(読み)エ

デジタル大辞泉の解説

え〔ゑ〕【故】

《「ゆえ」の音変化》ゆえ。わけ。理由
「思ふ―に逢ふものならば暫(しま)しくも妹が目離(か)れて吾居らめやも」〈・三七三一〉

から【故/柄】

目的・目標を表す。ため。
「我が―に泣きし心を忘らえぬかも」〈・四三五六〉
原因・理由を表す。ため。ゆえ。
「あにもあらぬ己(おの)が身の―人の子の言も尽くさじ我も寄りなむ」〈・三七九九〉
複合語の形で用いる。
㋐血縁関係にあること。「や―」「はら―」
「問ひ放(さ)くるう―はら―なき国に」〈・四六〇〉
㋑そのものに本来備わっている性格・性質。本性。
「国―か見れども飽かぬ神(かむ)―かここだ貴き」〈・二二〇〉

かれ【故】

[接]《代名詞「か」に動詞「あり」の已然形「あれ」の付いた「かあれ」の音変化。「かあれば」の意から》
前述の事柄を受けて、当然の結果としてあとの事柄が起きることを表す。ゆえに。だから。
「あづまはやと詔云(の)り給ひき。―、その国を号(なづ)けてあづまと謂(い)ふ」〈・中〉
段落などの初めにおいて、事柄を説き起こすことを表す。さて。それで。
「大国主神…并(あは)せて五つの名あり。―、此の大国主神の兄弟(あにおと)八十神(やそがみ)坐(ま)しき」〈・上〉

け【故】

原因、理由を表す語。ゆえ。ため。
「泣く泣くよばひ給ふ事、千度ばかり申し給ふ―にやあらむ、やうやう雷鳴止みぬ」〈竹取

こ【故】

[接頭]
姓名・官職名などに付いて、その人がすでに死亡したことを表す。「山田一郎氏」
官位や地位を表す語に付いて、それがもとのものであることを表す。前の。「中宮の大夫

こ【故】[漢字項目]

[音](漢) [訓]ゆえ ふるい もと ことさら
学習漢字]5年
昔の。以前の事柄。「故事故実/温故・世故典故
古くからのなじみ。もとの。「故旧故郷故国故主
(「」と通用)古びている。使い古し。「故紙反故(ほご)
死亡する。「故人物故
さしさわりのある出来事。「故障事故・多故」
ことさらに。わざと。「故意故殺故買
[名のり]ひさ・ふる
[難読]何故(なぜ)

ゆえ〔ゆゑ〕【故】

事の起こるわけ。理由。原因。「あって母方の姓を継ぐ」「のないいらだち」「ありげな顔」
りっぱな経歴。由緒(ゆいしょ)。来歴。「ある家の出」
趣。風情。
「前栽などもをかしく―を尽くしたり」〈・手習〉
縁故。ゆかり。
「男はもとより―ありける人の末なりければ」〈宇治拾遺・一〇〉
故障。事故。
「よろづの―、さはりをしのぎて」〈宇津保・あて宮〉
体言または活用語の連体形に付けて用いる。
㋐原因や理由を表す。…のため。…によって。…がもとで。「幼さの過ち」「今日は急ぐこれで失礼する」
㋑逆接の関係を表す。…であるのに。…なのに。
「はなはだも降らぬ雪―こちたくも天つみ空は曇らひにつつ」〈・二三二二〉

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大辞林 第三版の解説

え【故】

〔「ゆえ」の「ゆ」が他の語と複合して脱落した形〕
ゆえ(故)」に同じ。 「思ふ-に逢ふものならば/万葉集 3731

かれ【故】

( 接続 )
〔指示代名詞「か」に動詞「あり」の已然形「あれ」が付いた「かあれ」の転〕
それゆえ。だから。そこで。 「二柱の神に…言依ことよさし賜ひき。-、二柱の神、天の浮橋に立たして/古事記 上訓
すなわち。ここに。そこで。段落などの初めに置いて、話を起こす時に用いる。 「 -尾張の国に到りて/古事記 中訓

け【故】

原因・理由を示す語。ため。ゆえ。せい。 「九条殿の御遺言を違へさせおはしましつる-とぞ/大鏡 伊尹

こ【故】

( 接頭 )
人名や官職名などに付けて、その人がすでに死亡していることを表す。 「 -右大将殿」
官職名に付けて、それが以前の官職であることを表す。前の。 「大夫には-中宮の大夫/栄花 暮待つ星

ゆえ【故】

理由。わけ。特別な事情。 「 -のない非難を受ける」 「 -あって放浪の身となる」 → 故に
由緒。いわれ。 「いかにも-ありげなさま」
おもむき。風情。 「賤しく小さき家なれども-有りて/今昔 24
縁故。 「さるべき-ありとも、法師は人にうとくてありなん/徒然 76
故障。事故。変事。 「何のつつましき御さまなければ、-もなく入り給ひにけり/堤中納言 思はぬ方に
(形式名詞) 体言や活用語の連体形などに付いて用いられる。
理由を表す。…のため。…だから。 〔「 …ゆえに」 「 …がゆえに」の形でも用いられる〕 「酒の席のこと-大目にみてほしい」 「君-に無理な注文もきくのだ」 「しばらく留守にする-あとを頼む」 「貧しきが-に犯した罪」
前の事柄に対して逆接的な原因・理由を表す。…なのに。…であるが。 「ひさかたの天知らしぬる君-に日月も知らず恋ひ渡るかも/万葉集 200

