中国,唐代に新しく作られた楽府題の詩。楽府とはもともと前漢の武帝時代に設けられた音楽の役所のことで,後にはそこで採集された歌謡そのものを指すようになる。歌詞は本来作者不明のものが多く,六朝時代には〈古辞〉と呼ばれ,替歌もさかんに作られた。なかには題は同じでも曲から離れた純粋の朗読詩も少なくない。唐代になると,古楽府の大半は演奏されなくなり,楽府といっても題だけを借りるだけで,まったく自由な創作となり,やがて題そのものも新しく作られるようになる。これが〈新楽府〉で,杜甫の〈兵車行〉〈麗人行〉などは内容に即して自由に題をつけたもの。とりわけ有名なのは白居易の〈新楽府〉50編で,いずれも社会批判や風刺の意図をもつ。本来民間歌謡の採集が民衆の不満や批判を察知するためのものであったことから,みずからの政治的主張を新楽府に託そうとしたのである。
執筆者:筧 文生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…唐人は,一般詩と同じ立場から,古楽府(漢・魏の古曲,南朝の新曲)を主題に作詞するとともに,史上初めて,歌唱されない詩的形式のものを創作した。新楽府という。作者の意図は,自ら見聞した社会的・政治的事件を主題にして,歌詞上で批判し,広く世人の共鳴を博するにあった。…
…中国古代の《詩経》以外の歌謡を集大成したものとしては,宋の郭茂倩(かくもせん)の《楽府詩集》100巻が有名であるが,そこには漢代から唐代に至るまでの民謡のおおむねが集録されている。《楽府詩集》には,民間歌謡にあやかって詩として作られた文人の作品や,新しく題を設定して詩として作られた新題楽府(新楽府)の作品も集大成されているが,《楽府詩集》において〈古辞〉として掲げられているものは,すべて実際に歌謡として歌われたものばかりである。別にはまた,ふしをつけて誦された謡諺のたぐいもあるが,古代のそれらは清の杜文瀾の《古謡諺》100巻に集められている。…
…したがって,中国の詩は,アクチュアルな問題につねに強い関心を示すという一面をもち,しばしば世上の悪徳や民衆の困苦を題材としてとりあげ,当局への批判や風刺を加える。既述した《詩経》以来の伝統や漢代の〈楽府(がふ)〉の精神を受け継ぐものであるが,その典型的な例は,杜甫の作品や白居易の〈新楽府(しんがふ)〉などに見ることができる。なお,〈新楽府〉の名は,民間の実情を天子に知らしめるという〈楽府〉本来の主旨にもどるとの意による。…
…唐代の著名な文人のなかでは,官僚として最も高い地位に達した人物といえる。 青年時代には,詩とは暇つぶしのおもちゃではなく,《詩経》以来の伝統を受け継ぎ,民衆を救い政治の誤りを正すためのものだと主張,〈新楽府(しんがふ)〉その他一群の社会詩を作り,〈諷諭詩〉という部類を立てた。〈新楽府〉とは漢代の歌謡〈楽府〉のあとを継いで,民間の実情を皇帝に知らしめるという,〈楽府〉本来の主旨にもどらんとするものであった。…
※「新楽府」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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