擬傷(読み)ギショウ

世界大百科事典 第2版の解説

ぎしょう【擬傷 injury feigning】

卵やをもつ親鳥が,近づいた外敵に対してけがをしているかのような動作をとり,注意を自分の方に向けつつ移動して,外を卵や雛から遠ざけてしまう行動で,一種の利他的行動といえる。シギチドリ類,カモ類,キジ類など,地上に巣をつくる鳥でよく見られる。チドリ類では,親鳥は外敵が近づくと,そのすぐ近くまで飛んでいき,背を向けると同時に翼を広げて地面をたたくような動作をする。そして中腰のまま,脚をひきずるようにして少しずつ外敵から遠ざかる。

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大辞林 第三版の解説

ぎしょう【擬傷】

親鳥がけがをしたようによそおって、外敵の注意を自分の方へ向ける行動。卵や雛ひなを外敵から守る効果がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

擬傷
ぎしょう
injury feigning

巣立ち間もないや巣内の雛を守るために親鳥が見せる行動。を骨折して飛べないようにふるまい,敵の注意を自分に向けさせて雛から徐々に遠ざかる。その際,鳴き声を発し,敵の注意をひきつけると同時に,雛に隠れてじっとしているように伝える鳥もいる。敵は地上性の捕食動物で,タカ類など捕食性の鳥に対してはこの行動は見られない。親鳥は安全な距離まで敵を遠ざけると飛び去って逃げる。チドリ類,キジ類,ライチョウイソシギなど,集団繁殖せず地面につがいか雌雄のどちらかが単独で営巣する鳥に見られ,ツル類のタンチョウでも観察されている。ただし,地上だけでなく樹上にも巣をつくるナゲキバト Zenaida macroura でも見られる。(→擬死

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

擬傷
ぎしょう

動物が傷ついたふりをして敵をだますこと。チドリやカモなどの鳥類やある種の淡水魚において知られ、保育中の親が捕食者の注意を自分にひきつけて子を守るために行う。コチドリなどでは、捕食者が巣に近づくと、親鳥はまず巣から離れて、そこで地上に降りて翼をばたつかせ、あたかも傷ついて飛べないかのようにもがく。このようにして捕食者の注意を雛(ひな)からそらせ、捕食者が自分のすぐそばまでくると突然飛んで逃げる。すこし移動しては同じ行動を繰り返し、巣から十分に遠ざかった所で舞い上がって姿を消す。この行動は、巣にとどまろうとする衝動と、逃げようとする衝動の葛藤(かっとう)から発達した本能的なものであると考えられる。[桑村哲生]
『エドムンズ著、小原嘉明・加藤義臣訳『動物の防衛戦略』全2冊(1980・培風館)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

ぎ‐しょう ‥シャウ【擬傷】

〘名〙 鳥類の示す特殊な行動の一つ。地上に単独で営巣する鳥に主に見られるもので、卵や雛のいる巣の近くに人間や捕食獣が来ると、地上でバタバタ動きまわる行動。敵がその動きに注意をひかれて近寄ると、次第に巣から遠ざかって行き、最後に飛び立って行く。その結果、敵に卵や雛が発見されるのを防ぐ効果を持つ。その行動が傷を負って飛べないかのように見えるところからいう。

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世界大百科事典内の擬傷の言及

【育児】より

…カモメはひなが親のくちばしの一部をつつくと餌を吐き出して与え,危険が近づくと警戒声を発し,ときには外敵に攻撃を加える。ウズラやヒバリのように親鳥が傷ついたまね(擬傷)をして,捕食者に自分を追わせひなのいる場所から遠ざける鳥もいる。孵化したひなが未成熟で羽毛も生えず,目もあいていないような場合(晩成性または留巣性),親鳥は長期間,餌を運んで育雛(いくすう)する。…

※「擬傷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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