民法は,土地と建物を不動産とし,これについて登記という公示方法を設け,他方,動産については引渡しを公示方法とした。しかし,立木(りゆうぼく),稲立毛,桑葉,未分離の果実などについては,土地の構成部分と考えたがために,公示方法をとくに考慮しなかった。ところが,日本においては,古くからこれらを土地に付着したままで独立の取引の対象とするという慣行が存在し,その際には立木の皮を削って取得者名を墨書したり,あるいは立札を立てるなどして,権利の変動を公示するという方法が採られていた。このような慣習法上の公示方法を明認方法とよんでいる。判例・学説はこのような実態を真正面から肯定し,明認方法を立木などの権利変動の公示方法として早くから承認するに至っている。もっとも,樹木の集団については〈立木ニ関スル法律〉(立木法と略称。1909公布)が制定されて登記の道がひらかれ,登記をしたものについては独立の不動産として扱われることになったため(立木法2条),明認方法はとくに必要でなくなったともいえるが,実際上は立木登記のなされる例は少なく,また樹木の集団以外は登記が認められていないこともあって,明認方法は現在なお幅広く利用されているようである。
明認方法は,登記と同様に,対抗要件としての機能を営んでいる。したがって,(1)立木,未分離の果実などの二重譲渡の場合には明認方法を先に施した者が優先する。(2)立木などの付着したままの土地所有権を取得した者と単に立木所有権を取得した者との間では--登記と明認方法とでは効力の上に差異はないと解されているから--土地所有権取得者の登記と立木所有権取得者の明認方法との,先後によって優劣が決せられる。
→公示の原則
執筆者:半田 正夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
立木(りゅうぼく)やミカン・稲立ち毛などの未分離果実について、登記にかわる第三者対抗要件として判例によりとくに効力を認められた公示方法。たとえば、立木法の適用を受けない樹木の集団や個々の樹木については立て札をたてるとか、樹皮を削って所有者名や番号を記すとかといった方法や、一定区域のミカン畑や刈り取り前の稲田については、縄張りするという方法がこれにあたる。現在の民法では、立木は土地の、未分離果実は果樹の所有権にそれぞれ含まれるものとしているため、独立して取引の対象とはならないことになる。しかし、立木や未分離果実などは、古くからその土地や果樹とは別に独立して取引されており、前記のような明認方法を施す慣習があった。そこで、判例は、立木や未分離果実の所有権が土地や果樹の所有者と別人に帰属することを認め、その公示は明認方法で足りるものとしたのである。なお、借地借家法第10条2項は、借地権者の建物が滅失しても、一定の事項を土地の上の見やすい場所に掲示しておけば、建物の滅失から2年間は、その借地権を第三者に主張することができるとする。これも、明認方法を、法律が認めた例である。
[高橋康之・野澤正充]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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