授産事業を行う社会福祉施設で,関係法上は授産施設と呼ばれる。授産事業は,身体・精神上の理由や世帯の事情により就業能力に制約のある要保護者に対して,就労や技能修得に必要な便宜を与えて,その経済的自立と安定を援助する社会福祉事業である。明治期にすでに士族授産があり,大正期の授産事業は経済保護事業の重要な分野の一つであったが,第2次大戦後の授産事業は,とくに稼働能力をもちながら就労が困難な障害者に対する施策として,低所得者対策のなかの重要な位置を占めている。社会福祉事業に名を借りて税金のがれや中間搾取を行う不良な授産事業を防止するため,社会福祉事業法により,援産施設を経営する事業は,第一種社会福祉事業として,国・地方公共団体または社会福祉法人によらなければならないこととされている。しかし,産業構造の激しい変化のなかでは,授産施設は企業に依存しがちであり,作業も企業の提供する原材料の加工という比較的単純な内容が多くなるため,技術の修得という性格が薄らぎ,授産施設が企業の下請的性格をもつ傾向がある。授産施設の利用を通じて自営業者として独立したり一般の就職に転じることが現実には困難であるため,授産施設の利用期間は長期化しがちであるが,就労継続や昇給が保障されず,健康保険・年金の適用がないなど,利用者にとっての問題が多くある。
現在,授産施設としては,生活保護法による授産施設,社会福祉事業法による授産施設,身体障害者福祉法による身体障害者授産施設および重度身体障害者収容施設ならびに身体障害者福祉工場,精神薄弱者福祉法による精神薄弱者授産施設(収容,通所)など,4種の法律に基づく7種の施設があり,ほかに法外援護事業として,地方自治体が独自に設置する通所施設や自主団体による共同作業所などの類似の施設がある。また,授産施設において指導員の指導のもとに作業を行う通常の場内授産のほか,通所困難な利用者に対して家庭で材料の支給や製品の回収を行う家庭授産も近年制度化されている。
→社会福祉
執筆者:庄司 洋子
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