] 会意
赤+攴(ぼく)。赤は人に火を加えて、その穢れを祓う意。さらに攴を加えて殴(う)ち、その罪を祓う。それで赦免の意となる。〔説文〕三下に「置くなり」とあり、赦置して罪を免ずることをいう。〔玉〕に「放なり」とし、放免の意とする。〔書、舜典〕「災(せいさい)は肆赦(ししや)す」とは、不可抗力や不作為の罪は罰しないことをいう。

[訓義]
1. ゆるす、罪をゆるす、罪を祓い清めてゆるす。
2. 螫と通じ、さす。また、ことの意に用いる。

[古辞書の訓]
名義抄〕赦 ハナツ・オク・マヌガル 〔字鏡集〕赦 オク・マヌガル・アカシ・ハナツ・ナダム・ユルス・スツ

[語系]
赦・釋(釈)sjyakは舍(舎)・(捨)sjyaと声近く、みな、解き釈(ゆる)す、赦置する意があり、一系の語である。

[熟語]
赦過・赦原・赦罪・赦釈赦書・赦恕・赦除・赦詔・赦状・赦贖・赦貰・赦貸・赦罰・赦文・赦放・赦免・赦宥赦令・赦例
[下接語]
恩赦・寛赦・原赦・裁赦・三赦・肆赦・贖赦・貰赦・大赦・誅赦・特赦・復赦・放赦・赦・無赦・免赦・宥赦・容赦

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改訂新版 世界大百科事典 「赦」の意味・わかりやすい解説

赦 (しゃ)

日本古代の赦は,すでに大化前代に見られるが,その事例の多く存するのは,律令法が受容された奈良朝以降である。日本の律令に現れた恩赦には,赦,降,勅放の3種がある。赦は恩赦,大赦ともいい,特定個人を対象とせず,広く天下一般に布告するもので,犯罪者の罪を全免する。ただし,すべての犯罪を赦免するのではなく,律に常赦不免の罪といわれる一定の犯罪は,その対象から除く。常赦不免の罪とは,悪逆,謀反,大逆,故殺人,反逆縁坐,監守内(地位権限を利用した)の姦・盗・略人(人身売買)・受財枉法(収賄して法をまげる),殺人応死等をいう。降は恩降ともいい,罪を全免するのではなく,何等か減軽するもので,天下一律に行う場合も,特定個人を対象とする場合もある。勅放は皇帝の特別の恩寵によって特定個人の罪を全免し,官位・勲位も犯罪発覚以前の状態に復される。以上の3者のほかに,なお当時,恩赦の効力を特定地域に限定する曲赦があった。平安時代に入ると,律令には規定されていない非常赦がしばしば発せられた。非常赦とは,通常の赦ではゆるされない常赦不免の罪をも赦免するものである。以上が律令および明法家の学説にみられる恩赦の種類であるが,実際に発布された赦書をみると,常赦不免の罪とともに強窃二盗,私鋳銭,八虐等の犯罪をもゆるさないとするものや,また常赦不免の罪はゆるすが,他の特定の犯罪はゆるさないとするものもあって,赦の対象となる犯罪の範囲は,必ずしも一定していない。平安中期以降になると,本来,常赦と同義語であった大赦という語がしだいに常赦よりも広い範囲の赦を意味するようになり,中世の明法家の間では,古代の赦を常赦,大赦,非常赦の3種に区分するようになるが,これは現実とは合わない分類の仕方である。赦は祥瑞慶賀,疾病,災異等のある際に,天皇の大権に基づいて発せられるが,平安時代,災干疾疫のあるたびごとに乱発され,囚禁されている軽犯者が免じられた。これには仏教や中国思想の影響が考えられよう。
執筆者: 中世に入ると,朝廷のほかに幕府も赦を令するようになり,室町時代以後は幕府が専行した。江戸時代には幕府・藩とも赦の制度がおおいに整備され,幕府では1862年(文久2)に〈赦律〉という33条の小法典が制定されている。幕府の赦は将軍の権限で,朝廷・幕府の吉凶に際して発せられ,吉事の赦を御祝儀の赦といい,法事の場合に追善供養のためなされるのを御法事の赦といってしばしば行われている。既決受刑者だけでなく未決の者も対象とし,これを当座の赦という。御法事の赦は,受刑者の親類が両山(徳川家菩提寺の寛永寺,増上寺)に赦を願い,両山からその名を記載した回赦帳を幕府に回付し,老中が裁決して,法事執行の寺で町奉行が赦を言い渡し,大僧正の教戒があってその場で放免したのである。赦は一定年限の刑期が経過していることと,改悛,謹慎の情いちじるしいことが条件で,犯罪者の改善を奨励することを主眼としたが,遠島追放など,無期の刑罰については,赦の運用によって刑期を量定する機能をはたした。藩においても,幕府の赦の令にしたがうほか,自家の吉凶に際し赦を施行した。

 明治維新以後,天皇は赦の権限を回復し,1868年(明治1)1月の大赦をはじめとして以後たびたび恩赦を行い,治罪法(1880),帝国憲法(1889),刑事訴訟法(1890),恩赦令(1912)の制定によって近代的恩赦制度が整えられた。
執筆者:

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「赦」の解説


しゃ

主権者が,恩恵として罪人にかけられた刑罰を赦(ゆる)すこと。確実な最古の例は,孝徳天皇が650年(白雉元)に行ったもの。古代以来,赦は祥瑞・災害・皇族生没などの吉凶事に際して天皇の名において出された。律令には赦の種類の規定はないが,吉凶の大きさに応じて赦される罪の範囲を区別し,常赦・非常赦・大赦が使いわけられ,のちには常赦・非常赦も天下一律に下すことを重視して大赦とよぶようになった。他方,一地方だけに通用されるものは曲赦(きょくしゃ)とよぶ。中世以降は公家の赦とともに幕府の赦が登場し,犯罪の重さに応じて加刑後に赦に浴しうる年限を区別する制がうまれ,戦国大名から江戸幕府・諸大名にうけつがれた。明治期以降,赦は再び天皇大権に属し,第2次大戦後は政府が発するものとなっている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「赦」の意味・わかりやすい解説


しゃ

統治権者が,賞罰2大権に基づいて,既決,未決の囚の刑をゆるめ,孝子,節婦などに恩償を与える行為。大化改新以降中国から継受され,平安末期にいたるまで,次第にその数を増した。赦には,常赦,大赦,非常赦の3種があり,その許す犯罪の範囲を異にした。また曲赦と称し,領域内の一部のみに適用されるもの,特赦と称し,特定人のみを対象とするものなどもあった。鎌倉期以降,赦は,幕府からも出され,室町の頃には,守護にして,その領域内に赦令を発するものも現れた。江戸期にいたって,赦は原則として,幕府より出されるものとなり,その基準として,文久年間 (1861~64) には赦律 33条が定められた。 (→恩赦 )  

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【遠島】より

…武士,僧侶神職,庶民など身分を問わず適用され,武士の子の縁坐(えんざ),寺の住持の女犯(によぼん),博奕(ばくち)の主犯,幼年者の殺人や放火などに科された。死刑につぐ重刑とされ,田畑家屋敷家財を闕所(けつしよ)(没収)し,刑期は無期で,赦(しや)によって免ぜられたが,《赦律》(1862)によれば,原則として29年以上の経過が必要であった。全国に散在する幕府の奉行,代官の役所を近江を境に東西に分け,美濃以東の役所で判決した罪人は江戸小伝馬町牢屋に,近江以西の場合は大坂の牢屋に集めたが,長崎奉行だけは直接島に送った。…

※「赦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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