散ずる(読み)サンズル

デジタル大辞泉 「散ずる」の意味・読み・例文・類語

さん・ずる【散ずる】

[動サ変][文]さん・ず[サ変]
散る。ちりぢりになって、なくなる。また、散らす。「聴衆が―・ずる」「春嵐桜花を―・ずる」
不快な感情がなくなる。気が晴れる。また、気を晴らす。「怒りが―・ずる」「憂さを―・ずる」
終わる。「宴が―・ずる」
財産がなくなる。また、金を使う。散財する。「遺産が―・ずる」「財を―・ずる」
[類語]散る散らばる散らかる散らかす散らす四散分散拡散散開飛び散る飛散飛ぶ雲散離散霧散散逸雲散霧消

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精選版 日本国語大辞典 「散ずる」の意味・読み・例文・類語

さん‐・ずる【散】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 サ行変 〙
    [ 文語形 ]さん・ず 〘 自動詞 サ行変 〙
    1. 四方に散る。なくなる。うせる。四散する。
      1. [初出の実例]「火散空中了、若是大流星歟」(出典:明月記‐治承四年(1180)九月一五日)
      2. 「連日の炎天焼くが如く、蒸すが如く、日既に汲して暑さ未散ぜず」(出典:日本読本(1887)〈新保磐次〉六)
    2. 逃げ去る。退散する。
      1. [初出の実例]「尻切も履(はき)不敢(あへず)、迯(にげ)て車に乗て散じて」(出典今昔物語集(1120頃か)二四)
    3. 怒りや恨み、また疑いなどの感情がなくなる。気が晴れる。また、注意がそれる。気が散る。
      1. [初出の実例]「これによって宮の御憤(いきどほ)りも散じけるにや」(出典:太平記(14C後)一二)
    4. 終わる。行事や事が終了する。
      1. [初出の実例]「軍(いくさ)(サン)じて翌日に、隅田・高橋京中を馳(は)せ回って」(出典:太平記(14C後)八)
    5. 財産がなくなる。散財する。
      1. [初出の実例]「ゆゑなきに恵みほどこし、その人の不義をも察(あき)らめず借あたへたらん人は、善根なりとも財(たから)はつひに散(サン)ずべし」(出典:読本・雨月物語(1776)貧福論)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 サ行変 〙
    [ 文語形 ]さん・ず 〘 他動詞 サ行変 〙
    1. 四方に散らす。
      1. [初出の実例]「五台山には文殊こそ、六時にはなをばさむずなれ」(出典:梁塵秘抄(1179頃)二)
    2. 怒りや恨み、また疑いなどの感情をなくす。気を晴らす。また、注意をそらす。気を散らす。
      1. [初出の実例]「法文の要義を問て、心の疑ふ所を散ず」(出典:今昔物語集(1120頃か)一二)
      2. 「たとひ耳の傍で狼が吠えようが心を取乱し気を散(サン)じない位でなければ」(出典:郊外(1900)〈国木田独歩〉二)
    3. 金を使う。財産をなくする。
      1. [初出の実例]「さてちっと銭なんどもあれば、行楽すぎて其に散してのくるぞ」(出典:四河入海(17C前)六)

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