散らす(読み)チラス

デジタル大辞泉 「散らす」の意味・読み・例文・類語

ちら・す【散らす】

[動サ五(四)]
くっついているものを離し落とす。ばらばらに散るようにする。散乱させる。「花を―・す無情の嵐」「火花を―・す」「紋様を―・す」
あちらこちらに配る。ふりまく。分配したり、分離させたりする。「花札を―・す」「びらを―・す」「内角外角へとたまを―・す」
気持ちをあちこちへ向けて集中力をなくする。「気を―・さずに仕事をしなさい」
はれ・しこり・痛みなどを、切開しないで押さえたり、なくしたりする。「盲腸炎を―・す」「鬱血うっけつを―・す」
散らかす。「ごみを―・す」
言い広める。言いふらす。
「ゆめゆめ心より外には人に―・すべからず」〈今昔・三〇・六〉
紛失する。
「よべの御文…―・してけると推し量り給ふべし」〈夕霧
動詞の連用形に付いて、広い範囲に及ぶようにする、また、あらあらしく…する、むやみに…する意を表す。「まき―・す」「―・す」「わめき―・す」
[可能]ちらせる
[下接句]顔に紅葉もみじを散らす蜘蛛くもの子を散らす算を散らす火花を散らす紅葉を散らす
[類語]散る散ずる散らばる散らかる散らかす四散分散拡散散開飛び散る飛散飛ぶ雲散離散霧散散逸雲散霧消

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「散らす」の意味・読み・例文・類語

ちら・す【散】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. はなればなれに落ち飛ぶようにする。まとまっているものを、ばらばらにみだす。
    1. [初出の実例]「鳴く霍公鳥(ほととぎす) 立ち潜(く)くと 羽触(はぶり)に知良須(チラス) 藤波の 花なつかしみ」(出典万葉集(8C後)一九・四一九二)
  3. 落としたり、なくしたりする。
    1. [初出の実例]「かかる物をちらし給ひて、われならぬ人も見つけたらましかばとおぼすも」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
  4. 模様などをちりばめる。
    1. [初出の実例]「はかまには、いは、いせきなどして、花をひしとちらす」(出典:とはずがたり(14C前)二)
  5. ほうぼうにふりまく、また、わけくばる。発散させたり、分散させたりする。
    1. [初出の実例]「色をましたる柳、枝を垂れたる花もえもいはぬにほひをちらしたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)胡蝶)
  6. 世間に言い広める。言いふらす。
    1. [初出の実例]「さること見えずは、かう申したりとなちらし給ひそ」(出典:枕草子(10C終)二七七)
  7. さかんに振りまわす。
    1. [初出の実例]「くろ皮のよろひきたるむしゃ大長刀をちらして出、悪一に打てかかる」(出典:浄瑠璃・公平武者執行(1685)三)
  8. 命を失う。
    1. [初出の実例]「今に命まで散らすわよ」(出典:雪国(1935‐47)〈川端康成〉)
  9. (は)れたり化膿したりしたところを、手術せずに、薬だけで抑える。「盲腸をちらす」
    1. [初出の実例]「今朝〈略〉原稿を持たせ使を出し序に宮本へ往て腹のはりを散らす薬をもらひ来らしむ」(出典:仰臥漫録(1901‐02)〈正岡子規〉一)
  10. 他の動詞の連用形に付いて、あらあらしく…する、やたらに…するの意を表わす。
    1. [初出の実例]「かたびらや布やなど、さまざまにくばりちらして」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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