恵方(読み)エホウ

デジタル大辞泉 「恵方」の意味・読み・例文・類語

え‐ほう〔ヱハウ|エハウ〕【恵方/吉方】

その年の十干じっかんによって定められる、最もよいとされる方角。その方向歳徳神としとくじんがいるとされる。吉方きっぽうきのかた 新年》「ひとすぢの道をあゆめる―かな/青畝
[補説]恵方一覧
恵方方角西暦換算
きのえ寅卯の間、甲の方位およそ東北東下一桁が4の年
きのと申酉の間、庚の方位およそ西南西下一桁が5の年
ひのえ巳午の間、丙の方位およそ南南東下一桁が6の年
ひのと亥子の間、壬の方位およそ北北西下一桁が7の年
つちのえ巳午の間、丙の方位およそ南南東下一桁が8の年
つちのと寅卯の間、甲の方位およそ東北東下一桁が9の年
かのえ申酉の間、庚の方位およそ西南西下一桁が0の年
かのと巳午の間、丙の方位およそ南南東下一桁が1の年
みずのえ亥子の間、壬の方位およそ北北西下一桁が2の年
みずのと巳午の間、丙の方位およそ南南東下一桁が3の年

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精選版 日本国語大辞典 「恵方」の意味・読み・例文・類語

え‐ほう‥ハウ【恵ヱ方・兄方・吉方】

  1. 〘 名詞 〙 その年の縁起のよい方角。八卦法(はっかほう)による生気(しょうげ)・養者(ようじゃ)の方角。その第一は生気方で、養者方がそれに準じた。また、歳徳神(としとくじん)の宿る方角。明きの方。《 季語・新年 》
    1. [初出の実例]「いとよきことなり、てんげのえほうにもまさらん」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
    2. 「商人(あきうど)元日に恵方(エハウ)より持ち来たる若夷(わかえびす)を迎へんと思ひ」(出典:咄本醒睡笑(1628)一)

恵方の語誌

( 1 )近世以降「恵方」の表記が一般化した。
( 2 )平安朝文献の「吉方」の表記は「よきかた・よきほう」などと訓読された可能性も強く、「えほう」の確証とする資料に乏しい。〔疑問仮名遣

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改訂新版 世界大百科事典 「恵方」の意味・わかりやすい解説

恵(吉)方 (えほう)

陰陽道(おんみようどう)で歳徳神(としとくじん)がいる方角。兄方,得方などとも書き,〈明きの方(あきのかた)/(あきのほう)〉ともいう。その年の〈よろず良し〉という大吉の方角である。歳徳神はその年の干(かん)に当たる方角にいるとされるが,五行説では十干を陰陽に分け,甲丙戊庚壬を陽,乙丁己辛癸を陰とし,陽の干は陽徳といって徳があり,陰干は徳がないとする。そこで陰干はそれぞれ陽の干に割りあてられ,たとえば己(つちのと)の年は甲(きのえ)の方角,すなわち寅卯の間に歳徳神がいるとされる。恵方のことをとくに言い出したのは江戸時代以降といわれ,暦本の普及と相まって民間に浸透,歳神(としがみ)棚を恵方にしつらえたり,恵方に当たる社寺初詣をする〈恵方参り〉,若水(わかみず)をくむにも自分の井戸が恵方に当たらぬときは,明きの方に当たる他所の井戸に行ってくむなどの習俗を生じた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「恵方」の意味・わかりやすい解説

恵方
えほう

陰陽道(おんみょうどう)に基づく方角の吉凶をいう俗信。吉方とも書き、明方(あきのかた、あきほう)ともいう。十干(じっかん)十二支の組合せによってその年の恵方を決める。陰陽道で歳徳神(としとくじん)のつかさどる方角をいったものであるが、日本では正月に歳神(としがみ)が訪れてくる方角と理解し、門松迎えには自分の山でなくとも、恵方の山から自由に切ってきてよいといったり、鍬(くわ)初めなどの仕事始めに際しても、恵方の田畑で儀式を行う。元日の朝早く牛小屋を見回り、そのとき牛の向いていた方角を恵方とする例もある。年の初めにあたって、その方角にある神社や寺に参拝するのを恵方参(えほうまい)りという。朝暗いうちから出かけ、人より先に行ってお札(ふだ)を頂いて帰ってくる。現在は、村氏神に参る初詣(はつもう)でと混同し、恵方の社寺に初詣でをしたり、また、社寺や交通業者の宣伝もあって、方角などには関係なく、有名な社寺に参ることが多い。

[井之口章次]

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百科事典マイペディア 「恵方」の意味・わかりやすい解説

恵方【えほう】

吉方,兄方とも書く。運勢判断において吉(きち)をもたらすとされる方角。年の干支(えと)により毎年異なり,個人的には生年月日の干支により異なる。明きの方ともいい,歳徳神(としとくじん)がその方角からくるとして,恵方棚(えほうだな)を設け吉祥を祈る。正月には恵方参りといって恵方にある神社仏閣に参る。
→関連項目帯解禁忌(民俗)方位

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「恵方」の意味・わかりやすい解説

恵方
えほう

吉方とも書く。古くは正月の歳神 (としがみ) の来臨する方向をいった。陰陽道が入ってのちは,その年の歳徳神 (としとくじん) ,恵方神がおり,たたり神のめぐってこない最もよい方向とされた。

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世界大百科事典(旧版)内の恵方の言及

【方位】より

…以上の3方位に辰巳(たつみ)(東南)を加えて四角(しかく),四隅(しぐう),あるいは四維(しい)と呼び,それぞれ艮(うしとら),坤(ひつじさる),乾(いぬい),巽(たつみ)の字をあてる。 また,神聖な方位には,恵方(えほう)(明きの方)があり,新しい年神,歳徳神を迎える方位で,年神棚,門松,若水汲み,鍬始めはその方位を意識している。恵方はふつうは暦により決定されるが,東北地方では年末の最後の雷の鳴り収まった境の山を恵方とし,年神はそこから来るという所もある。…

※「恵方」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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