アメリカで発達した学際的な科学で、伝統的な学問体系の分類による専門分科の枠を超え、とくに政治学、社会学、経済学といった諸社会科学を統合利用すると同時に、数理科学の方法論やシステム分析、制御理論、情報科学などを含んだ工学的アプローチを積極的に取り入れているのが特徴である。政策科学の目的とするところは、吉村融(とおる)によれば、(1)政策の作成および決定に対する合理的・理知的な考え方の強化によって政策内容の改善を図り、(2)政策形成過程のダイナミズム(動態)を科学的に解明することを通して、制度や慣行を含めた政策形成過程自体の改善を図ることにある。前者はしばしば「政策分析」policy analysisとよばれ、後者は「政策形成過程論」とよばれる。「政策科学」という用語は、1951年にアメリカの政治学者H・D・ラスウェルの共編著による『政策科学』が刊行され、一般に提唱されたといえる。その後1970年に学術雑誌『政策科学』が刊行されたことによってふたたび脚光を浴びた。主要な研究者としては、Y・ドロワ、C・E・リンドブロム、A・ウィルダフスキーなどがいる。とくにアメリカでは、いわゆる「シンク・タンク」が多数設置され、PPBS(企画計画予算制度)のような予算改革など、連邦・州・自治体等からの政策研究を受注するようになると同時に、大学院レベルの研究機関がハーバード、カリフォルニア(バークリー)、ミシガンなどの大学に設置された。日本でも筑波(つくば)大学、慶応義塾大学、中央大学、法政大学、同志社大学、立命館大学、関西学院大学、南山(なんざん)大学、岩手県立大学、島根県立大学など多数の大学に、総合政策学部、政策科学部、政策科学研究科などが設置されている。さらに1997年(平成9)には、埼玉大学大学院政策科学研究科を母体として、独立した大学院大学である政策研究大学院大学が創設された。その後公共政策に関する専門職大学院が、東京大学、京都大学、北海道大学、東北大学、早稲田(わせだ)大学、明治大学等に設置されている。
また学会としては、1996年日本公共政策学会が設置された。その初期の会長として、松下圭一、山川雄巳(かつみ)らがあげられる。学会誌として『公共政策研究』が発行されている。
近年日本では政策科学というより、政策学または公共政策学という名称のほうが一般的になってきている。日本において政策学を最初に提案したのは今中次麿(いまなかつぐまろ)の『政治政策学』(1929)である。
[川野秀之]
『宮川公男著『政策科学入門』第2版(2002・東洋経済新報社)』▽『足立幸男編著『政策学的思考とは何か』(2005・勁草書房)』▽『中道寿一編『政策科学の挑戦――政策科学と総合政策学』(2008・日本経済評論社)』▽『見上崇洋・佐藤満編著『政策科学の基礎とアプローチ』第2版(2009・ミネルヴァ書房)』▽『足立幸男著『公共政策学とは何か』(2009・ミネルヴァ書房)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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