打返・打覆(読み)うちかえす

  • うちかえ・す ‥かへす

精選版 日本国語大辞典の解説

[1] 〘他サ五(四)〙
[一] (「うち」は接頭語)
① 返す。つき戻す。
② ひるがえす。裏返す。
※源氏(1001‐14頃)匂宮「求子(もとめご)舞ひてかよる袖どもの、うちかへす端風に」
③ ひっくり返す。
※平家(13C前)五「大なみたって、すでに此船をうちかへさんとす」
④ 名前などの文字の順序を前後さかさにする。
※平治(1220頃か)上「其の頼光をうちかへして、光頼と名のり給へば」
⑤ それまでの事柄や内容、状態などを根本からかえる。
※史記抄(1477)一六「覆案とて、うちかへして案じたりなんどはせぬぞ」
⑥ 繰り返す。反復する。
※蜻蛉(974頃)上「ひきいづる琴のねをきけばうちかへしてもなほぞかなしき」
⑦ 舞台に立てた背景などの書割(かきわり)の板を中央から上半分を折り曲げて、下の部分に重ね、別の背景にする。あおりかえす。
※歌舞伎・貞操花鳥羽恋塚(1809)四立「正面の塀を中より打返す」
⑧ 下落していた相場が急上昇する。〔取引所用語字彙(1917)〕
[二] (「うち」は「打つ」の意)
① 打たれた仕返しに、その人を打つ。
※弁内侍(1278頃)建長三年正月一七日「御所に杖を御ふところに入れて〈略〉、これにて為氏けふうちかへせ」
② 攻撃して相手を追い返す。
※今昔(1120頃か)二五「国司の兵討返されて、死ぬる者多し」
③ 先方へ打って返す。「電報を打ち返す」
④ 古い綿を再生する。打ち直す。
※薤露行(1905)〈夏目漱石〉五「打ち返したる綿を厚く敷けるが如く」
⑤ 田畑をすき返す。耕す。
※後撰(951‐953頃)恋一・五四四「このめはるはるの山田を打返し思ひやみにし人ぞこひしき〈よみ人しらず〉」
⑥ ばくちをして、前に負けた分をも取り返す。
※虎明本狂言・仁王(室町末‐近世初)「又すこしなり共もとでがあれは、又うちかへすがたのみじゃ」
⑦ 相撲で、相手が投げようとするのを制して、逆に投げ技をかける。〔相撲講話(1919)〕
[2] 〘自サ五(四)〙
① 前と反対になる。
※愚管抄(1220)五「又打かへして世のぬしとなるべき者なりければにや」
② ひっくり返る。
※平家(13C前)一二「よさりの亥子(ゐね)の刻にはかならず大地うち返すべし」
③ ひいた波が再びうち寄せる。
※歌仙本貫之集(945頃)五「白波のうちかへすとも浜千鳥なをふみつけて跡はとどめん」
④ 病気がぶりかえす。
※雑俳・柳多留‐六(1771)「うちかへす病気女房はきへたがり」
⑤ 物に当たってはねかえる。
※坑夫(1908)〈夏目漱石〉「初さんの声丈は、〈略〉籠った様に打ち返してくる」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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