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

【故】

〘名〙 (「ゆえ」の変化したもの) ゆえ。理由。
万葉(8C後)一五・三七三一「思ふ恵(ヱ)に逢ふものならば暫(しまし)くも妹が目離(か)れて吾(あれ)居らめやも」

かれ【故】

〘接続〙 (「か(斯)」に動詞「あり」の已然形「あれ」の付いた「かあれ」から転じたもの)
① 先行の事柄の当然の結果として、後行の事柄が起こることを示す。こういうわけで。ゆえに。かかれば。
古事記(712)上「『〈略〉還り降りて改め言へ』とのりたまひき。故(かれ)(ここ)に反り降りまして、更に其の天の御柱を先の如く往き廻(めぐ)りたまひき」
② 段落などの初めにおいて、事柄を説き起こすことを示す。さて。そこで。ここに。
※古事記(712)上「故(かれ)、避追(やら)はえて、出雲の国の肥の河上に在る鳥髪の地(ところ)に降りましき」

け【故】

〘名〙 理由を示す語。ゆえ。ため。せい。
※竹取(9C末‐10C初)「千度ばかり申し給ふけにやあらん。やうやうかみ鳴り止みぬ」

こ【故】

[1] 〘名〙 昔からのなじみ。古い知り合い。〔周礼‐秋官・小司寇〕
[2] 〘接頭〙
官位、姓名などの上に付けて、その人がすでに死亡していることを表わす。なき。
※土左(935頃)承平五年二月九日「故ありはらのなりひらの中将の」 〔沈約‐碑題〕
② 官位や地位を表わす語の上に付けて、それがもとのものであることを表わす。もと。前の。さきの。
※栄花(1028‐92頃)暮待つ星「大夫には故中宮の大夫」

ゆえ ゆゑ【故】

〘名〙
[一] 深い理由や原因。また、由来。
① 物事の確かな理由・原因。わけ。子細。
※万葉(8C後)一四・三四二一「伊香保嶺に雷(かみ)な鳴りそね我が上には由恵(ユヱ)はなけども児らによりてそ」
※源氏(1001‐14頃)夕顔「この扇の尋ぬべきゆへありて見ゆるを、猶このはたりの心知れらん者を召して問へ」
② 非常に趣のある様子。すばらしい風情。また、良い趣味。情趣。
※源氏(1001‐14頃)帚木「人もたちまさり、心ばせまことにゆへありと見えぬべく」
③ 人の素姓や身分、物の成り立ちなどの、すぐれて由緒のあること。
※宇治拾遺(1221頃)一〇「男はもとよりゆへありける人の末なりければ、口惜しからぬさまにて侍りけり」
④ 縁故のあること。ゆかり。
※今昔(1120頃か)三〇「若し旧き男にて有し人の故などにてもや御(おはし)ますらむと思つれば」
⑤ さしさわり。故障。
※万葉(8C後)一三・三二八八「さなかづら いや遠長く 我が思へる 君によりては 言の故(ゆゑ)も 無くありこそと」
[二] 体言や活用語の連体形などに付けて用いる形式名詞。
① 理由を示す。…のため。
※古事記(712)中・歌謡「櫟井の 丸邇坂(わにさ)の土(に)を 端土(はつに)は 膚赤らけみ 底土(しはに)は に黒き由恵(ユヱ) 三栗(みつぐり)の その中つ土を 頭衝(かぶつ)く 真火には当てず 眉画き 濃に画き垂れ 逢はしし女」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「ただこの人のゆへにて、あまたさるまじき人の恨みを負ひし果て果ては」
② 前の事柄に対して、結果としての後の事柄が反対性・意外性を持つ場合、逆接的意味に解される。…だのに。…であるが。
※万葉(8C後)七・一三七〇「はなはだも降らぬ雨故(ゆゑ)にはたつみいたくな行きそ人の知るべく」
[語誌](1)事物に本質的に備わっている原因をいう。これに対して、類義語「よし(由)」は、要因を事物のうちに求めることに重点があり、両者は本来、意味を異にする語と思われる。しかし、すでに上代から「ゆえよし」という語形が存し、また古辞書類でも同一字にユヱ・ヨシ両が認められることなどから、古くから両者の意味は近接していたと思われる。
(2)中古の和文では(一)②・③の意で用いられるようになるが、これは「ゆえあり」という文脈的意味を取り込んだもので、人物や事物の風情が、そのもののすばらしい本質に由来する、つまり「ゆえあり」と感じられる状態をさして用いられたもので、同様の意味は「よしあり」にも見られる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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