月次祭(読み)つきなみのまつり

改訂新版 世界大百科事典 「月次祭」の意味・わかりやすい解説

月次祭 (つきなみのまつり)

古くは神祇官で行われたまつり。原義は月ごとのまつりであるが,令制では6月,12月の年2回としている。このとき《延喜式》巻十,十一所載の神社のうち,官幣大社304座の神々に奉幣がなされた。《貞観儀式》などによればその後神今食(じんこんじき)を行った。伊勢の神宮の月次祭も,古来,6月と12月の年2回行われ,大祭である。10月の神嘗祭(かんなめのまつり)と合わせて三節祭(さんせつさい)とも三時祭(さんじさい)ともいう。神宮では,神田(しんでん)でできた稲の初穂を抜穂(ぬいぼ)にして御稲御倉(みしねのみくら)に納め置き,これをまず神嘗祭に,次いで12月,翌年6月の月次祭に大御神(おおみかみ)に奉献する。これを由貴大御饌供進ゆきのおおみけきようしん)という。この三節祭は大御饌を供えて感謝のまことをささげ皇室弥栄国家繁栄,国民の幸福などを祈るまつり。なお一般の神社では月ごとの節目,すなわち,毎月はじめの朔日と中間の15日とに行われるまつりをいうが,その日は必ずしも一定でない。これは神恩に感謝し,さらにあらたかな加護を仰ぐまつりで,祭祀区分では小祭とされる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「月次祭」の意味・わかりやすい解説

月次祭
つきなみのまつり

神祇令(じんぎりょう)に規定する祭り陰暦の6月と12月の二度、神祇(じんぎ)官にて行われた。名称の由来は不明。その儀は、神祇官に諸官人の参集を得て、幣(ぬさ)を案上に供えて中臣(なかとみ)氏が祝詞(のりと)を奏し、忌部(いんべ)氏が伊勢(いせ)神宮以下の諸社に頒幣(はんぺい)の儀を行った。ただし、直接に勅使幣帛(へいはく)を供進するのは伊勢神宮に対してのみであった。その後、天皇が中和院に出御され、神今食(じんこんじき)を行った。国家および聖体の安泰と豊稔(ほうねん)の祈りが眼目である。中世の戦乱とそれに伴う皇室の式微により、伊勢神宮を例外として、すべて廃絶した。伊勢神宮では、神嘗(かんなめ)祭とこの二度の月次祭を三節祭(さんせつさい)と称し、もっとも重要な祭儀として行われてきた。一般の神社にあっては、月の1、15日などに、月ごとの報賽(ほうさい)のために行う祭りを月次祭といっている。

[茂木貞純]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「月次祭」の解説

月次祭
つきなみのまつり

6月と12月に朝廷と伊勢神宮で行われた祭。朝廷では11日に全国の304座の神々に幣帛(へいはく)をささげ,国家安泰を祈念した。伊勢神宮では,9月に行われる神嘗(かんなめ)祭とともに神宮三節(みおり)祭として重要な神事とされ,前月晦日の度会(わたらい)川での大祓(おおはらえ)に始まり,15日の御贄(みにえ)神事の後,16日と翌朝に内宮で,1日早く外宮で由貴大御饌(ゆきのおおみけ)が行われる。奉幣や斎宮の参拝が行われるほか,25日までに別宮などでの神事がある。

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百科事典マイペディア 「月次祭」の意味・わかりやすい解説

月次祭【つきなみのまつり】

天皇の福祉と国家の安寧を祈念した祭。古代から行われた朝廷の年中行事で,毎年6月・12月の11日に朝廷が全国の官幣(かんぺい)大社304の祭神に幣帛(へいはく)を奉納した。戦国時代に中絶したが,明治以後も行われた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「月次祭」の意味・わかりやすい解説

月次祭
つきなみのまつり

古代から毎年6月および 12月の 11日に神祇官で行われた祭りで,国家の安泰と天皇の長寿を祈る。伊勢神宮をはじめ,304座の大社の祭神に幣帛を奉る。

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世界大百科事典(旧版)内の月次祭の言及

【神今食】より

…〈じんごじき〉〈かむいまけ〉ともいう。上代より中世まで,毎年6月11日,12月11日の月次(つきなみ)祭班幣の夜,宮中神嘉殿において,天皇がみずから皇祖天照大神に神饌を供し,みずからも食する祭り。祭儀は新嘗祭(にいなめさい)と同様だが,神饌の数量は新嘗祭より少なく,後儀の豊明節会(とよのあかりのせちえ)はなかった。…

※「月次祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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